姉と弟の絆②
ざわっ──と、貴族たちのざわめきが起きる。
「……証人?一体、誰が?」
そのとき、再び扉が開いた。
エリアスよりも軽やかでありながらもしっかりとした足取りで、剣そ携えた女性の騎士が現れた。
銀髪に淡い瞳。どこかエリアスの面影がある、しかしエリアスよりも鋭い面差しをした騎士。
その騎士は、アンドレの近衛騎士団の黒の軍服と違って目立つ白を基調とする優雅で繊細な見立てが良い、王宮騎士団の制服を身に纏っていた。
「エ、エイラ……?」
誰かが囁いた。
だがそれは──エリアスの姉、エイラだった。
この日、エリアスの姉、エイラは直属に王族を守る王宮騎士団に入っていたのだ。
アンドレの目が一瞬驚きに見開かれたあと、静かに、理解の色を浮かべた。
(……来てくれたのか。エイラ)
アンドレはエリアスを初めて見たとき、見覚えがある姿に驚いた。
王宮騎士団と近衛騎士団の仲はとても良くないが、エイラは貴族出身が多い王宮騎士団に貴族としてではなく、一般志願者として入り目立っていた。
そして、女性としてやっていきにくい王宮騎士団の中で活躍するエイラの姿にアンドレは自分と重ねる部分があった。
エイラはゆっくりと口を開いた。
「ご挨拶いたします。私は、王宮騎士団所属のエラです。そして、お気づきの方もいると思いますが、オーケン伯爵家長女のエイラ・オーケンです。
そして私は王宮騎士として、この鍵に見覚えがあります。ある人物が鍵を持ち出し届けるのを見たのです。その人物は、宰相の側近──ガリレオ・ネーメス様です。」
ガリレオ──宰相の右腕と称される人物の名が出た瞬間、場が凍りつく。
その名が告げられるや否や、宰相の表情が一瞬、歪んだ。
しかしエリアスは、そこにとどまらなかった。
「エイラの証言以外にも清掃を行なっていた侍女の証言も既にとっています。彼女は現在、公爵家の保護下にあります。法に従い、偽証を行わぬよう誓約書も取っております。」
エリアスが勢いづいたように続けて言った。
「これで、アンドレ様が冤罪である可能性は一層高くなりました。もしこれを無視し裁判を強行すれば──後世に汚名を残すのは、この裁判そのものです。」




