暗殺者のステータス
最近は体幹を鍛えるトレーニングと三半規管を鍛えるトレーニングを行っている。理由としては、屋根から屋根へ飛び移る際、回転しながら行った方が遠心力もかかり、より遠くへ飛べる。だが、目が回って落ちたんじゃ話にならない。
ぶっちゃけ必要ないが、やっておくに越したことはない。バランスも大事だ。多分。
「ふう、やめるか」
およそ一時間くらいだろうか。ずっと体を動かし続けても平気になってきた。前世は24時間1日中張り込むなんざザラだったのでそこにまでは持っていきたい。
次に行くのは書斎。主に魔法関連の書を漁る。どうやらゆらゆらと自分の周りを揺れているのが魔力らしく、色で量がわかるらしい。実質、それを利用した測定機などもあるそうだ。
「えーと、『火種』」
ポッと、自分の指先にライターの火ぐらいの火が現れる。それを息を吹きかけ消しながら呟く。
「不思議だよなぁ、詠唱だけで科学を否定できるようなことができるのだし」
着々と魔法を試す中、一つだけ威力がおかしいものがあった。
「『微風』〜……うわぁっ!」
ヒュルルと鳴った風が突然旋風のようになったので驚いた。すぐさまキャンセルし、事なきことを得た。
「なんだよ、びびったな…」
先ほどまでの魔法とは違い、初級なのにこのザマだ。なんなんだ一体。
「まあ、いいか。考えるよりも行動だ」
だが、それは制御ミスだと判断した。しかし、次の日にそれは覆されることとなる。
「ステータスチェック…ですか…?」
「ああ、お前の体に何もないと言っていたが気になるのでな。保険だ」
「あら、スキルが発現してないかとかが気になっていたのでは?」
「む、それもあるな。それよりも、早よこの水晶に触れろ」
「あ、はい」
水晶にはこう記されていった。
ティエル・ハフィーリエ
Lv.1
HP:100
MP:200
筋力:50
知能:100
俊敏:150
スキル
神風級魔法
完全模倣
暗殺
《暗殺・派生》
隠形
気配察知
隠蔽
忍び足
脅迫
立体移動
暗視
etc…
となっていた。うん、前世思いっきり入ってるね。とりあえずこの結果を隠蔽したいんだけど…。
すると、すすす、と文字が消え、自分のステータスと神風魔法以外は消えていた。なるほど、こうやって使うのね。
「おおっ!神級の風魔法スキルとは!ティル、すごいぞ!」
「ステータスも目を見張るものがありますね。すごいですよ、ティル」
「そこまですごいのですか?あまり実感がわかないのですが…」
「おおよそ千年に一回生まれてくるらしい」
「そう聞くとすごいですね」
どうやら千年に一回の確立に当たったようだが、
「でも、前はこんなスキル持ってなかったのよねぇ…」
「え、そうなんですか?」
「ええ、後天的に現れることもあるみたいなのだけれど…」
ふむ、俺が割り込んだからってのもあるかもな。まあ、いいだろう、しんでなくて。
「そういえば、この水晶、どこで借りてきたんですか?」
「王都にいる侯爵様から借りてきた。昔の知り合いでな」
「はあ、そうなんですか」
侯爵とか貴族関係の話を聞くと嫌な予感しかしないのは何故だ。何か、予感が当たる気がする。
面倒なことになる、と。