表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

吊り橋効果

作者: 木介
掲載日:2025/10/16

「彼女が欲しい」


自然と出た言葉に友人の【加山彰】が反応した。

俺【高橋修二】は今まで一度も彼女が出来た事が無く、大学生になったら自然と彼女が出来るものだと思っていたが現実はあまくない。


「じゃあ合コン開くか」


この一言で合コンに参加する事になった。

彰はスポーツをやっている事もあり体格が良く人望も厚い、まさしく男らしい人物で反対に俺はいわゆる可愛い系というやつだ。


彰とは大学に入った時に知り合いその後もよくつるんでいた、最初に知り合ったのが彰でなければ暗い大学生活を送っていたかも知れない。

こんな良いやつなのにどうして、彼女が出来ないのか理由を聞いた事がある、彼女は出来るが続かないと俺に対する皮肉にもとれる答えがきて反応に困ったものだ。


今回の4対4の合コンあまり期待はしていなかった。

最近ではマッチングアプリで恋人探しをしていても【顔がタイプじゃない】【身長が高すぎる】【胸が小さい】など考えれば考える程に自分の理想が具体性を帯びてきて、存在しない人を求めているような感覚に陥っていたからだ。


だけど今回の合コンには天使がいた、一目惚れとはこの事かという程の衝撃を受けたのまでは覚えている、この子と話す為にお酒をハイペースで飲んでしまい、気がついた時にはタクシーで自分の家に彰と向かっている途中であった。


この後悔を彰に話すと俺が酔い潰れている間に彼女とインスタを交換していたから連絡を取れるという。

俺は彰にまた会えるように手配してくれないか頼み込んだ。


「お待たせしましたー」


車で待っている俺達のもとに二人の女性が現れる一人は【岡田恵美】さん、俺が思う理想の天使で、もう一人は【森野凛子】さん彼女もあの合コンに参加していたらしいがあまり覚えていない。


「おぅ、俺達も今さっき着いた所だよ」と彰は軽く手をあげて挨拶をした、俺は「初めまして」というのも変だし「今日はよろしく」というのも変だなどと考え発言のタイミングを計っていると。


「初めまして、私岡田と言います。今日は運転よろしくお願いします」


彼女から話しかけられ嬉しさを感じたが覚えられていないという悲しさも同時に感じられた。


「初めましてって、恵美なに言っての?この間の合コンにいた高橋くんだよね?今日は運転よろしくね!」


返事をする間も無く森野さんが明るい声で話しかけてくる。

「そうだったの!ごめんなさい」と彼女は直ぐに頭を下げてきて(可愛いなぁ)と思ったが「気にしないで」と無難な返答しか出来ずにいた。


今回の集まりは恵美さんが心霊好きという事もあり、彰の提案で心霊スポット巡りをしようという流れを作ってくれた、車を持っている友人という体で参加し、一人暮らしの俺はこの日の為に実家の車を借りてきたのだ。


4人で色んな所を回った【墓地】【廃墟】【公園】近場で探してもこんなにあるものかとネットの心霊スポットは多かった、その間彰と恵美さん俺と森野という組み合わせになってしまっている。

もしかして俺の事が好きなのかと思うほど俺に森野は話しかけてきて俺は内心鬱陶しく思っていた。


最後に一番怖いと噂のトンネルへ向かった、入り口から出口が見える程のトンネルで約500mの作りになっている。

このトンネルでは【トンネルの途中で女性が立っていた】や【女性の泣いている声が聞こえる】など噂が多い心霊スポット。


入り口に車を止めて懐中電灯を片手に4人で中を進んでいこうとした時

「本当に行くの?」と森野がつぶやく。

「嫌なら車で待っていても良いよ」と彰が言った。

「車に1人ってそれはそれで怖いでしょ」と俺に向けて返事をしたように思ったが気にせず先へ進んだ。


中程まできた所で女の啜り泣くような声が聞こえた。


「待って今何か聞こえなかったか?」


俺は咄嗟に周りへ伝えた。

皆も耳を澄まして聞いていると懐中電灯で消えてトンネルの薄暗い明かりだけが頼りになり恵美さんは彰の腕にしがみつき、森野は俺の腕にしがみついていた。


誰かの息を呑む音だけが聞こえる。


するとまた「ぐすっぐすっ」と啜り泣く音が聞こえ、突然耳元で息を吹き掛けられた。

俺は無様に大声を上げて真っ先に引き返した。

先に逃げ出したが森野の引っ張る力が強く

彰に追い抜かれる、彰の逞しい後ろ姿を見て少し自分が情けなかった。


トンネルを出ると「大丈夫か」と彰がすぐに歩みよってくる、「あぁ」と息を切らしながら応える。

俺は「森野お前引っ張り過ぎだ」と振り返るがそこに森野はいない。


「私ならここにいるよ」と彼女は車の側にいた。


「いつから...」


「私はトンネルには入ってないよ」


俺は自分の腕を見てくっきり付いた手形に怯えるのだった。


それに異変があったのは恵美さんもだった、先程まで彰にくっついていたが今は距離を取り冷めた様子だ。

彼女達を駅まで送る車内に会話は無く重たい空気が張り詰めていた。

駅に着くなり恵美さんは何も言わず立ち去り「運転ありがとね気を付けて」と森野が別れの言葉をかけてきた。


二人と別れた車内で今度は彰の様子がおかしく俺はまたこの空気かと早く家で休みたいとうんざりしていた。


車をパーキングエリアへ止めて、ここで別れるかと思いきや、彰は「話があるから今日は泊まっても良いか?」と言い俺は渋々了承した。


ところで吊り橋効果というのをご存知だろうか恐怖による心臓のドキドキを異性によるドキドキだと脳を錯覚させて関係を発展させるという心理現象だ。

今回の心霊スポット巡りにはそうゆう意図もあったのだが、結局発展しようしたのは彰と恵美さんに思えてならない。


インスタを交換したと聞いた時から薄々は気付いてはいたが、恵美さんは男らしい彰に好意を抱いている、どこでも彰の側を陣取り少しでも何かあれば腕に抱き付いていた、その光景を見て(良いなぁ)と下心全開で羨ましがったがあれも恵美さんの戦略であったに違いない。


なのに最後の冷めた目はなんだ?


今回に限らず俺に彼女が出来そうな瞬間はあった、しかし毎回上手くいかない、それは彰の存在があったからだ、持ち前の人の良さと男らしさで俺から女性を奪っていく。


何でそんな事?


もしかして彰は俺に彼女が出来ないように動いている?


そんな考えに至った時、部屋の鍵が閉まる音がする。


俺は緊張した面持ちで聞く

「話ってなんだよ」

あの時と同じで息を呑む音だけが聞こえる。


「お前って可愛い顔してるよな」


(了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ