縁談とは…?
「ああ、ティル、そんな嫌そうな顔するな。来るのは最速でも1週間はかかる。伝達するのと来るのでは速さが違うからな」
「まあ、それは良いんですけどね…」
なぜか前世でのことを思い出す。まだ、両親を手にかけていなかった時、中学生くらいか。そのルックスの良さから近寄ってくる女は多かった。大抵「ごめん、興味がない」でバッサリと切られていた。
しかし、自分のルックスは良いのかはさっぱり分からない。が、スキルなどのことを聞くと寄ってくる虫は多そうだ。自分の好みの人は永遠に現れない気がする。政略結婚__その言葉が頭によぎる。
おそらく俺は家を継ぐことはない。長男、『エスト=ハフィーリエ』が継ぐことになるためだ。姉や妹は結婚する。俺は騎士団に入るか独立する。大体の貴族がそうしていると前に話していた。
この際なので家族構成、名前を出しておく。
ルドガー=ハフィーリエ
父親であり、現当主。
リリエル=ハフィーリエ
母親であり、ルドガーの正妻。母上以外の女を姉、妹、メイドさんぐらいしか知らない。
シェルジュ=ハフィーリエ
長男。次期当主、優しい雰囲気を持つ兄で嫌われていることが少ない。
要はモテる男。
アリエル=ハフィーリエ
長女。普段は気が強いが、家族、兄弟関連になると途端に優しくなる。
ティエル=ハフィーリエ
次男。俺。
ウリエル=ハフィーリエ
次女。なぜか愛着がわく妹である。一花の事があったからだろうか、大事にしたい。
となっている。
ぶっちゃけると、俺はこの家継がなくても独立してやっていけます。という事だ。
俺は長男ではないから継げない。しかし、このスキルがあればそれなりの地位にはつける。それで良いじゃん、と思ってしまう。
父上の仕事を見ているとげっそりとする様な紙束、それに判子をおし、書き、おし、書き、おし、…のエンドレスリピート。
はっきり言わせてもらう。誰がやれるかあんなもん。俺の性分には合わない。
暗殺の際の書類整理、情報収集、情報整理などと似ているとは思うがそんな楽な仕事ではないだろう。クレーム、意見などを一々書類を見て片付けなければならない。怠いですねー。良かった〜、長男俺じゃなくて。
「はっはっは!問題はないぞ。なんせ伯爵家だからな。一応それなりの地位であり、侯爵家当主様とは仲が良い」
「あの…まさか……」
「む?当主様は娘はおるぞ。だが、持ちかけられるのはシェルジュのほうだ。安心しろ」
「ほう…良かった…」
「ですが、僕はその縁談、断るのですけどね」
「え!」
まさかの兄上が断る発言。まって、ちょっと待って。
「僕は好きな令嬢がおりますゆえ__」
「ま、待ってください、お、私は___」
「ああ、間違いなく縁談をティルの方に持ってくだろうね。まあ、可愛いと思うし、良かったではないですか。早くから婚約者が決まって」
兄上がこの口調になっている時は完璧に演技している。元暗殺者舐めんな。
「__まあでも、そこまでにしといてくださいね。演技は」
「おっと、ばれてたか」
「ばれてますよ、やめてくださいよ」
悪戯が不発に終わった事を知るとニヤッと笑い、水に流すかの様に場を変える。
「だが、別の貴族からは間違いなく縁談を持ちかけられる事になる。それだけは覚悟しておけよ?」
「はい、わかっています」
「特にフィリエルド公爵家は特にくるだろうな…」
「ああ、フィリエルド公爵家ですか」
父上と兄上が二人して納得しているが分からない。すると姉上が囁いてくる。
「フィリエルド公爵家はね、女の子が8割方を占めてるの。公爵家だからおいそれと別の貴族に嫁に出すわけにもいかないのよ」
「……………」
やばい、嫌な予感がしてくる。そして止めに、
「その点、ティルは高位スキル持ちだし、伯爵家出身だから問題ないのよ」
母上が見事に言ってくれた。
「あ、あの、それはそれで怖いんですが…」
「大丈夫だ、絞り殺さrぐっふ…」
「子供の前でそういう発言は控えましょうね、あ・な・た?」
意味がわかるためほっとく。そういう発言をしたのが悪いんだ。
「ま、まあ、それはそれとして学園には行ってもらう」
「学園、ですか」
「ああ、学ぶ事が多いところだ。頑張ってよ…」
「あ・な・た?」
「 勉強してこーい」
「はい、分かりました」
なぜだか、色々気になる発言が多いが問題は多いだろう。
頑張っていかねば。