第25話 あ、これは死んだかも②
「大馬鹿者がぁ!
お前のバカ力で、時限装置が動き出したぞ!」
「ノーフェイスのド変態!
お前の配慮が無さすぎるのが悪い!」
二人が言い合う最中も、
フラップ式の時限装置は刻一刻と時を刻む。
「急いで作業しても、爆発する方が早い!
どうする!?」
「……!
ノーフェイス、
お前、この部屋の出口のそばに排気口があるって言ってたな?
それなら、爆発をさせよう!」
「とうとう全身筋肉に侵されたのか!?
そんなことをすれば、全員木っ端微塵だ!」
「聞け!」
四葉はノーフェイスのそばにあったワセリンの入ったドラム缶を指差す。
「当初の計画通り、
水でこの部屋を浸水させる!
それで、この爆弾は排気口から一番遠いところへ移動させる。
水がこの部屋を埋め尽くすのに二、三分だと言ったな?
それなら、車のブレーキのように爆弾の爆発を利用して、
部屋の水を押して排水口の水を地上へ吹き出させる!」
この部屋はかなり広い。
たいして、
排気口はメンテナンス用のドアこそあるがかなり狭い。
部屋が水でいっぱいになったら、
排気口の煙突にも同じ高さまで水がたまる。
そして、排気口の逆側の爆弾が水中で爆破するれば、
水が衝撃で押される。
その衝撃はメンテナンスドアへ向かって大量の水を押し、
煙突の水かさが一気に上がり間欠泉のように外へ吹き出す。
油圧式ジャッキや、車のブレーキと同じ原理だ。
「だから!
鉄の蓋が煙突の口にされているんだ!
すごい勢いでその蓋に叩きつけられるのが関の山だぞ!?」
「二人でこのドラム缶を頭らか被る!
狭いところにお前と押し込まれるのは辛いが。
これなら砲弾のように鉄の蓋をぶち破って外へ飛び出すはずだ!
着地は知らん!
私なら問題ないが、
私とおいかけっこできるんだろ、お前。
自分の身体能力でなんとかしろ!
ノーフェイスはしゅん巡し、
生存の可能性が高そうだと結論付けた。
「四葉、ワセリンで爆弾をあっちの壁まで押せ!
俺はワセリンを身体に塗ったら水栓を全部開く!
お前も爆弾を移動させたらワセリンを塗れ!
二階堂の死体はロープで俺の身体にくくって、
三人でドラム缶を被って排気口へ!」
ノーフェイスのその言葉を皮切りに、
二人は行動を始める。
四葉は床のワセリンをノーフェイスから渡されたモップで広げ、
壁まで道を作って爆弾を移動させた。
ノーフェイスは身体中にワセリンを塗り、
消火栓だけでなく、水がでるもの全てから水を出す。
爆弾を運び終えた四葉はワセリンの山にダイブして、
全身ワセリンまみれになった。
「先生の身体を!」
「わかってる!
ロープがあったぞ!」
二人は水に浸かりつつある二階堂のしたいに駆け寄り、
ノーフェイスの身体に肢体をくくりつけた。
四葉はドラム缶をもって、
ノーフェイスは二階堂の死体をおぶって排気口へ入った。
排気口は地上へ向かってまっすぐ上へ延びており、
遠くに太陽の光が見える。
二人はドラム缶をひっくり返して中へ入った。
「時限装置を最後に見たときには、
残り三分と少しあった。
水は十分たまるはずだ。」
「まったく、お前がもっと配慮をした発言を心がけていれば、
こんなことにならなかったんだぞ?」
「大の男を吹っ飛ばして、
ドラム缶に叩きつける腕力のほうに問題があるだろうが。
自分が野獣だと自覚することこからやり直せ。」
売り言葉に買い言葉。
狭いドラム缶の中で二人は口喧嘩を始めた。
そうこうしているうちに、二人の足が地面から離れる。
「よし。
想定どおりの速度で水がたまってきた。」
「あと少しで爆破するのか。」
「四葉、口を開いて、目は閉じておけ。
できれば、声を出しておくと耳を爆発から守れる。」
「そんなこと、先生にとっくに教わっている。
お前こそ、傷だらけの顔の傷が開かないようにしろ。」
ノーフェイスと四葉は真剣な顔で口喧嘩をやめた。
「打ち合わせようか。
地上には偽の二階堂がいるだろう。
警官を連れているのは確定だ。」
「五十嵐の息のかかった兵か、
例の教団の兵もいるかもしれん。
三橋さんがいれば、
私が偽物を偽物だと言っただけで信じてくれそうだが。」
水は着実に部屋を沈めて、
爆弾を沈めて、排気口に流れてくる。
「ついでに、偽物に殴りかかれ。
四葉、お前、
本物の二階堂には殴りかかったりしないだろう?
そんなお前が殴りかかったなら、
警官たちは偽物を攻撃するか、
少なくともお前にはなにもしないだろう。」
「そうだな。
その案、いただいた。
お前はどうする?
そのまま出ると、ノーフェイスの衣装だぞ。」
狭く暗いドラム缶の中、
水とドラム缶で反響した二人の声だけが響く。
「アイツらが仕込んだこの本を使う。」
「お前もあの教団に入信するのか?」
「違うわ。
適当に誰か殴って服を脱がして、
このやつらの経典を服に仕込めば、
教団の関係者に仕立て上げられる。
本当だろうと嘘だろうと、
この場ではソイツは拘束される。」
「それ、五十嵐にやってやれ。
私は偽物を殴ったら、五十嵐も殴る。
その後、お前を殴る。」
すっかり浮き上がった二人の身体は、
排気口を上へ上へ登っていく。
「やってみろ。
そうだな。
俺も偽物を殴るの手伝おう。
それなら、偽物の立つ瀬がなくなる。」
「教団の一員みたいなことにされた、
とか言って怒って見せればいいだろう。
と、言うか怒ってるだろう、ノーフェイス?」
「そうとも!
あんな胡散臭いカルト集団の仲間だなんて、
真っ平ごめんだ!
良い理由だな。
その体で共闘するか。
お前は偽物に本物を殺された。
私はその罪を擦り付けられた上に、
教団の関係者として処刑されそうになった。
共闘するには良い理由だ。」
四葉は不穏な雰囲気を察する。
「そろそろだ。
ノーフェイス、構えろ。」
「よしきた。
四葉、お前も踏ん張れ。」
「さぁ、幕を開けよう。」
爆発と同時に、
三人は地上へ吹き飛ばされた。




