2.死者の国トワイライト
「ここはどこだ……」
目が覚めると闇の中に居た。恐らく狭い箱のような物の中に居るのだろう。
「ふっ!!!」
バキッ!
力を込めて拳を振るうとアッサリと箱は壊れ、薄っすらと光が差し込む。
「くっ!はぁぁぁぁ!!!」
体を曲げ足で箱のフタを開けるように力を入れる。
ミシッ!メキメキメキ!!!
釘か何かで封をされていたであろう箱が開く。ここは森の中なのだろう木々の隙間から差し込む光がまぶしい。
「ここは墓場か?」
先ほどまで自分が入っていた箱は木製の棺桶だった。周囲には墓石や棺桶が無造作に置かれていた。
「なんでこいつが棺桶の中に…」
棺桶の中には傭兵時代に使っていた武器が入っていた。
「珍しいもののはずだが盗られずに一緒に埋葬されたのか。」
当時の傭兵仲間が共に葬ってくれたのだろうか、武器は多少の汚れはあれど壊れている様子はない。
その武器は、一見すると大盾に柄がついたような奇妙な見た目をしている、重さもかなりのものだろうが男は軽々と両手で持ち上げ、慣れた様子で背負う。
「さて、一体ここはどこなんだ?」
長い間人の手が入っていないのだろう、周囲は雑草が生い茂りかろうじて道のようなものがわかるだけだ。男はかつて道であったであろうものを頼りに歩みを進める。
少し歩くと土を掘り返すような音が聞こえた。音のするほうに進むと、2mを超えるであろう老人がスコップで地面を掘っていた。
警戒しながらその老人に声を掛ける、こちらに気づいた老人は手を止めこちらに近づいてきた。
「おや?見ない顔ですな、ここらへんの人では無いですね。」
老人は俺の事を値踏みするように見ながら言葉を続けた。
「ふむ、貴方もしかしてセイジンさまですかな?」
「聖人だと?俺の姿を見てそう思うのか?」
今の俺はせいぜい逃げ延びた兵士や傭兵といったところだろう。
「おっと、失礼しました。ここでのセイジンとは覚醒した人のことを醒人と呼んでいるのです。」
「覚醒した人ってことはやはり俺は一度死んで蘇ったってことなのか?」
ひとり言のようにつぶやいた言葉に老人が応える。
「おや、すでに気づいていられたのですか?それは、話が早くて助かります。目醒めたばかりで聞きたいことがたくさんあるでしょう、私の方から説明いたしましょう。」
そう言うと老人はそこら辺の棺桶に腰をおろすと話し始めた。
「まず、貴方が蘇った理由ですが詳しい原因まではわかりませんが強い力を持つものがごく稀に蘇りこの国に辿り着くのです。」
「その口ぶりだと俺以外にも醒人と呼ばれる人間は一定数いるんだな?」
俺の質問に老人は答える。
「ええ、正確な数まではわかりませんがこの国に確かにおります。」
「さっきからこの国と言っているが死人が蘇るなんて話し聞いたことが無いここは一体どこなんだ?」
「ここはかつて武王と呼ばれた方が1代で興した国です。ですがとある日まるで、この国だけが切り取られたかのように地図から消え去ったと。なのでこの国が今どこにあるのかはわからず伝承だけが残っているそうです。これはほかの醒人の方から聞いたのですが、今この国は死者の国トワイライトと呼ばれているそうです。」