アデラとアンドレ②
アデラが執務室を出た後、父親であるアントン・フォルモーネは考えていた。
「アデラには悪いことをしたな……。」
アデラ・フォルモーネが暮らすスヴェーリエ王国は、豊かな自然に加え、鋼がよくとれる国だ。
そのため、国民は幼い頃から森の中でのびのび遊ことができ、身体能力に自信があるものが多く、騎士は憧れの職業だった。また、鋼がとれるため剣の生産も行っており、他国から軍事力の面で恐れられる国だった。
他国とは違い、女性でも騎士になることができるため他国から騎士を目指しこの国に訪れるものもいるほどだ。
アデラも例外でなく、父が近衛騎士団と王宮騎士団どちらの団長を兼任していることもあり、幼い頃から剣を学んでいた。そして、アデラの幼い頃からの夢は変わらず父のような立派な騎士になることだった。
そんなアデラが男装するには理由があった。
女性は騎士になれても、団長にはなれない。加えて、爵位も継げない。フォルモーネ公爵家はアデラしか子供がいなかった。
アントンがアデラに剣術を教えたのは護身術として自分の身は自分自身で守れるようになってほしいという願いがあったからだ。
しかし、アデラには才能があった。そう、父であり、王室・王宮騎士団長である自分よりもだ。今はまだ勝負で負けることはないが、いつ追い抜かされるかわからない。
アデラに男装をするように言ったのはアントンだった。いつかは自分の代わりに団長になり、爵位を継いで欲しいと考えていた。
しかし、アデラは成長するにつれて女性としての体型、声を隠せなくなっていた。魔法石を使い、体型と声だけはなんとか変えることはできているが、バレることは時間の問題だと考えていた。
だからこそ、早く婿を見つけ夫を支え、影で操れるようになれば良いと考えた。