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第5話 洋館の娘が死んだ

 静かにたたずむ洋館が、

無数のランプで照らされている。

私が車から降りるや否や、

警官たちが敬礼をした。

 私は二階堂にならって、軽く会釈する。

すると、奥から制服姿のハゲ頭がこちらに向かって小走りでやってきた。

三橋だ。

 相変わらず夜でもランプの光を浴びて、

燦然と輝いている頭部は意味芸術的だ。

日本人にしては珍しく長身で、

帯刀したサーベルがおもちゃのように見える。

 私は二階堂の真似をして、三橋に話しかけた。


「お待たせしました。」

「いや、電話で聞いたより早く来てくれて、感謝する。」

「現場を見せていただいても?」

「うむ。

あ、四葉女子は……。」

「大丈夫です。

死体は慣れています。」

「確かに、

殺人現場がはじめてでないことは重々承知ですが。

今回のは、すこし凄惨かと。」


 普通の人殺しではない、と電話で聞いた通り、

死体もどうやら普通の状態ではないらしい。

 私は四葉の顔を見た。

四葉は怯むことなく、大丈夫だと言いきった。

仕方がないので、私は助け船を出す。


「彼女もそれなりに修羅場はくぐっています。」

「むぅ……。

それはそうだが。

……まぁ、うちの新人のように、

その場で吐き戻すことはないだろうし。

お二人ともお通ししろ。」


 どうやら、

警官が死体を見て吐いてしまったらしい。

私と四葉は三橋と警官に連れられて現場に向かった。

三橋があらましを説明し始めた。


「被害者は館の主人の娘だ。

当時、館には主人と奥方、女中が二人。

後、主人の呼んでいた客人が一人。

五人は別室で待っていてもらっている。」


 通されたのは二階の個室。

部屋のドアが開いており、

入り口に立つと部屋が血塗れだった。

真ん中には車イスに乗っている頭のない人間。


「被害者は頭部を一発で撃ち抜かれている。

頭部の三分の二が吹き飛んでいた。」


 車イスは入口ドアの方を向いている。

窓はその背中辺りにあり、

ちょうど頭部の高さの窓が一枚割れている。

 よく見ると、

飛び散っているものには金色の髪が見られる。

車イスに残った身体を見ると、

白く美しい肌に血肉がこびりついていた。


「事件当初、被害者は部屋で一人でいたらしい。

ドアに鍵をかけて、窓にも鍵がかかっていた。

同時刻、居間にいたのは主人と奥方のお二人。

 女中は一人が厨房で夕食の後片付け。

もう一人は足の悪い娘の介護のため、

隣の部屋に待機していた。」


 窓から車イスまで約二メートル。

窓の外には向かいのビル。

ビルはどうやら、

廃墟で窓ガラスが所々割れている。

 だが、どの窓から狙撃をしたとしても、

ここまで距離がある。

並みの狙撃銃では、

人間の頭部がここまで破裂するような威力にならない。

もし、口径が大きな銃だったとしたら、

窓の直線上にあるドアも吹き飛んでる。


「来客があり、

厨房の女中が玄関に向かっている間に、

娘の部屋の方から銃声が一発。

 家に上がった来客と主人、

女中が娘の部屋に向かった。

到着時には、

もう一人の女中が何かを叫んでドアを開けようとしていたそうだ。

だが、ドアが開かなかった。

 主人と来客もドアをこじ開けようとしたが動かず。

仕方がなく女中が主人の許可を得て銃を持ち出し、

娘の部屋のドアの鍵へ向けて発砲。

ドアを開けると、娘の無惨な姿があった。」


 はい、犯人はドアを撃った女中。


「部屋がまったくの密室で、

あのビルから狙撃しようとしても距離がある。

凄腕の狙撃手でも、

頭を撃ち抜くのは困難だと思う。

 念のため捜査員をビルに向かわせたが、

人がいた形跡はなかった。」


 いや、こいつ、何言ってんだ?

狙撃用の銃でアレだけ距離があったら、

人の頭はこれだけ吹き飛ばない。

ここまで頭を吹き飛ばそうとしたら、

至近距離で弾速の遅い銃だ。

 私は振り返ってドアを見た。

外から内側に撃ち抜かれた跡がある。

だが、中から外への弾痕はない。

 窓も中から外へ割れており、

ガラス片が外に飛び散っている。

つまり、ドアから撃たれた弾丸が部屋に入って、

被害者を貫き窓を砕いて外へ出た跡だ。

 ドアを撃った銃が凶器だ。

ドアを施錠し、手でドアを押さえた被害者を、

鍵の破壊にかこつけて撃ち殺した。

 どうやらこの娘は欧米人だろう。

恐らく養子だ。

金色の鮮やかな髪に、

陶磁器のように白く美しい肌。

さすがに日本人とは思えない。

 ならば、女中はこの娘の介助をするため、

娘の母国語を話せる者にしているはずだ。

女中が『ドアの外に暴漢がいる』、とかなんとか言って、

被害者にドアを施錠させドアのそばに釘付けにする。

そして、目撃者を呼んでから、堂々とドアごと射殺。

 警察に証言するときは、

『ドアを撃つので離れてください』と言ったと証言すれば良い。

現場に同じ国の言葉を理解できるものがいなければ完璧だし、

理解できるものがいたらその人物も共犯で決まりだ。

 ボンクラ警官、ここに極まれり。

こんなことで私を呼ぶなと叱りつけたくてたまらない。


「別室の五人に一度お会いしたい。

五人のところへ案内していただいても?」


 ちゃっちゃと犯人を捕らえてもらって、

帰ろう。

私は疲れているんだ。

早く休みたい。

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