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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
1の章 ~月乙女と陰の商業都市~
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手回し完璧の黒幕

「そいつは今どこにいる?」

「わ、分からない……依頼が完了したらまた現れるって言ってたんだ」

 その後も、グラは尋問を続けている。国王からは具体的な情報を得られなかった男なのだ。分かることがあるなら、出来る限り知っておきたい。

「そんな奴の依頼を受けたのか?」

「ま、前金をたんまり払っていきやがったんだよ……捕まえたらその倍払うって言われたから、やらないわけにはいかないだろ」

「要するに、お前らはろくでなしのごろつきか。金に目が眩んで女を襲う、しかもあの慣れた手つき―――お前たち、いつもあんなことしてるのか?」

「た、たまにだよ、たまに……ほらさ、仕事がうまくいかないときとか、むしゃくしゃしたときとか、つい、な?」

「つい、で女を襲うのか? しかも、こんな集団で」

「さいてー」

 男の釈明に、グラもエーテルも冷めた目を向けている。……グラの見立て通り、彼らは不良だ。日雇いの仕事で日銭を稼いでいる辺りはまだ善良だが、悪乗りが過ぎることも多く、盗みや強姦に手を染めては反省もしない。はっきり言って、社会不適合者の集団だった。

「それじゃあ―――」

「グラたん……!」

 グラが尋問を続けようとしたそのとき、裏通りの奥から火球が飛び出し、グラへと降り注いだ。

「くっ……!」

 グラは咄嗟に、エーテルたちを庇うように火球を受け止める。魔神である彼ならば、魔法で放たれたであろう火球を無傷で受け止められる。

「へっ、あばよ……!」

「あっ、ちょっと……!」

 その隙に、男は縛られたまま逃げ出した。エーテルが足を拘束していなかったせいだ。他の男たちも既に目が覚めていたのか、一緒に逃げ出している。

「……逃げられたか」

「ううっ……不覚だったわ。プレイ用の縛り方だと足が縛れないから、つい忘れちゃったわ」

「まあいいさ。―――とりあえず、この町ですることが出来ただけでもな」

 王都で解決したはずの一件が、このセルロでも続いていた。それを見逃すことなどグラには出来なかったし、そうでなくとも、女を誘拐する輩は許せない。もしも妹がその被害に遭えば―――そう考えただけでも、動く理由になる。

「あ、あの……」

「ん?」

 すると、助けた少女―――ハイドラが、おずおずと話し掛けてきた。

「あの、助けて頂いてありがとうございます。お礼をしたいのですが、今からお時間、大丈夫ですか?」



  ◇



 ……その後二人は、ハイドラから食事に誘われていた。


「お二人とも、今日は本当にありがとうございました。このご恩はこの程度で返せるとは思えませんが、どうぞ召し上がってください」

「……それはいいんだが」

「……ここ、私たち、場違いじゃない?」

 彼らがいるのは、セルロのレストラン街にある料理店。テーブルには出来立ての料理が並び、食事の準備は万端だ。……しかし、問題なのはグラたちのほう。この店はドレスコードこそないが、他の客は皆スーツなりドレスなりを身に纏っていて、グラやエーテルみたいにカジュアル(そもそも彼らの格好がカジュアルにすら程遠いが)な服装の者はいない。一言で言えば、浮いているのだ。

「申し訳ありません……ドレスコードの関係で、他の店に入れなくて。もう少し早い時間でしたら、お洋服を仕立てることも出来たのですが」

「出来るのかよ……」

「金持ち恐るべしね……」

 とはいえ、彼らも丁度食事にしようとしていたところだし、居心地の悪さを除けばいい店だ。そこさえ我慢すれば、断る理由もなくなる。

「ま、奢ってもらえるのなら、断る理由もないか」

「そうね、おいしそうだし。頂きまーす!」

 ハイドラの厚意に甘え、二人は料理に手をつける。……焼き立てのパンは香ばしく、肉料理は柔らかくてジューシー。サラダも新鮮な野菜を使っているし、コップに注がれる水ですら上質なものだ。要するに、料理はとても美味だった。

「おいしー!」

「ああ。こんなにうまい飯は今まで食ったことがない」

「喜んでもらえて何よりです」

 グラたちの感想に、ハイドラは心底喜んだ。その調子で食事は進み、最後のデザートも食べ終えていく。

「ふぅ……ご馳走様」

「いやー、なんか悪いわね。私なんて殆ど何もしてないのに」

「いえいえ、お二人には本当に感謝しています。あそこで助けて頂かなかったら、どうなっていたことか……」

 食事を終え、食後のコーヒーが運ばれてくる頃。食事を振舞ったというのに、ハイドラはまだまだ感謝し足りないという風にそう言った。……あのまま攫われていた場合どうなっていたかを考えれば無理ないか。王都の件を知らなくても、ろくはことにならないことだけは確かだからな。

「それはいいんだが……今更言うのもあれなんだが、この件は兵士に言って対処してもらったほうが良くないか?」

「あ、そういえばそうよね……」

 だが、そんなハイドラに水を差すように、グラはそう言った。……兵士の役目は町の治安維持だ。誘拐事件となれば、まずは兵士に通報するのが普通だろう。

「それなんですが……」

 しかし、ハイドラの反応は芳しくない。何か言い淀んでいるようだ。

「どうかしたのか?」

「それが……最近、セルロの町では失踪事件が多発しているんです。それも、貴族の娘ばかりが」

「それって……」

 ハイドラの話に、エーテルはある程度状況を察した。が、一応最後まで話を聞こうと、余計な口は挟まず、相槌を打つのみに留める。

「ですが、兵士の方々はまともに取り合おうとしないのです。誘拐の可能性があると言っても、捜査はしないの一点張りで……」

「なるほど、ここでもそうなのか」

 そして、ワンテンポ遅れてグラも状況を把握した。……要するに、兵士たちもグルなのである。王都ではキレートという男が国王を取り込んでいたが、それと同じようにこの町の兵士たちも裏から圧力を掛けているのだろう。となれば、通報するのは逆効果かもしれない。

「それでなのですが……あの、助けて頂いた上に、こんなことまでお願いするのは大変心苦しいのですが、お二人を見込んで頼みたいことがあるんです」

「頼み?」

「何々? 何でも言っちゃって。私と、主にグラたんがばっちり請け負ってあげるから」

「勝手に俺の分まで……まあ、別にいいが。言ってみろ」

 現状では、兵士に頼ることができない。そんな状況で、ハイドラはグラたちにこんなことを申し出る。

「―――私を、守って下さいませんか?」

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