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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
2の章 ~巫女と鉄の工業都市~
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とりあえずの解決、そして涙


「んだよてめぇ?」

「こんな遠回しなことしやがって。最初からそれが目的だんだろ」

「……」

 グラの指摘に、男は押し黙った。

「グラたん、どういうこと?」

「こいつらは最初からスルホンが目的だったんだよ。借金なんてのは、スルホンを奪うための口実に過ぎない。最初に要求してたセラフィドってのも、実際のところはついでだったんだろう。例え渡してたとしても、また理由をつけて、結局はスルホンを攫うつもりだったんだよ」

 状況が呑み込めないエーテルに、グラはそそう説明した。……彼は、キシール金融の人間がスルホンについて話していたのを目撃している。故に気づいたのだろう。

「どうしてそんなことを―――」

「誰の依頼だ? 金貸しがただの小娘一人のために、こんな回りくどいことはしないだろ。大方、誰かに金を積まれて頼まれたってとこだろうな」

「……どうやら、随分と頭の回る助っ人を呼んだみたいだな。おまけに舌も回るとは」

 グラの言葉に、男は苦虫を噛み潰したような表情になる。

「ふん―――いいだろう。今回はこれで手を打ってやる。そもそもうちは、金以外で悪をしないってなってるからな」

 そして男は、受け取った封筒を叩くと、彼らに背を向ける。

「ちょ、兄貴、いいんですかい?」

「クライアントに怒られるんじゃあ……」

「知るか。そもそもうちに持ってくる仕事じゃねぇだろ。……おい。お前、名前は?」」

 戸惑う部下に構わず、男は引き上げようとした。だがその直前、男は一度足を止めて、そんな風に問い掛けてきた。

「グラリアクトだ」

「グラリアクト、か……覚えておくぜ、その生意気な面と一緒にな」

 そうやって、男は部下たちと共に工房から出て行った。



「……ったく、つまらねぇ仕事だったぜ」

 工房を出て、男―――ロイシンは、サングラスを外しながらぼやいた。

「おい、お前ら。俺はクライアントに報告してくる。先に戻ってろ」

「う、うっす……!」

 ロイシンは部下を先に帰らせると、一人で歩き出した。向かう場所は、人気のない路地裏だ。

「……どうやら、失敗したようだな」

 ロイシンが路地裏に入ると、誰もいなかったはずのその場に、別の男が姿を見せた。ローブで顔を隠しているのは、やはり顔を覚えられると困るからか。

「しゃーないだろ。元々無理のある計画なんだよ、これは」

 男に対して、ロイシンは吐き捨てるようにそう言った。……スルホンを人知れず攫うのではなく、借金の形に奪うというのは、確かに無理がある。というか、キシール金融からすればデメリットでしかないのだ。ただでさえ闇金だというのに、ここに人身売買の汚名まで被るのは、マイナスどころの騒ぎではない。

「ま、安心しろよ。あんたのことは吐かなかったし、今後も他言する気もない。同じアングラのよしみ―――というか、そもそも俺はあんたの名前すら知らねぇからな」

「それを聞けて安心した。君は好感の持てる人物だ。ここで消えるには惜しい」

 言外に「喋ったら殺す」と言い出す男に、ロイシンは首を竦めた。それが分かっていたからこそ、予防線を張っておいたのだ。自分が同じ立場ならばそうするだろうからと。

「それに、目的の半分は達成できてる。後は自分でやるさ」

「そうかい。……じゃあな。前金を返して欲しかったら後で取りに来いよ」

「要らないさ。そのまま納めるといい」

「へっ、じゃあ遠慮なく」

 そうして、二人は別れた。彼らはもう二度と、再会することはないだろう。それは彼らにも分かっていたことだった。



「……どうにか切り抜けられたけど、やっぱり釈然としないわね」

 一方、工房では。キシール金融の面々が帰った後、エーテルはそんなことを漏らしていた。

「まあな。結局、スルホンを狙っていた理由が分からないままだ。とはいえ、借金はこれでなくなったし、上出来だろ」

「そうですね。頑張った甲斐がありました」

 未だに疑問は残るものの、借金問題は無事に解決した。これで一安心だろう。

「よっし! これからみんなで打ち上げよー!」

「いいんじゃないか?」

「賛成です」

 そして、彼らは早速、ここ数日間の労をねぎらうことにした。

「ポリスさん、スルホン、この辺にいいお店ってないかしら?」

「そうだねぇ……近くに知り合いのレストランがあるから、そこはどうかな?」

「じゃあそこに決定っ!」

 そんな感じで、彼らは意気揚々とレストランに向かうのだった。



  ◇



「それじゃあ、新型カートリッジの完売と借金完済を祝して―――乾杯っ!」

「「「乾杯っ!」」」

 そして、レストランにて。エーテルたちはグラスを掲げて乾杯する。未成年が大半ということで、全員ジュースだが。

「いやー、ほんと一時はどうなるかと思ったわよね」

「本当ですね。ですが、少ない時間と人手、多い制約の中、みんなで一丸となっての製作は、達成感もありました」

「俺は何もしてないんだけどな」

 ハイドラの言葉に、グラは相変わらず自嘲気味に呟く。……準備中、グラは何もできなかったからな。販売は手伝ったのだが、それでも自分の無力さを拭えなかったのだろう。

「でも、今日のМVPはグラたんよ。グラたんのお陰で、奴らも引き下がって、スルホンも守れたんだから」

 だが、エーテルはそう言ってグラのことを褒めた。実際、グラが部下の会話を聞いていなかったら、キシール金融をああもあっさりとは追い返せなかっただろう。そういう意味では、グラが活躍したと言っていいはずだ。

「……あれ? スルホン、どうしたの?」

 すると、エーテルはスルホンの様子がおかしいことに気づいた。彼女は俯いて、先程から何も喋らないのだ。

「……ひっく」

「え、ちょ、どうしたのよ突然……!?」

 その直後、スルホンは泣きだした。あまりのことに、エーテルも戸惑っている。

「ご、ごめん、なさい……」

 泣きじゃくりながら、スルホンはそんな言葉を漏らす。

「ス、スルホンが謝ることなんて、何も―――」

「わ、私がいたせいで、ポリスさんに、皆さんに、ご迷惑を掛けてしまいました……」

「スルホン……」

 スルホンは、言葉に詰まりながらもそう口にした。……キシール金融が彼女を狙っていたことで、ポリスたちを困らせたと、罪悪感を抱いていたのだろう。

「スルホンちゃんは何も悪くありません! 悪いのはキシール金融の方々です!」

「そうよ、スルホンが気にすることじゃないのよ」

「で、でも……」

 ハイドラもエーテルも、スルホンは悪くないと言う。だが、彼女自身はそれを受け入れられないのだった。

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