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第22話 経緯的に死んでて当然①

□少し時間を遡る


 大森の邸宅を訪れた四葉は、

電話を借りて交換所の女性に話しかける。


百里(バイリー)探偵事務所をお願いします。」


 少し待つと、女性の声が聞こえる。

妹の(レン)だ。


「あ。蓮さん。

二階堂探偵事務所の四葉です。」

「え。四葉ちゃん。

どうかしたの?」

「先生が誘拐されました!

お二人の力を貸してください!」


 四葉は簡潔に、ノーフェイスのことは隠して、

自分に起きたことを伝えた。

電話は兄の柳明に代わって、話を続ける。


「わかった。

そこの住所を聞いても言いかな?」


 四葉はずっと電話の脇に控えている執事に住所を聞いて、

柳明に伝えた。


「キノト、カノエ……。

蓮、地図を。

……ありがとう。」


 四葉は電話越しに何をしているのか察した。

風水による占いだ。


「……四葉さん、聞いて。

そこの建物から数キロ離れた所に崖があります。

 ただの崖なのに、

風水的にも立地的にも頑強に護られています。

ここに、建物か何かがあるかもしれません。」


 四葉が執事にたずねると、

その崖も大森の家の土地らしい。


「そこに建物はありますか?」

「ございません。

ただ、崖が危険なので、

人が近づけないように柵などを張っています。」


 執事は丁寧に地図まで持ってきて四葉に説明した。


「あの、なんで私に、そこまで?」


 四葉は執事のあまりにも親切な対応に疑念を抱いた。


「ご主人様から、申し使っております。

『二階堂探偵事務所の四葉様には、全力で協力をせよ』、と。」


 四葉は建物からする匂いで、

薄々ノーフェイスの正体に気付いている。

それが、執事の今の言葉で確信に変わった。

 ノーフェイスの正体は、大森零次だ。

アイツ、私がここに来たときのことすら予測していたのか。

だが、今はそれどころじゃない。


「ありがとう。

柳明さん、私はその崖に向かいます。

お二人にもできれば来て貰いたいのですが……。」

「行くよ。

絶対に行く。

蓮は既に車を用意してる。

大体三十分くらいでそこに着くよ。」


 四葉は柳明に丁寧に礼を言って受話器を置く。

そして、まるで自分の執事のように控えている彼に、

話しかけた。


「あの、大森さんは警備員を雇われていますか?」

「えぇ、私も含め、女中、給仕、料理人に至るまで。

全員が警備を兼任いたしております。

いざとなれば、銃、火器を用いての荒事も厭いません。」

「実は、私の先生で探偵の二階堂がさらわれました。

運ばれた形跡をたどったところ、

ここにたどり着いたんです。

 もしかすると、

貴方の主の大森さんにも被害が出ている可能性があります。

警備員の方たちは全部で何人いますか?

今すぐなら、どれくらいお借りできますか?」

「今、屋敷には十五名います。

今すぐ全員出せます。」


 執事は迷いなく言いきった。


「皆さん、一緒に崖に行って貰って、

周囲を包囲してください。

崖に近寄る人は無視して、

崖から離れようとした人は捕まえてください。」

「かしこまりました。

全員で取りかかります。

 また、たくさん人手が必要なようなので、

控えの者も呼び出しましょう。

全部で四十七名。

総出で参ります。」


 執事がそう言って、かしわ手を打つように手を叩いた。

すると、いつの間にいたのか、

四葉ですら気付かない一瞬のうちに女中が四葉の周囲を囲んでいた。


「ご主人様の危機です。

総力をもって参りましょう。

休みの者も呼び出しなさい。

 武器庫を空にしてでも、

ご主人様を助けます。

かかりなさい。」


 女中はお辞儀をして、音もなく四方に散っていった。

四葉が呆気に取られ、何とか言葉をひり出す。


「に、忍者さん?」

「いいえ。

大森家の使用人です。」


 執事が笑ってそう言った。

四葉はひきつった顔で笑いかえす。

 執事は四葉を崖まで案内して、

では、とだけ残して消えた。

比喩表現ではく、完全に姿が消える、

四葉ですら姿を認識できず、

とんでもない人たちを呼んでしまったと若干後悔する。


「と、とにかく、調べよう。」


 四葉は崖へ歩み寄る。

潮の香りと、波の音で聴覚と嗅覚はいまいち反応しない。

視覚的に見ても、むき出しの崖。

 周囲にもはなにもない。

少し離れたところに林があるが、

そこそこ距離がある。

建物が隠れてる様子もない。

 四葉は崖っぷちまで出てみる。

彼女の身体能力なら、

この高さから落ちても無傷で着地できる。

だが、念のため身体を地面に横たえ、うつ伏せになる。

そして、頭だけ崖から出して下を覗き込む。

 高さは結構ある。

波が激しく崖を打ち、

崖はえぐれて反り返っている。

たしかに、ここに人が来ると危険だ。


「変な音がする。」


 崖に打ち付ける波が、

時おり笛のような音を奏でている。

微かな違和感でも、見逃してはいけない。


「……降りてみようか。」


 常人では不可能だが、

四葉なら可能。

彼女は崖から身を乗りだし、

崖を崩さぬよう岩肌に手を掛けた。

その一本の手をコンパスの針のように固定し、

円を描くように全身を崖の下へ振り下ろす。

 四葉は片手で崖の絶壁に掴まったまま、

もう一度耳を澄ませた。


「……笛みたいな。

金属?

ふぉー、って。」


 音のする方を良く見ると、

崖の岩肌に穴が空いている。

その穴は四葉がギリギリ通れるくらいの穴だ。

 四葉は迷わず、

その穴まで岩肌をするすると張り付いて移動する。

そして、彼女は穴を覗き込んだ。


「……人工物だ。

何故か巧妙に隠されている。

……奥に金属製の筒みたいなのも見える。」


 四葉はその穴に飛び込んだ。

穴は石のように見せているが、

コンクリートで固められている。

数メートル先は金属製のパイプになっていて、

どこかへ続いていた。


「風が崖から中へ流れてる。

どこかに通じてるな。」


 四葉はパイプをほふく前進で進む。

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