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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
1の章 ~月乙女と陰の商業都市~
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楽しい工房見学


  ◇



 ……その後、朝食の時間になって。


「……ほんと、朝ご飯も豪華よね」

「ああ……」

 不必要なほどに広い食堂にて、グラとエーテルは朝食を取っていた。その朝食は想像以上に豪華だ。ふわふわのパンと、とろとろ卵の目玉焼き、サラダも瑞々しく、ポタージュスープまでついている。この国の朝食としてはかなりのボリュームだ。

「気に入ってもらえたかい?」

「ええ、とっても」

「それは良かった」

 そう言って微笑むフタレイ子爵は、グラたちとは離れたところにいた。テーブルが長すぎて、距離が開いているのだ。……普通に近くに座ればいいのだが、客人はそこに座るのが慣例らしい。貴族って色々と変だな。

「今日はこの後、工房に案内するけど、その後はどうするんだい?」

「よろしければ、市場のほうを案内致しましょうか?」

「ふむ、いいんじゃないか?」

「昨日は人が多くて諦めちゃったから、丁度いいわね」

 食後のデザートが運ばれてくる頃、彼らは今日の予定について話していた。……そうして、午前はエタール家の工房を見学し、午後は市場を見て回ることとなった。

「さてと……それでは、一休みしたら行こうか」

 コーヒーを口にしながら、フタレイ子爵はそう言うのだった。



  ◇



「さ、入って」

「お邪魔しまーすっ!」

 グラとエーテルが案内されたのは、屋敷内のとある一室。そこは、エタール家の魔法研究を行っている工房の一区画だった。

「ふむ……機械だらけだな」

「グラたん、触って壊さないでよ」

 部屋は思ったより狭く、その空間内にはいくつもの工作機械が並べられていた。……これらは魔法式なので、魔神であるグラが触れれば、動作不良を起こす危険がある。エーテルが注意したのはこのことだろう。

「そこの機械は、魔法シミュレーターだ。属性石をスロットに配置することで、擬似的にパスを繋いで、魔法の擬似発動が可能なんだ」

「おぉっ! 噂に聞く最新装置じゃない!」

「属性石?」

「あ、そっか、グラたんにはそこから説明しないとね」

 フタレイ子爵の説明に、グラは首を傾げる。そこでエーテルが解説を始めた。

「属性石っていうのは、カートリッジに嵌め込まれてる部品のことよ。陸、海、空の下位属性と太陽、星、月の上位属性、合計六種類の属性石があって、それらの力で魔法が発動するの。カートリッジ内にはスロットって呼ばれる、属性石を嵌める台座があって、それと入気口、出気口をパスで繋げばカートリッジの完成よ」

「さすがに詳しいね。この装置は、一々カートリッジを作らなくても魔法を再現できるんだ。と言っても、攻撃系の魔法が暴発しないように、効果範囲がかなり絞られているけどね」

 そう言ってフタレイ子爵は装置に手を伸ばす。……装置は箱型になっていて、左半分は透明なガラスで覆われている。右半分のほうにある扉を開けると、内部には六角形を並べた蜂の巣状の溝が彫られていた。線の交点部分には丸い穴が開いていて、辺の部分にはピンが刺さっている。

「その穴にスロットを嵌め込んで、繋ぐパスの部分だけピンを抜けばいいんだ。後は後ろの入気口に手を当てて、普通の魔法と同じように発動させればいい」

 入気口というのは、ギアと術者を繋ぐ端子のようなものだ。ここに触れていないと魔法が発動しない。カートリッジの入気口もギアの入気口と繋がっているので、この装置も同じ理屈なのだろう。因みに出気口は、魔法が出力される穴である。入気口から流された力が属性石によって変質し、出気口から魔法として放たれるのだ。

「良かったら、一度試してみるかい?」

「いいのっ!?」

 フタレイ子爵の申し出に、エーテルは瞳を輝かせて食いついた。そのまま飛び掛りそうな勢いだ。

「ああ。丁度、ハイドラ用に開発してる魔法があるからな。それの動作確認をするから、起動を任せてもいいかい?」

「喜んでっ!」

「興奮しすぎだ」

「何を言うのグラたん!? この魔法シミュレーターは、その辺の工房には置いてないのよ! それを使えるなんて、またとないチャンスだわ!」

 最新の装置を使えるとなって、エーテルのテンションも高くなっている。……本当に壊さないよな?

「じゃあ、回路を用意するから、ちょっと待っててくれ」

 フタレイ子爵はそう言うと、装置内に手を加えていく。穴に差し込んでいくのは、属性石が嵌め込まれた台座。その色は様々だが、金色、次いで青色が多い。次に溝を塞いでいるピンを抜き、回路を繋げていった。

「月属性と海属性の魔法?」

「ああ。エタール家は月属性魔法の研究に秀でているからね。そして、月属性は海属性と相性がいい。……尤も、ハイドラがこの魔法を使ってくれるかは分からないけど」

 フタレイ子爵が漏らした呟きは、どういう意味なのか。グラはそれが気になったが、突っ込むのも野暮だし、魔法については殆ど分からないのでやめておいた。エーテルはそもそも興奮のあまりちゃんと聞いていなかった。

「さ、準備完了だ。そこに手を触れて、魔法を発動させてみるといい」

 回路の用意を終えて、フタレイ子爵は扉を閉めた。後は、入気口に手を触れ、装置を起動させるだけだ。

「よしっ……すぅ」

 意気込みは十分。エーテルは装置に手を当て、魔法を発動させる。

「うわぁ……!」

「ほぅ……」

 すると、装置の左半分、ガラスで覆われた空間に変化が生じた。どこからともなく水の塊が現れ、細長い何かを形作った。

「どうやら、成功したようだな」

 それは小型の蛇だった。水が八匹の蛇となり、装置の中をうねうねと漂っている。

「オロチ―――東の海を越えた先にある国で、特に語り継がれている伝承を参考にした魔法だ。基本的には月属性攻撃魔法のウォーターアローと同じだが、外見による牽制効果と、八本待機させることによる連射性能が高い。……今は魔法シミュレーター内だからこのサイズだけど、本来ならばこの部屋を埋め尽くす規模になるはずだ」

「なるほど、だから月属性と海属性なのね」

「そういうことさ。月属性にはベクトル制御の力がある。それを用いることで水の形を作っているんだ。海属性は水を出すために採用しているだけだから、どちらかといえば月属性魔法になるが。その辺もウォーターアローと同じだな」

 魔法属性にはそれぞれ特徴がある。海属性は水を司り、何もないところから水を生み出すことが出来る。月属性はベクトルを操り、また形のないものに形を与えることが出来る。その二つを併用することで生まれた魔法のようだな。

「さて、次はこれなんだが―――」

 そんな調子で、工房見学は昼まで続いたのだった。

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