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第一話

ある日、天界で人間の小説を読んでいた女神は思った。

「異世界転生、させてみたい…」


日本某市、午前六時

「ふあぁぁ、また朝だ…中学ダルいなぁ…」

鳴り響く目覚ましとともに、もぞもぞと布団が動き出し、彼はおきあがった。

「ひろさ~ん、朝だよ~。朝飯くいっぱぐれたくなきゃ降りてきな~」

「わかってるよ春奈、今行くってば~」

彼の名は北条博之(ひろゆき)。少し長めの黒髪と、緋色の目、棒のように細長い(身長170cm)が特徴。階下で彼を呼ぶのは彼の幼馴染の桐畑春奈(はるな)。ダークブラウンのロングヘアと緋色の目。こちらも博之よりは小さいものの(身長165cm)、細長い体つき。周りに言わせればどう見ても兄妹だが、二人ともただの幼馴染である。ちなみに家主は博之で、榛名は彼の住む木造一軒家の居候。立場が逆転しているのは気のせい…のはずと北条は思っている。

「お、来たねひろ。今日の朝ご飯はトーストだよ」

「お、うまそう」

春奈が作っているのは、バタートーストと目玉焼き。目玉焼きは二人とも意見が分かれるが、博之は固め、榛名は半生がいつもの二人のスタイルだ。

「「いただきまーす」」

ダイニングに響くのは博之の間延びした声と、榛名の明るい声。

彼らの家に大人はいない。二人とも両親が同じ事故で亡くなり、残された二人は親戚からも引き取り手が見つからず、それならばと

「うち来るか?」

「うん」

親しい仲だったことも相まって二つ返事で一つ屋根の下同棲することと相成った。

「今日は小テストだったっけ」

「え~?めんどくさいなぁ~」

「ちゃんと予習とかしたのか?」

「したした。結構いい点とれるとおもう。」

のんびりした雑談がしばらく続いた後、彼らの食器は空になった。

「「ごちそうさま」」

「さーて、行こうか」

「うん、いこいこ」

そしていつものように日常が始まる。そう思っていた。

「きゃぁぁぁぁ!?」

「おい!春奈!つかまれ!」

たまたま崖側の道を歩いていた時に、たまたま突っ込んできた居眠り運転のトラック。

春奈は崖の下に落ち、何とか手をつかんだ博之の命綱はまさかの細い木の枝。

「あ~あ、これじゃもう私たち終わりだね」

「…なんでそんな落ち着いていられるんですかねぇ」

「その顔で言われても説得力ないよ?」

「はは、違いないや」

ミシミシ…という音とともに亀裂の入る木の枝。だんだんと博之の手もしびれてきた。

「そんじゃ、来世でも会えることでも祈るか?」

「私は異世界転生できる方を祈ろうかな」

そして枝は限界を迎えた。二人は崖の下へ落ちていく。

「じゃあね」

「じゃあな」

「…ねえ、ひろ、私…」


そこで二人の意識は途切れ、彼らはその生を終えた…ように見えた。

次に二人が目を覚ましたのは真っ白い世界。地平線の果てまで続く古代ギリシャ風の神殿。

「私たち…生きてるの?」

「死んでるほうに一万」

「だよね~」

あたりを見渡しても白、白、白。形容詞などほぼ要らない。


「んで?君たちはどうしたいの?転生する?それとも復活する?」

唐突に彼らに話しかけたのはテンプレ小説でもよく見かける女神。ただし、少し違うところは彼女が身に纏っているのは古風なトーガなどではなく、何やら18世紀あたりの服装のような…

「うひゃい!?あ…あなたは…?」

ビックリして変な声を出しながらオドオドと春奈が問うと、

「私かい?私はご覧の通りの…まぁ少し違うけど女神さね。ご想像の通り、アンタらは崖から落ちて転落死。今頃、ニュース速報になってる頃だろうよ。んで、さっきも聞いたけど転生するのかい?なんならいっちょ転生先の世界を見ていくかい?」

あまりにも急な話に一瞬脳をフリーズさせた2人だが、我に帰ると、

「どうする?あの人信頼できるのかな…」ボソボソ

「春奈の言いたいことはわかる。女神にしてはその…フランクすぎるからなぁ…ま、いっちょいってみっか。」ボソボソ

「私はひろがいいならいいよ。」ボソボソ

「りょ〜かい」ボソボソ

そして彼らはフランク女神と向き合う。

「んで?秘密の会議の結果やいかに?」

「つれてってくださ〜い」

と博之

「右に同じく〜」

と春奈

「そうこなくっちゃ!そんじゃ、(主に精神面の)衝撃に備えな!飛ぶよ〜」

そう言って彼女はボソボソと何かを呟き、白の神殿が急にかすみ出し…3人の影は神殿から消えた。





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