第21話 全員殺してやる
□??? サイド
「本当に、怪盗ノーフェイスが例の宗教団体の本当の教祖なのか?」
三橋ははげ上がった頭を撫でながら言う。
「えぇ。
しかも、怪盗の正体を掴みました。
大森零次と言う資産家です。」
探偵、二階堂はそう断定した。
「隠れ家らしい場所も特定しています。
なので、可及的速やかに人を集めて乗り込みましょう。
情報が漏れるのも不味い。
急いでください。」
「私の部下も使おう。」
二人の間に入ってきた初老の男性。
恰幅が良く、身なりがいい。
「それは心強い。
五十嵐殿のご助力があれば、百人力ですな。」
二階堂を警察署に連れた来たのは、
五十嵐財閥の現当主、五十嵐大剛。
先日、怪盗ノーフェイスに命と宝石を狙われた人物だ。
彼こそが、例の宗教団体の教祖。
彼の出資であの団体は活動しており、
彼はそれを利用して非合法に稼いでいる。
「ところで、四葉女史は?」
三橋は二階堂のそばにいつもいる彼女を探して周囲を見渡す。
「今回は危険なので、
事務所に待機して貰いました。
ヤツの団体は、彼女の身体も狙っていますから。」
もちろん、今話をしているのは二階堂本人ではない。
ノーフェイスこと、大森を拉致監禁した方の二階堂だ。
自動車の事故後、四葉は姿を消している。
偽二階堂たちは彼女は一旦事務所に向かっていると認識している。
「早速乗り込みましょう。」
この偽二階堂は、ノーフェイスの抵抗を加味して行動する。
抵抗するノーフェイスを押さえ込み、
爆弾で本物の二階堂の死体と共に吹き飛ばす予定だ。
そのためには、急がなければならない。
あの崖の中腹に作られた彼の隠れ家を、
警察で囲んで目撃者を増やす必要がある。
更に、四葉の行動を制するものが今はない。
ただ、彼女が自発的に何か行動をするとは誰も考えていない。
後で回収すればいい、程度の認識だが、
あまりに長引いても不確定要素が増えて不味い。
「とにかく、時間がありません。
早く。」
偽二階堂はそう言って急かす。
彼女の計画は完璧だが、時間が問題なのだ。
警官が二十名、五十嵐の施設警備員が三十名。
後から警官はどんどん増える予定だが、
とにかくこの五十人と共に二階堂と三橋は隠れ家を包囲した。
後は出てきたノーフェイスと一悶着起こして、
彼と共に隠れ家ごと爆発させる。
ノーフェイスの隠れ家にあった彼の武器などは全て廃棄済み。
彼の服に仕込んであった色んな装置も破壊済み。
偽二階堂に、彼女に負ける要素はなかった。
予想外、が起きない限り。
予想外がないように幾らプランを組んでも、
予防策を立てていても。
起きてしまうから、予想外。
爆音、閃光。
突然、ノーフェイスの隠れ家が大爆発を起こした。
そして、その爆炎から煤まみれで飛び出した二人の影。
「あぶねぇ!
お前は脳天まで筋肉が詰まっているのか!?
四葉、お前は獣以下だ!」
「バカ! アホ!
ノーフェイス、ど変態!」
お互いの悪態を付きながら、
大きな何かを抱えて飛び出した二人。
呆気に取られる警官たちと二階堂。
それを見つけた四葉が吠えた。
「いたな!
偽物め!
先生をよくも殺したな!!」
その一言で、空気が変わる。
偽二階堂が声を発するより先に、
四葉は彼女に殴りかかった。
二階堂はそれをかろうじて回避した。
ノーフェイスは抱えていた二階堂の死体を地面に横たえて、
そこへ参戦する。
「手を貸せ、変態!」
「野獣無勢が!
今回だけだぞ!」
何故か息があった連携で、
偽二階堂を攻め立てる二人。
そのお陰で偽二階堂は声を発することも許されない。
「ポンコツ警官ども!
そこの本物の二階堂の死体を確保しろ!」
「五十嵐!
お前が、私をこんな身体にした教団の教祖だろう!
お前も後でノーフェイスと一緒に挽き肉にしてやる!」
ペースを完全につかんだ二人は、
言いたい放題いいながら暴れまわる!
「そうだ!
五十嵐め!
俺が教団の一員だ!?
くだらん!
俺は孤高、至高にして、完璧な存在だ!
群れるなんてことはしない!」
あわてふためく五十嵐をよそに、
ノーフェイスが五十嵐の警備員の一人の殴って服をひんむいた。
その胸元には、例の教団のシンボルが入れ墨されていた。
これは偶然だ。
ノーフェイスは適当に教団の経典を服に仕込んででっち上げるつもりだったが、
それより明確な証拠が出て内心大笑いする。
「警官ども!
この入れ墨を見ろ!
五十嵐こそが、あの教団の教祖だ!
お前たちはこの二人に騙されている!」
それが真実であろうがなかろうが、
四葉とノーフェイスは情報をながし続ける。
他の情報を流させない。
二人はただひたすらに嫌がらせをする。
敵を打ちのめすことさえできれば、
後は野となれ山となれ。
それが彼らの作戦だ。
「よくも!」
「よくも!」
「よくもこんな目に遭わせてくれたな!」
四葉とノーフェイスが声を合わせてそう叫ぶ。
心底怒りが籠ったそれに、周囲は圧倒された。
「ふ、二人を取り押さえろ!」
五十嵐は警備員にそう命令した。
「四葉女史を護れ!」
三橋は部下たちにそう命令して、
五十嵐に向かって駆け出す。
警官とぶつかる五十嵐の警備員は、懐から銃を取り出した。
警官も負けじと銃を取り出して、
あっという間に銃撃戦が始まる。
「はっはっはっ!
てんやわんやで、全部ご破算!
もう一度そろばんの玉を弾き直せ、三流探偵!」
ノーフェイスが殴りながら偽二階堂をあおる。
「服装は真似できても、匂いは違う!
先生のことについて、私を騙すことはできないぞ!」
四葉はそう叫んで全身を弾丸のように跳ねさせる。
「な、何なんだお前ら!?」
偽二階堂がひり出した言葉を聞いた二人は声を上げて笑った。
「俺は怪盗だ!」
「私は探偵だ!」




