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百夜庚申待  作者: 恒河沙
15/20

霰掻潜疾駆

 私のの体は、体をほぐすように、準備運動を始めた。屈伸をしたり、伸びをしたり、軽く飛び跳ねたりした。ある程度体が温まると、私の口は息を深く吸い込んだ。そして、足は強く地面を蹴り上げた。まるで、私は車にでも乗ったかのようで、私の体はビュンビュンと加速していき、視界が素早く横へと消えていった。


 私の体は、コンビニの入り口前で、素早く切り返して、コンビニを出ると、目の前にある一軒家の方へ突進していった。私の体は止まる気配もなく、私はその一軒家の塀にぶつかると思った。その一軒家の塀の壁に近づくと、私の体はジャンプをして、その塀の上に足を乗せた。


 そして、塀に乗せた足をさらに蹴り上げて、一軒家の屋根の上に飛び乗った。塀は軽く2mはあったし、一軒家は二階建てなので、5,6mはあっただろう。それを軽々と私の体は登り切ってしまった。どうやら、身体能力は、彼女に依存しているらしい。並みの身体能力しか持たない私には到底できやしない芸当だからだ。


 屋根の上に乗った私は、速度を緩めないまま走る。そして、屋根を走って、次の家の屋根に飛び移る。私はそのようにして、次々に屋根を進んでいく。目的地は、弓矢が放たれているであろうマンションの上。


 ぴょんぴょんと屋根を飛び移っていると、屋根と屋根の間を飛んでいる時に、矢が放たれる音がした。その音を聞いた私の体は、刀を持つ手が動き、近づいて来る矢を弾く。飛んでくる矢を目の前で阻止する映像を自分視点で見ると、これほどおっかないものはない。


 一寸先に死を感じる恐怖感はとんでもないものだ。そして、それに臆することなく刀を振って、止めることのできる彼女は大したものである。自分には一生できそうもない。


 彼女は飛んでくる矢を弾き、屋根を飛び跳ね、あっという間に一キロ近くあるマンションのすぐそこまで近づいていた。


 体は多少息切れをしているが、軽くジョギングした感じで、まだ体に余力はある。むしろ、これからが本調子と言ったところだ。


 そして、マンションに近づいて来ると、マンションの屋上に弓を構えた人影がくっきりと見える。マンションの屋上はかなり高く、たとえ彼女の跳躍力でも、飛んで何とかなるものではなかった。私は彼女がどうするのだろうかと思っていた。


 すると、私の体はそのマンションに向かって、飛び始めた。だが、とても屋上へは届きそうもない。そのまま、マンションの窓に近づいていった。窓ガラスにぶつかる寸前に、私の体は足を出した。そして、空中で近づく窓ガラスを蹴り破った。


 そして、大きなガラスの割れる音を聞きながら、窓ガラスの冊子に蹴り破った足をかけて、真上に蹴り上げた。そして、次の階の窓ガラスも同様に窓ガラスを蹴り破って、次々に上へ登っていく。漫画の様で、フィクショナルな移動方法に驚きながらも、そんなことをしている自分にワクワクしていた。


 そして、ずんずんとマンションを登っていくと、弓を持った分身の姿もくっきりと見えていく。意外と弓の分身の顔は焦っていた。そして、弓の分身は弓を構えて、登ってくる私に標準を合わしていた。

私の体は最後の階の窓ガラスを蹴り上げて、屋上へと進んだ。


 そして、弓の分身が弓の弦から指を離して、私を射る寸前で、私の右手に持った刀が弓を切り裂いた。弓は硬く、切り始めは手からビリビリと痺れたが、切れ込みが入ると、するりと切れていった。弓と弦を切り裂くと、矢の緊張が途切れ、矢は明後日の方向へ力なく飛んでいった。


 弓矢の分身は弓矢が壊されたことに驚き、後ろへと腰を抜かした。私の体は、屋上の手擦りを飛び越えて、腰を抜かした弓の分身の前に立った。そして、彼女の首に刀を押し当てた。


「殺されれる覚悟がないとは言わねえよな。


 ……リベンジは受け付ける。亡霊になってからでもな。」

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