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 話を聞いていると勇者になって欲しいなどと訳の分からないことを言い出した。


「儂はいわゆるお主の世界で言うところの『神』での、地球以外にもあらゆる世界の星を管理しておるんじゃ。で、実はその星のうちの一つ――『シェネプ』というんじゃが、その星が今かなりまずい状況になっておっての。お主にはそこに真勇者として転生して貰いたい」


 ……情報量が多すぎてよく分からん。


「えーと、まずい状況っていうのはさっき言ってた勇者が関係してたりとか?」


 神様うんぬんを始めとしていろいろツッコみたいところはあったが、ひとまず話を進めることにする。


「そうじゃ。詳しく話せば長くなるんじゃが、まぁ簡潔にまとめると元々そのシェネプが壊滅の危機にあっての。その星はいわゆる剣と魔法とがテーマの世界なのじゃが、魔王という存在が力を増しすぎて人間陣営がかなり押されておったのじゃ。そこで地球からとある勇者を派遣して魔王を無力化したのはいいのじゃが、今度はその勇者が無駄に調子づきおっての。世界の中で好き勝手暴れまわるようになりおった。その勇者をお主にとっちめてもらいたいのじゃ」


「はぁ」


 なんとも言えない話だった。


「要するに僕は神様の失敗のしりぬぐいをすればいいってことですか?」


「忌憚なく言ってくれるのう。まぁそれでこそ儂が選んだだけあるというものじゃ。まぁざっくり言ってしまえばそういうことじゃ、頼めるか?」


 うーん、そう言われてもなぁ。俺にそんなことできるとはとても思えないし、色々疑問がありすぎて即答しづらい。


「僕はもう地球には帰れないんですか?」


「いや、勿論帰ることは可能じゃ。儂は寛容じゃからな、もしその勇者を殺すことができれば、何でも一つだけ願いを叶えてやる。その時に地球に帰還することを願うと良い」


「えー、勝手に呼び出しといて目的を達成しないと返さないというのは大人としてどうなんですか」


 思わず思ったことを口に出してしまう。

 今の状況が現実からあまりに乖離しているのも影響しているのかもしれない。何を取り繕ったところで意味があるとも思えなかった。


「儂は神なのじゃ。すごく偉いので何をどうしてもいいのじゃ」


「子供の言い草じゃないですか」


「まぁ悪いとは思っておるぞ。でもこれはお主にとってもそう悪い話ではないはずじゃ。なにせ最強の勇者の力を持って異世界ライフを送ることができるのじゃからな。何をしようといいのじゃぞ、こんなこと地球のお主では考えられまい」


「……その考えが勇者さんの暴走を引き起こしたんじゃないですかね」


 何をしてもいいとか、そんなことを言ってるから勇者が暴走したのではないかと勘ぐらざるを得ない。


「それは問題ない。今回は前回の反省を生かし性格面を含めて人材を厳選しておるからな。超神的データ算出術によるとお主が異世界で破壊衝動を起こす可能性は限りなく低いと出ておる。戦闘面も含めて完璧な人選というわけじゃ」


「はぁ……」


 そんな勝手に分析なんかされてもな。なんか胡散臭いし。一つわかったのはこの神様には何を言ってもこれ以上通じなさそうということだ。神様の中ではもう俺の異世界転生は決定済みのようだし、俺がその気になって使命を全うすることも信じてやまないといった感じだ。ここはもう俺が大人の対応をするしかないのだろうか。はぁ、本当に遺憾だけどもう折れるしかないのかな。もしくはこういう性格を含めて俺という人間を選んだということなのだろうか。


「でもなんで僕なんですか? こんな性格のやつ、それこそごまんといるような気がしますけど」


「それはお主の適正にある。性格はあくまでもおまけじゃ、お主は地球上の誰よりも勇者としての適性がある。それもぶっちぎりでな。さっきも言ったが戦闘においては世界の誰にも負けないほどのポテンシャルを秘めておる。それで選んだ。正直お主を見つけた瞬間はコイツしかいない! となったぞ」


 なんだよそれ……適正とか言われてもちっともピンとこないんだけど。


「まぁそれも転生すれば分かることよ。で、どうじゃ? この頼み聞いてくれるか?」


「……まぁ、はい」


 駄々をこねても結局は転生するハメになるんだろうなと思い、先を読んで諦めることにした。


「さすがは儂の選んだ人材じゃ。それじゃあ任務の方頼んだぞ。討伐対象の勇者は今のところヴエノス大陸の魔王城で魔王気取りの生活を送っておるようじゃ。ちっ、いけすかんやつじゃ。お主の手でズタズタに殺してやってれ」


「……倒したら地球に返してくれるんですね?」


「勿論じゃ、神の間でも"キマリ"があっての。口約束であろうと契約した内容を破ることはできんことになっておる。神の言葉にはそれだけ責任が生じるのじゃ。よって先程言ったように、殺した折には何でも一つ願いを叶えてやる」


「期限とかはないですよね?」


「特にはないな。恐らくお主の適性を持ってすれば寿命もほぼ無限に近いじゃろう。それとお主を地球に返す際には魂を抜き取った当時の時間軸に返してやるから安心するとよい。どうじゃ、やる気もでてきたじゃろ?」


「うーん」


「まぁかといって勇者討伐までの時間を無駄に引き伸ばすなどという小賢しいことはするでないぞ? 勇者が世界を滅ぼしてしまう前に極力早く息の根を止めるのじゃ」


 簡単に言ってくれるが、俺がその瞬間を達成するビジョンが全くといっていいほど浮かんでこなかった。


「それじゃあ頼んだぞ。お主ならやれる!」


「まぁ、やってみようかなと思います」


「めちゃくちゃ期待しておるからのー」


 その言葉とともに再び光に覆われ俺の意識は薄れていった。

 ああ、なんか知らないけど異世界転生することになっちゃったな。しかも勇者と討伐する真勇者として。ああ、これから俺、どうなっちゃうんだろ……



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