第一章④~イレギュラートトックン~
第十話です。
再び天使や悪魔について勝手な自己解釈が含まれて居ますので、
そこんところはよろしくお願いします。
次の日となり幾分か昨日の微妙な空気は和らいで来たのだが、
少し何処かギクシャクした雰囲気が広がっている。
すると、唐突にミナツは俺に
「じゃあカイ君は今から特訓でもしに行こうか?勿論拒否権は無いよ」
と言いながら俺を部屋の外へ連れ出した。
一体どうしたのだろうか?
そしてミナツが連れてきたのは何の変哲の無い只の城だった………城?
それは一見見ると外壁には蔦が張り巡らされていて、
人が住んでいた到底思えないものだった。
しかし、蔦の下からは真っ白な外壁が見えており、最近まで人が住んでいたことが伺える。
「おい、ミナツ。何で俺をここに連れてきた。そもそも〝特訓〟って何だ? 」
「う~ん、連れてきた理由は簡単に言うとカノンについての事なんだけど、分からないよね? 」
「……それが分かったらお前にこんな場所に連れてこられないと思うけど」
「あはは~…そうだよね。じゃあ話すけどこれは絶対カノンには話さないでね」
何故念を押した?
そこまで重要な話なのだろうか?
でも、そういえば今までカノンについての話は聞いた事無いな……
向こうも自分の事はあまり語らないからな~
「それはカノンの生まれ方について関係があるんだ」
「生まれ方? 」
俺は首を傾げる。
確かカノンは………どうやって生まれたのだろうか?
「そう、私達悪魔というのは基本的に人の負の感情を元にして生まれるのよ。
逆に言えば天使たちは正の感情を元にして生まれるということになるけどね。
でも、カノンは違う。
カノン達所謂〝イレギュラー〟と呼ばれる存在は特定の感情からは生まれず、
あらゆる感情が混ざり合って生まれるのなの 」
「だからそれがこれに何の影響があるんだ? 」
「つまり、普通は天使か悪魔なんて分からない筈のレギュラーであるカノンが普通「私は悪魔です」なんてこと言う筈がないでしょ。
ましてや生まれて直ぐに言うことは絶対に有り得ない。そこから私なりに考えてみたら驚くべきことが分かったわ」
「それは一体何だ? 」
未だに俺個人としてはあまりミナツの話は信じられない。
何処の書物にも『悪魔や天使の生まれ方』なんてものは無いが、
ミナツの話を要約すると、
〝悪魔や天使は人間から生まれた〟ということになるのではないか?
「そんなに急かさないでも教えてあげるから……だから、彼女は〝イレギュラー〟でありながら私達と同じ〝負の感情〟が元となっているの、
そのため彼女は私達以上に天使たちを憎んでいるの」
「そうか、そういうことか……それではお前はそれを知っててカノンを天使たちのとこに置いて来たのか!! 」
「ええ、そうよ。カノンもそれを望んでいたしね」
「カノンが望んでいた?それって一体…… 」
俺が最後に聞こうとした瞬間足元に魔方陣が発動し、俺はその中へ吸い込まれていった。
* *
どうやらカイ様達は行ってくれたようですね。
あとでミナツ様にはお礼を言っておかないと……
それよりもまずは……
「では貴方達への今後の扱いを今のうちに決めておきましょうか… 」
ハッキリ言って私は〝天使〟という存在が憎く、今でも殺したい存在です。
しかし、今それを止めているのはカイ様の「殺すな」という言葉だけです。
やはり、殺意だけは隠しきれてないようで、〝ウリエル〟はもう失神寸前の様ですね
「こんな奴等の奴隷になるなら死んだ方がマシだ!!悪魔よ早く私を殺せ!! 」
〝ミカエル〟だけはまだ反抗的ですね。
やはり天使としてのプライドが高すぎるようですね。
「それは出来ません、カイ様からは貴方達を殺すなと言われているので、それに貴方達は死ねないでしょう? 」
「クソッ!! 」
悪態をつくミカエル。
他の天使は先程から黙っているので扱いはどうでもいいということでしょうか?
「とりあえず貴方達にはこの首輪を嵌めて貰います」
そう言って私が取り出したのは、真ん中に大きな赤い石が埋め込まれた〝隷属の首輪〟と呼ばれるもので、
私はそれを彼女達に渡した。
「それを嵌めると主となるカイ様への永遠の隷属を誓い、半奴隷となります。
しかし、それを嵌めるかは貴方達次第です」
私がそう言うと真っ先に嵌めたのが、カイ様が倒した天使〝ガブリエル〟だった。
その次に〝ウリエル〟も嵌めた。
残るは〝ミカエル〟だけなのだが……
「どうしても嵌めませんか? 」
「無論そのつもりだっ!!! 」
「なかなか強情ですね………私はあまり魔法の類は上手く出来ないんですけどね…睡眠」
どうやら上手く効いたらしく眠ってくれました。
強制的にはあまりやりたくはなかったんですが、と思いながら私は〝ミカエル〟に首輪を嵌めた。
「さて一人を除いて貴方達に言っておきます。貴方達の主な仕事はカイ様の護衛です。
そのため貴方達は常時カイ様と一緒に居て下さい」
「へ?それだけ? 」
〝ウリエル〟が素っ頓狂な声を上げた。
むう、私はそんな鬼畜なイメージが定着しているんですかね?
「それだけです。それさえ守っていれば私は貴方達に危害を加えませんし、最低限の衣食住はお約束します」
話は終わったのでカイ様達がそろそろ帰ってくるかなと思っていると、
帰ってきたのはミナツ様だけだった……。
「あれ?カイ様は一緒じゃないんですか? 」
「あら?さっき言ったじゃない。今日から特訓を始めるって」
「ああ、確かそうでしたね……、それと先程は有難うございました」
「そんなこと気にしなくていいわよ」
気にしなくて良いと言われた事は嬉しいですが、
カイ様大丈夫でしょうか?
確かカイ様は今頃〝龍〟達といるんでしたっけ?
無事に帰ってくることを祈っています、カイ様………
感想等ありましたら宜しくお願いします。
次回からしばらくはカノン達は出てこなくなります。
次回の更新は不明です。