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第33話 生きて活きると書いて、生活

□四葉サイド


 片付けは思っていたより捗った。

荷物は鞄一つに詰めきれるくらい。

でも、思い出は山ほど。


「寂しくなるね。」


 カフェーヒポポタマスのマスター、

七瀬さんがそう言った。

私は頷いて笑う。


「でも、絶対帰ってきますから。

それまで、待っててくれますか?」

「ふふっ。

当たり前だよ。

ここはいつでも、いつまでも、

『二階堂探偵事務所』だからね。」


 マスターはそう言って笑う。

カフェーの入り口から、

四人で事務所を見上げた。


「元気でね!

ちゃんと食べるんだよ?!」


 ハツさんがそう言いながら涙をハンカチでぬぐう。


「はい。

シロちゃんの好きな、おかかのおにぎり。

また、お客として来てよ?」


 キネさんはそう言って、

大きな包みを私に手渡した。


「少し遠いけど、

絶対に食べに来ますよ。」

「待ってるよ。

キネ特製のプリンをご馳走するからね。」

「絶対だよー?!

絶対だからね?!」


 ハツさんがわんわん泣きながら私に抱きついてきた。

キネさんはハツさんをたしなめつつ、笑う。

 私は、修行に出ることにした。

探偵になるための修行に。


「経理とかそう言うことは全部先生頼みだったから。

蓮さんに教わって。

捜査についても、

柳明さんに教わりながら『風水』も習うつもりです。」


 百里探偵事務所に、

泊まり込みで修行することになった。

私はあの一件で推理については自信がついたが、

一人で探偵事務所を切り盛りする経営者としての自信がない。

それを蓮さんに相談したところ、

二つ返事で働きながら教えてもらうことになった。


「あの一件以降、

きな臭いから気を付けるんだよ?」


 マスターはそう言って、私の肩に手を置いた。

大きくて優しい手だ。


「私は勝手に、

シロちゃんのことを三人目の娘だって思ってるから。

困ったことがあったら頼って欲しいな。」

「ありがとうございます。」


 マスターの目尻にも涙が見えた。

私はマスターの手に自分の手を重ねて笑う。

 マスターの言うきな臭いとは、

例の騒ぎでノーフェイスを裏切った二人がおかしくなったことだ。

 まず、偽物の『一ノ瀬』。

突然、変な箱を持って何かを探し続けている。

一日のうち数時間は元に戻るらしいが、

箱は決して手放さない。

箱について訊くと、またおかしくなる。

 ある日突然だ。

その日の一時間前まで、

三橋警部たちと普通に話ができていたらしい。

調べてみると、

その日非番の警官が一ノ瀬を訪ねていた。

 その警官に直接話を聞くと、

その日は友達の結婚式に出ており、

彼の目撃者も多数いた。

 ノーフェイスだ。

変装の達人。

私と先生以外にそれを見破った者はいない。

 変態がいた証拠のように、

一ノ瀬の足元に例の教団の資料があったそうだ。

もちろん、警察が調べていない資料だ。

内容は先生と一ノ瀬についてのもの。

先生の病については、私も知らず衝撃を受けた。


「私を逮捕してください!

私を死刑にしてください!

すぐに、お願いいたします!

何卒! 何卒!」


 もう一人はそうわめき散らし、

警察署へ飛び込んできた。

白粉の匂いのする彼女は、

ノーフェイスの元共犯者。

 彼女は、例の件の証拠を多数抱えてやってきた。

もちろん、逮捕して身柄を確保されたのだが、

今すぐ死刑にして欲しい、と叫び続けている。


「私が死ねば、

弟が助かるかも知れないんです!

何卒!

何卒、死刑にしてください!」


 調べると、

彼女の弟はひどい肺炎患者で危篤状態だった。

彼が服薬していた薬は、

どうやら『偽薬』らしい。

例の教団資料にあった資金稼ぎ用の薬だ。

どうやら、

彼女はこの薬のためにノーフェイスを裏切ったらしい。

 ただ、残念ながら弟はその数日後に亡くなってしまった。

その悲報を聞いた彼女は発狂した。

自分の頭の血管が複数切れるほど大声で泣き叫び、

即死した。

憤死、と言うものらしい。

誰に対しての憤りだったのかは、

もう誰にもわからない。

 私たちのところに、

ピカピカの車が一台近づいてきた。


「おはようございます。

シロちゃん、お迎えに来ましたよ。」


 蓮さんが、柳明さんの運転する車から手を振ってくれる。

なお、この車は警察が補填してくれた新車のオートモ号だ。

例の件で前の車は廃車になった。


「おはようございます!

蓮さん、柳明さん、

ありがとうございます!」


 私は二人に手を振り返した。

そして、私はマスターたちにの方へ向き直り、

深く頭を下げる。


「大変お世話になりました。

また、必ず戻ってきます。」

「あぁ、『いってらっしゃい』、だね。」

「いってらっしゃい、シロちゃん。」

「ずびっ……。

いっでらじゃい!

がえっでぎでね?!」


 三人に抱き締められた。

私も、三人を抱き締め返した。


「はい、いってきます!」


 私は笑って、そう返した。

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