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闘争学園  作者: ゆきつき
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8話 勝敗

 リンカの武器は、これと言っておかしなところのない、至って普通な直剣。対するベネットは、3m程度の長さの槍。

 リンカがベネットに対抗するには三倍の力が必要になる。

 だが試合を見てみれば、そのおかしな光景を目撃できる。


「どうしてリンカは手加減しているの?」

「僕に聞かないでくれますかね。それがわかっていたのなら、彼を観察する理由は無いですから」


 確かにリンカは押されているように見える。だが確実に均衡した試合と言えるだろう。リンカがやや劣勢、ベネットがやや優勢と言った具合。


 だが、これはあくまでも、お互い武器だけを使用した戦い。

 この学園の目的の一つ、超能力を習熟させる事。つまり生徒達は皆、何かしら超能力を使える。これは武具による優劣を覆す事ができる。


『五分経過』

「このアナウンス、必要なの?」

「最初は必要ないでしょうね。せいぜい十分前の放送ぐらいで十分ですよ。ですがこれは僕達に向けたアナウンスと言うよりも、あちらで戦っている人達の為のアナウンスです。どのぐらい経ったのかどうかを知らせる為です」

「それってそんなに重要なの?」

「ですから、やはり十分前の放送ぐらいで十分です。強いていうのであれば、戦っている彼等を焦らせる事が目的としか思えませんよ」


 そしていよいよ、ベネットが本気を出そうとしていた。


「はっはは!なんだ、そっちのクラスにはお前みたいな相手が居るってのか!どうやら俺はくじ運が無かったらしいな!」

「俺はお前と一緒じゃなかったって点から言えば、くじ運が良かったよ」

「だが別にそんな事は関係ない。なにせこうして戦う事ができるんだからな。大怪我しても文句言うなよ!」


 突如、闘技場に強風が訪れる。その中心には、ベネットが居た。

 そして掌では、圧縮された空気を弄んでいた。


「そろそろ時間かな?」

「じゃあ、行くぜ!」


 掌に乗ってあった空気玉を一つ、地面に叩きつける。それにより、小規模ではあるものの、竜巻が発生した。そしてベネットはその竜巻の中に突き進んでいく。


「いくら地面に砂だとか石だとかが無いにしろ、ありゃやりすぎだろうが。簡易結界が無けりゃ、あっちにも被害が出てるぞ」


 この試合の勝敗は単純だ。場外に出るか、武器が破壊される。もしくは降参を宣言するか。もし相手を殺した場合、試合は無効試合になる。倫理感に欠けるとは思うが、十分に力を示した以上、責めるに責めれない為、ただ無効試合としかできない。

 その他はこれと言ってルールはない。思う存分、生徒達が全力を出してもらう為、出来る限り縛るようなルールはない。


 そして力を思う存分発揮してもらう為、戦闘舞台より一回り外側に、簡易結界が張られている。簡易結界はその名の通り、簡易的な結界の事。

 そして結界は、簡単に要点だけを纏めるのなら、やってくるものは拒まないが、出ていく事は容易ではない空間。使用者によっては結界内に入る事すら困難にする事も出来る。

 つまり、生徒達はこの簡易結界があるおかげで、観客に対しての被害を考える事なく、自分の試合に専念する事ができる。


「まずは一発!」

「!?」


 ベネットが掌に用意していた空気玉をそのままに、リンカのみぞおちめがけて掌底打ちを放った。

 それを寸でのところで剣で防ぐ。だがあまりの威力に、剣が折れた。


「ッ、なんだよ、まったく。折角いいところだったってのによ!武器が武器だからだ。この程度で折れるなんて」

「なんで勝ってたあんたの方が悔しそうなんだか」


 試合は予想通り、ベネットの勝利。

 だが運営が想定していた以上に、リンカの奮闘が目立った試合になった。





「やー。負けた負けた」

「ええ、見てましたのでわかりますがね」


 もうすぐ第二試合が始まろうとしていた。


「それでどうして、本気じゃなかったの?」

「嫌なとこ突いてくるな。っと、別に手加減なんてしてないけどな」

「そう。自分で言うんだから、そうなんだろうね」


『第二試合、ラウル君対パーカー君の試合を開始する』


 そして試合が始まった。


「にしてもずるいよなぁ。ただでさえ剣術が一流を超えてるってのに。槍だからこっちはそれ以上の実力を求められるってのに。そこにあの圧縮だ。難攻不落ぶりに驚きだよ、まったく」

「強いていうのであれば、君は今までちゃんと実力を示していなかったと言う事を示しましたね。今まであなたが訓練で示した実力では、槍に抵抗する事など不可能でした」

「別にほら、成長したって可能性だって」

「物語であったとしても、ここまで急激な成長など遂げませんよ」


 試合はどちらも引けを取らない、互角な状況で始まった。

 ラウルは杖を持ち、それを攻撃に用いている。このトーナメント戦にあたり、武器はすべて木製の物が支給されているが、この杖は特に、攻撃用の武器とは思えない。刃どころか、杖の先を突き刺すように細工もされていない。本当にただの杖だと言えるだろう。

 ピーターは脇差程度のサイズの刀。それといくつかの、捕縛用の手榴弾。これは危険が無いと判断されているため、試合に持ち込む事ができる。だがこれも少し制限があり、自分が開発した物に限る。


「俺の話は良いんだよ。それよりお前はピーターの試合を見なくて良いのか?研究仲間だろ?」

「別に見る必要はありませんよ。彼ではどうやってもラウルには勝てませんから」

「随分と仲間に厳しいな」

「ピーターの実力では、いずれラウルに押し切られます。それに彼の超能力は、ラウル相手には相性が悪い。どうやっても勝てませんよ」


 レイブンの言った通り、じりじりとではあるが、ピーターが押されている。特殊な粘着性のある糸を使った捕縛用の手榴弾と言う飛び道具もあるが、それでもピーターが押されている。


「それにです。ラウルは豊作と言われた推薦組の、第五位ですよ。いくら推薦枠が四人までと言えど、あの異常者達が居た推薦を賭けた試験で五位だった。それを相手にしているんですよ、彼は。どうあがいても無理です」

「厳しいねぇ。せめて友達を贔屓にしても良いじゃんか」

「生憎と、嘘はつけない性質なので」


 流石に剣術では勝てないと悟ったのか、ピーターは超能力を使う。

 ピーターの超能力、草緑操作。雑草や木、花などを自在に操る事ができる。花や木はこの舞台には存在しないが、雑草はそうではない。舞台はコンクリートであったとしても、土台に土が混ざっている。そこに少しではあるが、雑草の種が混ざっていた。この国の技術を用いても、厄介な雑草は未だに絶滅させれていていない。

 そしてその雑草を操る。少しでもいい。足止め、もとい体勢を崩す為に。


「勝負は決まった。彼は少しでも、ラウルから超能力を使うと言う意識を遠ざける事をするべきだった。あの能力は並大抵の人ではどうともできない」

「まああいつは珍しく、次世代のタイプだから」

「次世代?」

「超能力は昔の人には無かった。けど人間の進化の過程で、超能力が生まれた。モンスター達に抵抗するためだろうな。一つだけでも、魔法とは別の戦う力を得られた訳だ。で、その力が生まれて100年ちょっとは経った。まだまだ進化の途中なもんで、新しい力に目覚めつつあるんだ。簡単に言えば、超能力が一つだけ、ってルールが無くなる可能性がでてきた訳だ。あいつが一番ではないが、まだ二桁ぐらいだったはずだぞ」


 ラウルの超能力、炎風。炎を風に乗せて相手に攻撃できる。


「まあ、あいつは一個の能力って言うけどな。その気になれば炎だけ、風だけを使う事ができるんだよ。今の超能力が一つしかない世の中だと、手札が二つあるってのは有利に働く。いや、実質三つか」

「それもあって、彼にはどうやってもラウルには勝てないのですよ。彼の能力ではどうあがいてもラウルの能力には勝てない」


 案の定、雑草で足を縛られたのなら、ラウルは超能力を使う。そして足下の草を焼き払ったら、その流れでピーターに向けて放つ。

 熱と強風が相まって、ピーターは自分の顔を守ろうとする。喉が焼けないよう、呼吸を止める。目を焼かれたくない為、目を閉じる。

 それが命とり。風を使い姿勢を崩し、杖を使い体を少し浮かせ、これまた風を使い場外まで吹き飛ばす。


「ま、見ての通りだ。あいつは剣術、って言えるのかわからないが、杖捌きはまあ一級品だろうけどな。それでも普通に剣を使う奴等にはどうしても残念な結果になる。けどあいつの場合は超能力が強いからな。多少剣?の実力が劣ってたとしても、超能力が強いから問題なく戦えるってわけだ」

「彼の超能力の場合、相手が誰であろうとも一定以上の効果を発揮できます。弱点も、せいぜい調整を失敗すると自信が火傷を負うと言う事。超能力のおかげで、彼は火に対しては強いですから、ぼく達が死ぬ可能性がある火力であったとしても、ちょっとした火傷程度で済むわけですよ」


 試合は奮闘虚しく、ピーターの敗北。ラウルの勝利。

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