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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
2の章 ~巫女と鉄の工業都市~
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実は結構お料理スキル高い

「とりあえず、役割分担を決めましょう。ポリスさんは私と一緒に開発と製作ね。スルホンは特許申請の準備をして。後、ハイドラ、カートリッジの設計図って書ける?」

「は、はい、お父様に習いました」

「じゃあ設計図書くの手伝って。私は試作も作らないといけないし、部品選びもあるから」

 そんな感じで、エーテルはてきぱきとそれぞれに役割を振っていく。

「俺はどうすればいい? 何か出来ることはあるか?」

「グラたんは……そうねぇ」

 そして、残ったのはグラ。ギアの知識も技術もなく、そもそも魔神なので作業の邪魔になりそうなのだが―――

「グラたんは、ご飯の用意でもしてて」

 というわけで案の定、戦力外通告(お前使えねぇよ宣言)をされてしまった。



「……っても、料理のしようがないだろ、これ」

 料理係に任命され、台所に立ったグラ。しかし、あまりの悲惨さに目を覆いたくなった。……台所には食材が一つもなく、調味料も存在しない。というか、調理器具自体が古びた包丁しかないのだ。

「仕方ない……買い出しに行くか」

 というわけで、グラは食材を買いに行くのだった。……ポリスたちは普段、食事をどうしているのだろうか?



  ◇



「さてと……こんなもんか」

 グラは近くの商店街まで赴き、食材を買い集めていた。……時間があまりない以上、恐らくは作業中に食事を取ることとなるだろう。となれば、片手で食べられるサンドウィッチがいいと考えた。パンや野菜、ハムなどを買い揃え、工房に戻ろうと歩き出す。

「ん……?」

 その途中、酒屋の前で奇妙なものを見つけた。……黒スーツの男たちが二人、酒屋の前でぼやいていたのだ。

「あいつら……」

 彼らは間違えようもなく、先程工房に押し掛けたキシール金融の一員だった。サングラスは外しているようだが、雰囲気が同じだ。

「ったくよ……兄貴もさっさと潰しちまえばいいのに、どうしてあんなに悠長に構えてるんだか。お陰で今日も安酒だ」

「まあ、大口の仕事だから慎重にもなるんだろうさ。何せ額が額だからな」

 スーツ男たちの会話が聞こえてくる。グラは隣の店で商品を眺める振りをしながら、彼らの会話を盗み聞きすることにした。

「にしても、あの嬢ちゃんも気の毒だよなぁ。あの歳で、あんなのに目をつけられちゃあ、お先真っ暗―――つーか、人生終了だぜ」

「確かに、あればっかりは俺も同情したな。仕事だから、やることはきっちりやるが」

 彼らが話している「嬢ちゃん」というのは、工房にいたスルホンのことなのだろうか? その場合、彼女の身に一体何が迫っているというのか。

「なんであんな小娘に目をつけたのかは分からんが、クライアントの意向を詮索するのもあれだな。……つーか、早く決めろよ。こっちは待ってるんだぞ」

「わーってるよ」

 そこで彼らの会話は終わり、後は有益な話は聞けなかった。

「……戻るか」

 寄り道も程々に、グラは工房へと戻るのだった。



  ◇



 ……数時間後。


「……暇だ」

 食事を作り終えて、グラは暇を持て余していた。……結局、作業で忙しいエーテルたちには、先程耳にした話は黙っていた。作った食事は既に渡してあるし、かといって工房の製品には下手に手を触れられない。出来るのは精々、内容がよく分からないギアの専門書を読んでみることくらいだった。

「あ、あの……」

「ん?」

 やたらと小難しい本から顔を上げると、彼の傍にはスルホンがいた。どうしたのだろうか?

「ご、ご飯、ありがとうございました……」

 グラに向かって、スルホンは頭を下げた。食事の礼を言いに来たのだろうか?

「それを言いに態々?」

「あの、その、えっと……」

 しかし、礼を言った後もスルホンはもじもじしている。まだ言いたいことがあるのだろうか?

「ポ、ポリスさんのために、手伝って頂いて、あ、ありがとうございます……」

「別に俺は何もしてない。礼を言うなら、エーテルやハイドラにしろ」

「あ、う、その……」

 更には借金の件についても感謝するのだが、素っ気なくそう言われて返す言葉もなかった。

「つーか、作業はもういいのか?」

「あ、は、はい……今は休憩なので」

 話が続かないためか、グラは適当に話題を振っていくことにしたらしい。

「どのくらい進んでいる?」

「えっと、その、設計図は殆ど完成していて、今はポリスさんとエーテルお姉さんで試作品を作っています。ハイドラお姉さんは残りの設計図を書いていて、全体的に順調です」

「それは何よりだ」

 特に大きな問題もなく、計画は進んでいるようだ。……となれば、いよいよグラの仕事もなくなるか。

「あ、明日には試作品が完成して、明後日には製品作りに入ります。早ければ三日後には販売できそうです」

「三日後か……それで、どれくらい稼げる?」

「あの、その……う、うまくいけば、今週中には、目標に届きます」

「……早くないか?」

「う、あの、えっと、も、元々この仕事は利益が出るのが遅くて……しゃ、借金自体も、元々あまり残ってなくて、ただ、残りを返すお金がまだ回収できてなくて……」

 ギア製品はカートリッジとその他に分けられる。だが、通常販売できるカートリッジは日常魔法だけで、販売数はあまり多くない。他のギア製品は単価が高いのだが、それ故に一度に売れることがより少なく、元手を回収するのはもっと遅くなる。勿論、兵士からの特別発注やらで臨時収入が出来る場合もあるが、それは一部の工房だけだ。しかし、今回のカートリッジはあくまで日常魔法なので普通に販売できて、しかもそれなりに売れることが予想されるため、利益回収が早いというだけだ。

「そうなのか……」

 だが、それを聞いてグラは疑問に思った。……確かに、キシール金融は取り立てが厳しいのだろう。だが、もう残り少ない借金を、どうしてそこまでして取り立てるのか。寧ろ返すのが遅れたほうが、利息が付いてより儲かるというのに。

「スルホン、奴らの取り立ては最近になって酷くならなかったか?」

「え……あ、は、はい、先々週辺りから、特にここ数日は酷くなりました」

「やっぱりか……」

 スルホンの話を聞いて、グラは確信した。……キシール金融が取り立てを厳しくしたのは、恐らくは借金以外の理由だ。ポリスから借金を取り立てることで、何かしらの見返りを得られる状況になったのだろう。

「まあ、そちらは何とかする。お前はお前のやることをすればいい。頑張れよ」

「は、はい……!」

 励ましてやると、スルホンは顔を綻ばせながら作業場へと戻っていった。

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