入学はいかが?
昨日の俺に言ってやりたい。スペックが高いのか分からない?
A.高いじゃないかバカやろおおーー!
さて、彼が今居るのは教室。しかし彼の姿は人に覆われていて見えない。その大多数が女子である。
「ねえ、あなたの名前はなんていうの?」
「好きなものは?」
「私と___」
「どこの家の人?」
という質問攻めみたいなのをくらっていた。できればさっさと寮に帰りたい、と思う程に。
「あの、見えないのでどいてくれませんか?」
黒板らしきものに書いてあるのは重要な事であるだろうし、何より、書きそびれたものもある。それを書きたいのに邪魔をしてくるこいつらが鬱陶しい。
まさか、入学初日からこんな事になるとは、思いもしなかった。
風魔法『風の足場』を使い、するすると抜け出す。本を見て初見で作り出せる程度の初級レベルの魔法だが俺が使うときちんとした足場になる。普通は足場にしたら足が突き抜けるので意味がないとかなんとか。
「ああっ、待ってください」
「ちょっと何」
「待ってください〜」
あれ、なぜここまで女というものに失望しているのだろうか。前世では興味もなく、今回もまた興味がなくなりそう。はあ、とため息をつき、空中に逃げ出す。
空中に居座りながら黒板に書いてあるものを写しおえ、そのまま荷物を持って出て行く。
確か寮にはもう帰っても良かったはず…。うん、問題ないな。
『風の足場』を展開させながらぽんぽんと走っていたら先生が驚愕の目でこちらを見ていた。
そんなにおかしいのか?まあいいか。
寮に着くと同室の人はまだおらず、少し寂しさを感じた。
「さて、明日ある試験のために『風の弾丸』を完成の域に持ってこよう」
実は最近、魔法を想像で強化してみたら矢みたいなものが段々と細く、小さくなっていったのだ。最初は気づかなかったが、見たことのある形だったので思い出してみたら銃の弾丸だったのだ。なので使っていた銃を手に見立てて思い浮かべ、発射するに至ったのだが…パスっという音しか出ず、イラっとしたものだ。
おそらく原因は想像力が足りなかったのだろうということで絶賛銃のフォルム、機構などを思い浮かべ中である。紙にカリカリ書き出して休憩しようとしたところで同室の人が来た。
………おい、女の子じゃないよな?よな?
「あの、ここであってるんですか?」
「はい、ここなんですが…」
「性別は?」
「…男です」
はい、ダウト〜!言い淀み、目を一瞬逸らしたな。だが彼女は暗い表情のままだ。
「性別は女ですね。おそらく事情があるみたいなので言いふらしはしませんし、そんなに下衆じゃありません。通常通りにしていて構いません。俺に迷惑がかからなければですが」
「私は男です!」
「じゃあ、鑑定石借りてこようか。父上がまだ持っていたはずだし」
その一言で彼女は真っ青になった。だーかーらー。
「言いましたよね?言いふらしもしませんし、告発するようなこともしません。事情があるのでしょう?普通通りにしていてくださいと言いました」
「……っ、そうです。私は『ラティス・フィリエルド』。性別も女です。…ただし、男として育てられました」
「ふむ、事情も聞けたのでいいです。では、僕はまだやりたいことが残っているのでお先にお風呂に入ってください」
ジトーッとした目を向けてくるが、
「大丈夫ですよ、興味ありませんから」
「っ!」
そのまま風呂に向かっていった。多分俺のの関とかを懸念したんだろうな〜。男として育てられたとはいえ、そこは恥が残るだろうしな。
「さて、と。マグナム、デザートイーグルみたいな銃しか使ったことねえから他の拳銃が思い浮かばん…」
暗殺の時、鍵をかけて籠城して応援をまつやつがよくいたので扉破壊の道具、脅しなどで使っていた銃である。
「まあ、使ってみるk」
思い浮かべて使ってみようとすると指の先に大気が収縮している。そして急いで窓を開け、発砲すると螺旋のように回転しながら飛んでいき、空中で爆散した。
………これ、使っていいものなのか?