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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
2の章 ~巫女と鉄の工業都市~
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役者は大根おでんも大根



  ◇



 ……数日後。


「……よし、これで完了よ」

 そうして、エーテルたちはカートリッジを完成させた。試作品を作り、製品化して量産し、並行して特許の申請も行った。更にはハイドラの人脈も使って宣伝も可能な限り行った。満を持して、新型カートリッジの発売となったのだ。

「カートリッジはしこたま作ったし、動作確認も済んでるし、事前の宣伝もばっちり。後は売り捌くだけよ」

「そんなにうまくいけばいいがな」

 気合い満タンのエーテルに水を差すグラだが、正直なところ、今回はうまくいくと思っていた。……邪魔が入りさえしなければ。

「それで、俺はどうすればいい? 客引きか会計でもすればいいのか?」

「そうねぇ、接客はハイドラのほうが向いてるだろうし、グラたんはレジ打ちのほうがいいかも。ハイドラは接客、スルホンとポリスさんは奥で休んでて。ここは私が引き受けるから」

 そしてエーテルは売り場でも仕切っていく。ハイドラは華がある分、売り子には向いているだろう。連日作業し続けたポリスたちを休ませるというのも妥当な判断だ。しかし、彼女自身も彼らと同じくらいの作業量があったのだが、それを物ともせず売り場に入る辺り、さすがだとしか言いようがない。

「本当なら、それくらいは自分でやるべきなんだろうけど……さすがに歳には勝てないねぇ。ここはお任せするよ」

 エーテルの配慮に、ポリスは素直に休憩することにしたようだ。年配だから仕方ないだろうな。

「あ、あの……わ、私は平気ですから、て、手伝います」

 しかしスルホンは、まだ働けるからとそう申し出てきた。頑張るのはいいが、連日働き通しなのは彼女も同じなのだから、無理しないほうがいいと思うのだが。

「そう? じゃあ、お願いするけど、絶対に無理だけはしないでよね。暇を持て余して元気なグラたんを扱き使えばいいから」

「は、はい……」

「一言余計だ」

 そうして、カートリッジの販売体制が整ったのだった。



  ◇



「はい、点灯・着火セットはこちらになります」

「並んで並んでー! 慌てなくても大丈夫だからねー!」

 販売を開始して。工房には大勢の客が押し掛けていた。前代未聞の複合カートリッジを求めて、予想以上に人が集まったようだ。販売するのは「点灯・着火セット」と「加熱・乾燥・加湿セット」の二種類で、実用性も高いため、その辺りも人気に拍車を掛けているようだ。

「次の方どうぞー」

 グラも会計を難なくこなしている。レジスターは機械式で、魔法式ではないので、グラにも容易に扱える。

「あの、えっと、その……」

「点灯・着火セットのスペックシートは右だ。加熱・乾燥・加湿セットは左な」

「あ、は、はい……!」

 スルホンも手伝っているが、疲労があるせいなのか、やたらとミスをする。商品の取り違えなど、グラが指摘しなければ気づかなかっただろう。

「あんまり辛いならもう休んでいいんだぞ?」

「い、いえ、大丈夫です……!」

 そんな彼女を気遣うグラだが、それでもスルホンは仕事を続けようとする。……正直な話、グラにとっては邪魔にすらなっているのだが、それでも彼女は健気に頑張るのだった。

「ったく……倒れるんじゃないぞ」

 そんな彼女を尊重するように、グラは溜息交じりにそう言うのだった。



  ◇



 ……そうして、無事に販売が終了し。


「思った以上の反響ね! 用意してたカートリッジが全部売れるとは思ってなかったわ!」

 すっからかんになった在庫を見て、エーテルは興奮気味にそう言った。当日分は即完売し、翌日以降に残していた在庫を出したのだがそれも速攻でなくなり、あっという間に完売したのだ。ついでのように他の製品も売れ、今日一日の売り上げはかなりのものになっていた。

「一人でやったわけじゃないし、色々苦労したけど、真っ当な仕事でこんなに稼げるなんて……今までのお勤めはなんだったのかしら?」

「今後は真面目に働くんだな」

「ま、あれはあれで楽しいから続けるつもりだけどね。第一、今回のは大分特殊な場合だし」

 これでエーテルもまともな労働意欲に目覚めるかと思ったが、更生には至らなかったようだな。残念だ。

「みんな、助かったよ。ここまでしてもらって、大したお礼もできないなんて……」

 戻っていたポリスは、歯痒そうにそう漏らす。……準備では一番働いていたのだから、そこまで気負うことないと思うのだが。

「そんなことないわよ。私だって、自分のアイディアが工業都市でも通用するって分かったんだし」

「ポリス様には何度もお世話になりましたから、これくらい当然です」

「そもそも俺は特に何もしてないからな」

 そんな彼に、エーテルたちはそう返した。ともあれ、これで借金のほうは大丈夫だろうな。

「邪魔するぜ」

 すると、工房に新たな来客が。―――サングラスと黒スーツの男たち、キシール金融の面々だ。

「随分と盛況だったみたいじゃねぇか。ちゃんと金は稼げたか?」

「あ、ああ……どうにかね。ほら、これで足りるだろう?」

 リーダー格の男に、ポリスは売り上げが入った封筒を渡した。それで残りの借金は完済できるはずだ。

「ふん……! こんなはした金で済まそうってか?」

 しかし、男は封筒の中を見て、そんなことを言い出した。

「生憎だが、うちの金利はついこの間上がったばっかりなんだよ。新しい金利は日当たり百パー、この八倍だ」

「は、八倍……!?」

「う、嘘でしょ……!」

「そ、そんな……!」

 男の言葉に、ポリスたちは驚きのあまり腰を抜かしそうになった。……この金利は法外なんてレベルではない。倍率から考えて、引き上げたのは三日前だろうが、突然どうしたのだろうか。

「あんたじゃあ、この額を返すのは無理だろ? けど安心しな、いい方法があるぜ。この借金を一瞬で片づける方法がなぁ」

 そんな彼らに、男は気持ちの悪い笑みを浮かべながらそう続ける。

「あんたの弟子を寄越しな。そしたら全部チャラにしてやるよ」

「ス、スルホンを、だって……!」

 男の要求は、なんとスルホンだった。借金を盾に彼女を手に入れようというのだ。

「そ、そんな……!」

「どうする? 借金は日に日に倍々に増えていくぜ? ここで俺たちのところに来れば、師匠を助けられるんだがなぁ?」

 突然指名されて戸惑うスルホンに、男は嫌らしい顔で近づいていく。

「止めな」

「あぁん?」

「あっ……」

 怯える彼女の前に、グラが割り込んだ。スルホンを庇うように、男の前へと立ち塞がる。

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