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神秘の島  ――新型艦「ヴィシュヌ」就役――



 一部英語版ウィキペディア等からの引用を含みます。




 リンカーン島は日本でいえば佐渡ヶ島ほどのサイズの島である。



 島の気候は高温多湿の熱帯性気候だ。

西南からモンスーンが吹く5月~11月が雨季。

北東からモンスーンが吹く12月~4月が乾季と大きく2つに分かれる。

 年間降雨量は2000ml以下。年間を通じて晴天の日が多く、

平均気温は29℃~32℃と1年を通して気候の変化も少ない。

 西経約73度、赤道直下にあるこの島はサイクロンの被害はない。

(それには地球の自転などが関係してる。)


 位置的にはわかりやすく言うと、

インド洋のほぼ中央に、南北に連なっているモルディブ諸島が、

赤道と交わるあたりに位置している。

 

 モルディブの島々の(いしずえ)であった火山は、

長い時間をかけ徐々にインド洋に沈み始めた。

 太古のモルディブの地形は火山と高地からなる島だった。

しかし、山が徐々にインド洋へ沈み、頂上の噴火口だけが残った。

 何百万年を経て、残った山の頂上が美しい珊瑚礁の島となった。


 この世界ではリンカーン島はモルディブ諸島の中で最大の環礁の中央に転移したことになる。

 

 リンカーン島にはマグマの活動によってできた、

全長2キロメートルに及ぶ海底洞窟(トンネル)があり、

内陸にある直径4キロほどのカルデラ湖と繋がっている。このため湖は汽水域となっている。

 湖は上層ほど塩分濃度が低くなっていて、

湖の水深はは深いところで約200メートルある。

 海底洞窟(トンネル)の直径は狭いところでも40メートルもあり、

ノーチラス号後期型(直径10メートル・全長90メートル)が通過可能である。

 海側開口部はすべて海中にあり、湖側開口部は水面近くにある。

湖と海を隔てる断崖絶壁の内部をくり抜いて拡張された部分に、港湾施設や修理ドックなどが外部からは見つからないように巧妙にカモフラージュされ隠されている。

 


 リンカーン島の主峰である火山は数千年前に噴火したあとは活動を休止し、

今は熱帯の原生林に覆われている。








1735年5月 リンカーン島 エイブラハム海軍造船所 ハイダル・アリー・ハーン


 


 赤道直下の照りつける陽射しの下、

環礁に囲まれたリンカーン島の美しい海岸線、 

深く入り組んだ入江の一つに俺は立っていた。


 今日は実に目出度い日だ。 

これより海軍造船所にて、待ちに待った一番艦(ネームシップ)〃ヴィシュヌ〃の

引き渡し式と海軍旗授与式を執り行うのだ。 

 ラクシュミには悪いが、 

先日のあいつとの婚礼の儀の時よりも、純粋に胸が高鳴る思いだ。

前世で何度も婚礼の儀式は経験済みだしな。

 

 ヴィシュヌは俺の目には流麗で垢ぬけた艦に見えるのだが、

俺の知っている未来より2世紀先の未来を知る、

ダヴィードの目には違った風に見えるらしい、

だがそこが魅力的なんだという。


ヴィシュヌ級は、ノーチラス級と違って、

軍艦、特に潜水艦には全く無用でしかない派手な装飾などは一切存在しない。

あれはネモ艦長の個人的な趣味だろう。

 ネモは反対したが、ダヴィードが説き伏せてくれたおかげで、艦内は随分スッキリした。 

図書室や展示室、サロンなどを廃止し居住性や航続距離が大きく改善された他、

新鋼材を採用し船体の強靭化をさらに進めるなど幾つかの改良が加えられた。


 現在設計段階にあるクリシュナ級では、新たに開発された装備により浅深度に浮上しての空気供給の必要がなくなり、長期間の潜航活動が可能になるなどさらに大きく性能が向上する。


 まだ計画段階のシヴァ級では遠距離の対艦攻撃が可能になる新装備が搭載予定だ。


 


 ―――迎えが来たようだ。


「議長そろそろ始まりますので。」 


「ん、もうそんな時間か。」 


  楽しい時間は短いなぁ。

 式典が終わったら、またコロンボまでとんぼ返りか・・


 俺はため息をついた。

 

 コロンボに戻った後は、旧総督府で4か国会談が控えている。

かねてより我々の同盟にマラーター・ニザーム・トラヴァンコールが加入を希望していたのだが、 

加入条件を満たしていなかったのだ。 

 頭が痛くなる厄介な問題が山積みなのだが、

その一つにこの時代、戦時国際法と呼べるものなどは存在しないことがある。

 非人道的行為も戦争犯罪もやりたい放題であることをダヴィードが問題視しているのだ。

 

 まだまだ未完成ではあるがこの世界で最初の国際人道法であるコロンボ条約を批准することが、

我々の軍事同盟である反植民地主義条約機構に加盟するための条件の一つなのだ。


 だが英国・オランダ・フランス・ポルトガル・スペインに加えて、

ムガル帝国・マイソール王国・カルナータカ太守が敵対姿勢を強めている。


4か国が集まったのこの機会にインド亜大陸での協力体制を一層強化する必要がある。

 実りある時間にしなければな。




       《コロンボ会談参加国代表》



【トラヴァンコール王国】 

              ○創始者初代国王 

               ■マールターンダ・ヴァルマ

           


【ニザーム王国】 

          ○創始者初代国王 

           ■カマルッディーン・ハーン 



【マラーター王国】 

           ○創始者初代国王 

            ■チャトラパティ・シヴァージー



【バーラト解放機構】 

             ○ 最高評議会議長・解放軍最高司令官を兼務(暫定)

              ■ ハイダル・アリー・ハーン  

             




〃    ・・・・・・・・・・・・


 ――エイブラハム造船所をはじめリンカーン島の多くの施設は、

転移前にすでに建設されていたものだ。

 この小さな島には転移前の19世紀後期の世界の、

ありとあらゆる設備や工作機械が持ち込まれ、さらに改良が重ねられてきた。

 

多数の小規模水力発電所が建設され、島の電化も進みつつある。

それに加えてネモ艦長の様々な発明が実用化されている。

 この式典会場の隅々までわたしの声を届けてくれているこの音響メガホンもその一つだ。 

それらは転移前世界の各地から選び抜かれ引き抜かれた、

諸君ら高度な技術・知識をもった技術者・労働者によって開発・改良・運用・保守されてきた・・ 〃


  

       ・・・・・・・・・・・・



〃  ――神が我らに与えてくださったこの島は、多くの貴重な資源に恵まれてはいるが、

全てを島内で自給できない以上、サフル(オーストラリア)大陸と周辺地域の資源開発と輸入を早急に進める必要があった。

 ノーチラス号の量産化に必要な部品・資材・資源は転移前から用意周到に島に備蓄されていたものの数年で在庫は尽きてしまったからだ。〃



       ・・・・・・・・・・・・



〃――最後に改めて全ての同志諸君――労働者・技術者・兵士たちに感謝の意を表したい――


 

 2番艦の建造準備作業に取り掛かる前に、

特別長期休暇を存分に楽しんで今までの疲れを癒してくれ給え。


 機密保持や技術流出を防ぐため、

任務以外での島外での行動は厳しく制限されてきたが。

 全島がオランダより解放されて5年経ち、

ようやく獅子国への観光旅行も許可されることとなった。

旅券の申請は厳しく審査されるし、監視と護衛付きではあるがね、 ハッハッハ! 


 諸君らが自由に安全にこの世界で観光旅行が楽しめる日が早く訪れることを

願ってやまない。 〃




 


 いかにチートなノーチラス号といえども進水から20年間、

しかも衝角を武器に体当たりで多くの敵艦を沈めてきたとなると、

限界が来てない方がおかしいと思います。

 水上艦じゃないんですから、自殺行為ですよね。


 日本の自衛艦では耐用年数は護衛艦で20年くらい、

潜水艦なら15年といったとこじゃないでしょうか。

適切に運用され、しっかりメンテナンスがされた上で。


 なのでノーチラス号の量産化はギリギリ間に合った感じです。

第一線を退いた後、ノーチラス号は練習艦として運用され、

退役後は記念艦として保存されています。


 ノーチラス号の代替艦なしでは制海権を奪い返されるのも時間の問題だったわけです。




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