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百夜庚申待  作者: 恒河沙
16/20

天上地束縛

「これでよしと。」

 私の体は弓の弦で気を失った彼女の手首をきつく縛った。


「あれだけ殺しそうなこと言っていたのに、殺さないんだね。」

「そらそうさ。私は人を殺すために刀を振るったりしない。それが私の流儀さ。」

「ふーん。」

「だが、刀で人を殺さないだけだ。


 ……こんな血の気の多い世界で、手首を縛られた人間がポツリと倒れていたら、どうなるかくらいは分かっちゃいるだろ。」

「なんか、ずるいね。」

「……。

 

 そんなことよりもここを早く離れよう。少し乱暴に動き過ぎたから、ここに人が集まってくるかもしれない。」

「そうね。」

「……そうだ。殺されたんだから、一発くらいはいいか。」

 そう言って、私の足は、手首を縛られた弓の分身の腹を蹴り上げた。弓の分身の体は少し空中に浮き、屋上の柵に打ち付けられた。


「畜生だな……。」

 そして、そのまま、私は屋上に備え付けてある階段を下っていった。




 痛い、痛い、痛い!


 目を覚ますと、背中全体がじんじんと痛んでいた。そして、お腹には背中を上回る激痛を感じる。私はお腹に何か怪我がないか確認するために、手で服をめくろうとするが、手が後ろから動かせない。どうやら、両手が縛られているようだ。手首の辺りに糸のようなものがきつく縛られている感触だ。私は周りを見渡すと、高い所にいるようで、鉄柵とその間から高所の景色が見える。


 私はここまで状況を把握したところで、記憶が段々とよみがえってきた。私は確か、刀を持った私の分身に追いつめられて、首に刀を押し当てられた。そこまでは覚えているが、それ以降の記憶がない。痛みを感じているということは、死んではいないんだろう。


 だから、私は刀を首に当てられ、気を失って、刀を持った分身に手首を拘束されて、放置されているってことなのだろう。私は再び手首の拘束を解こうとするが、とてもきつく縛られているので、どうしようもなかった。


 私はこのまま誰かに見つかれば、殺されてしまう。刀の奴は、なぜか見逃してくれたようだが、他の奴は銅か分からない。私はしばらく考えた結果、とりあえず目を閉じて、生存者の数を管区認することにした。


 数秒目を閉じると、まぶたの裏に赤い数字が浮かび上がってくる。浮かび上がってきた数字は、「61」だった。短い時間で、すぐに少なくなるものだ。私も数字を減らす側にはなりたくない。そんなことを思っていると、急に、手首に感じていた糸の感触がなくなる感触がした。


 私はその感触を確かめるために、両手首を離すと、手首は縛られておらず、自由に動かすことができた。私はそのことを不思議に思いながらも、目を開けて、手を動かし、立ち上がった。


 私が立ち上がると、後ろで、何か落ちる音が聞こえた。私が後ろを振り返って、落ちた何かを見てみると、私の使っている弓と矢だった。それも完全に治った状態の弓と矢だ。


 私の記憶では、私の弓は切られて、使い物にならなかったはずなのに、そこには新品同然の弓が転がっていた。


 私は何が起こったのか分からなかったが、とりあえず、手首の拘束が撮れたことと弓矢が使えることを喜んだ。これなら、私は生き残ることができる。そう思って、私は弓を取る。


 ザシュ


 私は体の内側から聞こえる骨を断つような音を最後に聞いた。視覚の端では、私の首から溢れ出る血と白銀のナイフが見えていた。


「はあ、一足遅かったか。刀の奴はいないか。」


 60

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