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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
1の章 ~月乙女と陰の商業都市~
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ご報告フェイズ


  ◇



 ……数時間後。


「それじゃあ、結果報告といきましょうか」

 夕方になって。グラとハイドラはエーテルと合流し、調査の結果を共有することにした。先程とは別のカフェで落ち合い、奥の席を取って、報告し合う。

「まずはこっちからか」

「はい」

 最初にグラとハイドラが調査内容をエーテルに話す。……分かったことは三つ。観光客が急にいなくなり、翌日には発見されていること。しかし、発見されたときには口も聞けない状態にされていたこと。更に一部の商人から、攫われたのはほぼ間違いないという証言も得ている。発見された観光客には拘束された痕跡があり、本来ならば兵士が捜査するべき事案なのだが、彼らは一切動かない。

「なるほどねー。こっちでも観光客がすぐ見つかってるのは把握してたけど、やっぱ誘拐で確定かぁ……」

「で、そっちはどうなんだよ?」

「んー? こっちは上々よ。聞きたい?」

「いいから話せ」

「了解」

 そして今度はエーテルの番。彼女も自身の調査結果を話していく。

「こっちで特に大きかったのは、行方不明になった貴族のことかしら。……ハイドラ、いなくなった貴族の令嬢って、具体的にどこの誰だか把握してる?」

「は、はい……ええと、コズア男爵家のユリア様、フェルノーレ男爵家のコール様、それからムシィ男爵家のケイト様です」

「やっぱり……ハイドラ、その三人、見つかってるわ」

「え……?」

 エーテルの言葉に、ハイドラは目を点にしている。……その三名は、未だに行方知れずのはずだ。それが既に見つかっていると言われれば、困惑するのも当然だろう。

「正確には、目撃されてるってことかしら? ……三人とも、ある場所での目撃証言があるの。それもつい最近、彼女たちが攫われてからね」

「ど、どういうことですか……?」

「コズア男爵家のユリア・コズアはネレート伯爵家、フェルノーレ男爵家のコール・フェルノーレとムシィ男爵家のケイト・ムシィはホルム侯爵家の敷地内で目撃されてるわ。つまり、彼女たちはそこにいるのよ」

 エーテルが口にしたのは、意外な名前。ネレート伯爵家とホルム侯爵家は、エタール家と同じくセルロの名を持つ貴族だ。何故、そこの家に、行方不明の貴族たちがいるのか。

「そ、そんなはずは……!」

「あるのよ。これ、両家を担当してる庭師とか、料理人からの証言だもの。ま、一部は又聞きだけど、まず間違いないと思うわよ」

 エーテルの情報はかなり衝撃的だった。その場合、貴族と観光客、それぞれが失踪した理由が異なっていることも考えられる。もしかしたら、誘拐事件自体存在しなかった可能性すらある。

「どこでそんな証言拾ってきたんだよ?」

「ちょっと中央地区の酒場でね。その庭師と料理人、最近解雇されたらしくって、昼間から飲んでたわ」

 エーテルが情報収集を行っていたのは中央地区だった。他の地区にまで足を伸ばしていたのか。

「それと。兵士たちに圧力を掛けていたのが誰か分かったわ」

「本当か?」

「ええ。……兵士たちに圧力を掛けてるのは、表向きはセルロ知事よ。けれど、それを指示している奴がいるわ」

 セルロの町には、行政を仕切っている知事がいる。とはいえ、実際はセルロ貴族のほうが力が強く、その中でも一番地位が高いホルム侯爵家が実質的にこの町の実権を握っているが。

「勿論、知事に圧力を掛けられるのなんて、決まりきってるわ。―――ホルム侯爵家。それと、ネレート伯爵家もダメ押しで圧力掛けてたみたいね。エタール家は関わってないみたいだけど」

「そ、そんな……!?」

 その調査結果は、ハイドラを驚かせた。……セルロ三大貴族の内、二家が関わっていたのだから、困惑するのも無理ない。いや、もしかしたら、エタール家も関わっているのではと危惧しているのかもしれない。……実際はそんなことないし、エーテルもそれを調べていたので、そう付け加えておくが。

「それ、どうやって知ったんだよ?」

「これも酒場よ。兵士たちの溜まり場になってるみたい。酒場には色んな情報が集まるんだから」

「よく聞き出せたな」

 エーテルの手腕に、グラは素直に感心していた。……庭師のほうは、愚痴交じりに漏らすこともあるだろう。だが、兵士たちのほうは違う。いくら昼間から仕事をサボって飲んだくれているとはいえ、自分たちが圧力に屈したなどと、口が裂けても言わないはずだ。それを聞き出したのは、さすがと言うべきか。

「まあね。ちょっとお酌して、お尻触らせてあげたら、ぺらぺら話してくれたわよ」

「やっぱりか」

 しかし、現実はそう甘くない。案の定、エーテルお得意の体を使った捜査手法であった。

「あ、あの、エーテル様……? 嫁入り前に、見知らぬ殿方に体を許すのは、淑女としてどうなのでしょうか……?」

「ハイドラ、こいつは淑女じゃないからな。ただのクソビッチだ」

 ハイドラも呆気に取られて、そんな風に窘めるが、それも無駄なこと。もっと大それたことを平然とやってのけるエーテルは、この程度のセクハラ如きでは動じない。まして、情報を聞き出すためなのだから、それくらいは進んで差し出すだろう。

「とにかく、だ。ホルム侯爵家とネレート伯爵家、この二つが怪しいな。……この辺に探りを入れたいところだが、相手は貴族な上、後ろめたいことをしている最中だ。警備も厳重だろうな」

 だが、エーテルのお陰ではっきりした。二つの貴族が、今回の件に関わっていると。故に、もっと突っ込んだ情報が欲しかった。

「うーん……私の隠形なら忍び込めると思うけど、索敵魔法のセンサーがついてるだろうから、中々難しいわね。やろうと思えば出来なくもないけど」

「忍び込む前提なら、俺のほうがやりやすいと思うが。とはいえ、現状ではリスクが高いし、もう少し穏便な方法があればいいんだが……」

 相手は貴族で、屋敷の警備が厳重なのは想像に難くない。相手の手の内が分からない今、あまり危険な方法は取りにくい。他に方法がないのならばやむを得ないが、それは最終手段にしたかった。

「あの、でしたら……」

 そんなとき、ハイドラがおずおずと手を挙げた。何か妙案があるのだろうか。

「ホルム侯爵家とネレート伯爵家であれば、私が訪ねて、様子を見る、というのはどうでしょうか? 私ならば、両家とも何度が足を運んだことがありますし、怪しまれないはずです」

 彼女の案は、自身が乗り込むというもの。確かに、穏便さで言えばこれ以上のものはないな。

「まあ、それが妥当なんだろうが……」

「でも、さすがにハイドラ一人ってわけにはいかないわよね」

 だが、もしも本当に両家がこの件に関わっているのならば、ハイドラも危険だ。ハイドラの誘拐を指示していたのはキレートだったが、彼が貴族たちと繋がっている可能性は残る。彼女だけで乗り込ませるわけにはいかないのだった。


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