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闘争学園  作者: ゆきつき
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7話 場所取り

 学園エリアの駅から闘技場のあるトレーニングエリアの駅まで、約30分。リニアは時速270kmで突き進んでいた。


「ん?着いた?」

「うん、着いたよ」


 5分前、クリミナはようやくレイラ達の拘束から逃れる事ができた。そして自分の座席に戻っていた。

 いや、正確に言うのならば、リンカがクリミナの席で寝ていた為、リンカの座席に座っていた。先ほどまではリサとお喋りを楽しんでいた。


「あいつは?」

「先に行ったよ。君が起きるのを待っていられないだって。レイラ達と行った」

「じゃ、行くか」


 眠っていた者が多いため、リニアにはまだ人が残っている。そしてこれは例年通りの為、リニアはしばらく出発する事はない。


「早く良い場所を取っとかないとな。折角こんな早起きしたのに微妙だと、いたたまれないからな」

「そうだね」


 わかっていると思うが、クリミナは転校生だ。勿論この場所に来た事も初めてだ。

 他の者達は最初に軽くではあるが、学園の敷地を一通り案内され、場所は教えられている。が、殆どクリミナと同じく、初めて来たのと同じだ。一回だけ来た程度では、覚えていられない。それほど広大な敷地がこの学園にはある。

 ここだけの話だが、三年であろうが、この場所に来るのは10回もない。そのため三年だろうと、この場所で迷子になる事もある。





 それにしても、学園の敷地に在って良いような規模の闘技場ではない。いくら外から観客を入れるからと言えども、勿体ないぐらいの闘技場だと言えるだろう。


「ちょっと、広すぎなんじゃねえの?どのあたりが良いとかさっぱりだな」

「ここは、どのぐらい人が集まるの?」

「さあな。でもこの学園だけじゃなくて、この国全体の一大イベントだと言えるからな。少なくともここには一万人ぐらいは集まるんじゃねえか?更に言えば、一部ケーブルテレビで生放送するからな。優勝者は号外で知らされたり新聞のトップを飾ったりニュースで生い立ちが語られたりするかもな」

「ちょっと、僕には縁のない言葉ばかりで、よくわからないよ」

「そっちでもわかるように言えば、そうだな。ラジオで試合状況を中継するってこった。新聞とかはそっちにもあるだろ?あとはまあ、結局はラジオで有名人になれるって事だな」


 そして彼等二人は丁度観覧席に居た。そこから試合を行う場所を見下ろしながら、よさそうな場所を探していた。


「最悪ちゃんと試合を見れれば俺は良いんだけども。レイブンの野郎に頼まれてるからなぁ。もうちょっとオーダーを聞いとけばよかった。最前列で良いのかすらわからん」

「僕は戦いを観戦する事なんて無いから、どこが良いかなんてわからない。そもそもどこが良いかなんてあるの?」

「まあ、遠くから観戦するのは、見えにくいけど。まあ、近ければ良いかな。レイブンには、てめえでやらないのが悪いって言えば良いだろ」


 実を言えば、遠くの席であろうとも、ホログラムを用いて試合を見る事ができる為、場所取りはとても重要と言う訳でもない。ただ自らの眼で戦場を見たいと思っているのなら、しっかりと場所取りをする必要がある。


「それにしても、リサのパーカーはそのまま借りてるんだな」

「ちゃんと返そうとはしたんだけどね。使えば良いって言ってくれて。半ば押し付けられた感じもしたけど」

「ま、あいつが良いって言ったなら、ありがたく使わせてもらえ。お前だけ体操着が別物なんだし」


 結局、クリミナ達は、最前列の席にした。





「ここですか?」

「なんだよ。文句あるのか?」

「いえ、そういう訳では無いですがね。と言うより、良い場所ですよ。ですがどうせなら、もう少し正面が良かったと言う話です」

「そればっかりは、しょうがない。そもそもあの戦場、俺達が来て少ししてから完成させてたんだ。何処が正面か分かってない状況だったんだ。一番前ってだけでも感謝してほしいぐらいだ」

「ええ、そうですね。ぼくの代わりに場所を取ってくださり、ありがとうございました」

「お前の口調も相まって、丁寧すぎる感謝なんだけど。そこまでじゃないだろ」


 レイブンは二陣の、いわゆる試合は全部見る組。そしてその生徒達が来たと言う事は、一般の客も同じく全試合見る為にやってくる。

 闘技場は賑わっていた。


「じゃ、俺は一試合目なんで、準備してくら」

「頑張って」


 そして客が集まってきたと言う事は、もうすぐ試合が始まると言う事。正確には試合がもうすぐ始まる為、観客が集まってきた訳だが。


「えっと、改めて。僕はクリミナ。君は?」

「ぼくはレイブンです。見ての通り力は無く、戦略を練る方が得意です。と言うより、機械いじりなどの方が好きですが。どうぞよろしく」

「よろしく」


 軽く自己紹介をし、二人は握手を交わした。


「それでです。ぼくは君の事を知らない。ですが、ええ。聞くつもりはありません。他人の過去に興味は無いですから。ぼくが興味あるのは、君は政府側に就くのかどうかです」

「僕は誰の下にも降らない。それは絶対だ」


 クリミナは語気を強めてそう言った。今までの口調とはかけ離れていた為、別の誰かの言葉のようにすら思える。


「……なるほど、そうですか。ならば害はないと思って大丈夫そうですね」


 だが、わざわざそれを指摘して、蛇を出すほど無能ではない。

 そもそもレイブンは知将だ。たった一人に執着するのではなく、大局を眺める事ができる男だ。確かにたった一人でその大局を動かせる人物も居るが、作戦と知恵で乗り切る事も可能だ。そのため、個人に執着せず、作戦を遂行する。

 そしてレイブンの中では、クリミナは注目するほどの危険度ではないと、そう考えている。いや、この危険度を確かめる為に、今回のトーナメントをじっくりと観戦すると決めた。


「では、リンカの試合を眺めるとしましょうか」

「そうだね」





 この学園、一学年二クラスであり、一クラス16人と言う少数で構成されている。

 それでもトーナメント戦と言う事もあり、試合は二日かけて行われる。一試合は最大で30分。試合と試合の間は観客の事も考え約10分。これが一試合の流れになる。最大限生徒達が活躍できるよう、30分と言う制限時間が設けられている。本来ならばちゃんと決着をつけるまで試合を続けさせたいのだが、それでは逃げに徹する事ができ、試合にならないと言う事態になりかねない為、こうして制限時間が設けられた。


 そして二日かけて行われる試合、その第一試合。その注目度は高く、例年期待度が高い生徒が第一試合に選ばれている。

 そしてこの場合、リンカがその期待度の高い生徒と言いたいのだが、決してそうではない。どちらかと言えば、彼はやられ役。引き立て役だ。弱すぎず、かといって強すぎない生徒。それがリンカに求められている役割。でなければ、その注目されている生徒の力を十分に発揮してもらえない。


『それでは第一試合。ベネット君対リンカ君の試合を開始する』


 事務的な口調でそう告げられた。人の声ではなく、機械音。


「ところで、相手はどのぐらい強いの?」

「彼はB組のベネット。いわゆる、期待の超新星、その一人。同じクラスではない為詳しく知っている訳ではありませんが、とても強いらしいですよ。B組には既に彼の相手をできる者はいないらしいです」

「じゃあ、リンカは」

「僕からはどうとも。彼は惜しいところまで戦うんじゃないですか?そして負ける。いつもの事です」


 リンカの話になればレイブンは興味なさげに答えた。


「そうですね。言い直すべきですかね。とても試合を盛り上げる負け役、と言ったところです。彼は闘争訓練の時は必ず負けていますから。それも相手が気持ちよく勝てる負け方をしますから。まあ見た方が早いですよ」

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