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闘争学園  作者: ゆきつき
3/10

3話 報告

「これで全部と?」

「そ。おいなんだよ、疑ってんの?俺が使った双眼鏡にカメラを仕込んだのはそっちだろ?そして俺はこれを使って終始彼を見張ってたんだ。何処に疑う余地があるって言うんだ」

「何処と言うならば、すべてと言わざるを得ないのですが。肝心なところは消されていたり、最後にどの方角に逃げたのかすらわからない。しかも謎の不具合によって音声はすべてノイズが混じったり消えていたりと来ました。一体どうすれば、疑わないで済むので?」


 朝からなかなか物騒な話題で盛り上がているのは、リンカとレイブン。

 昨日起きた事を、報告している最中。


「ぼくはこれでも、しっかりと報酬を渡したはずですが」

「いやぁ。これでも秘密はちゃんと守るのが情報を取引するうえでの条件だから。俺の知った事じゃあない」

「はぁ。まあ良いです。あなたに頼んだのがそもそもの間違いでしたので」

「酷い事言うなぁ、おい」

「それで。やはり彼等は、政府との繋がりが強いグループでしたか」

「そうだな。少なくとも、俺の知ってる限りの情報では、あいつらが一番政府とどっぷり」


 情報の交換は険悪な雰囲気っで行っていてもしょうがない。情報の交換だけに限らないが、険悪な状態で行ったところで、まともな会話にならないだろう。


「それにしても、彼ですよね、問題は。確かに化け物だと言う事は聞かされていた訳ですけど。これは想像以上の化け物具合ですよ」

「お?あいつらが喧嘩吹っかける辺りは想定内だってのに、彼の強さは想定外だったのか?案外あんたの予知も微妙だな」

「一つ言わせてもらうのなら、相手の強さの予測と言うのは、ぼくの予測とは相性が悪いのです。それに今回は予測なんて使ってません」

「二つ言ってんじゃねえか」


 レイブンの超能力、それは予知。予知と言っても、正確な未来が見える訳では無く、あくまで予測の範疇。ただ当たる確率が限りなく高い為、予知と呼ばれている。

 正確な能力の詳細は、他人より頭が良いと言う事。だが侮るな。ただ賢いと言う訳では無く、予知と言わしめるほど高確率で当たる予測を立てるほどの頭脳の持ち主。

 そして彼の予知は、機械を使い原子の位置を測定、彼自身が運動量を導き出す。いわば現在を限りなくすべて把握する事によって、起こりうる未来を予測する。


「とにかく、ぼくは自分の能力は使ってません。あくまでも、ぼくならこうする、と思っただけです。現にこうする事によって、クラスの皆から怯えられている。そして仲良くなると言う考えを捨てさせ、手懐けるのが正しいと思わせる。ならばやはり、手っ取り早く恐怖を刻み込むしかないでしょう」

「本当にそうなってるから気持ち悪いんだよ」

「ただ、政府は人間関係を想像以上に甘く見ている。ここに居る人間は、理想を追うおかしな集団。そしてそもそも政府の言いなりになんてなりたくない人が大勢いる。ならば政府の思惑と逆の行動を取るでしょうね。あの人達は馬鹿ですから」

「そういうあんたこそ、その莫迦と同じ行動を取ろうとしてる訳だけど?」

「ぼくは敵になりうる人物の知りたいと言うだけですよ」

「あっそうですか」


 だが、彼の本領は予知ではない。その常時働いている頭脳こそ、本来の脅威。作戦立案以外にも、政治や経営などもお手の物だ。勿論、技術開発だって出来る。自身が使っているコンピュータも、彼自身が組み立てた物だ。


「それで。その敵とやらは、ここに居ないようだけど?」

「いくらこちらが歓迎状態であったとしても、昨日の間に逃げる事も出来るでしょうしね。もう学園に顔を出さないかもしれませんね」

「なんだ?こういう時こそ、予知の出番じゃないのか」

「ぼくはすべてを把握している訳じゃない。だから一定の範囲を超えれば、予知も不確定になる。それがあるからこそ、無暗に予知は使えないのですよ」

「ふーん」


 何か思いついたのか、リンカは席を立つ。


「はいじゃあ、ホームルームを始めるぞ。ほら、さっさと席に着け。さっきチャイムが鳴っていただろう。あれはまだ先生が来るまで時間があると言う事を伝えるものじゃなく、先生が来ても大丈夫なように準備を終わらせる為の合図だ。何故それを守らない」

「でも先生も忘れてるじゃないですか」

「その手には乗らないぞ。お前達はハチャメチャだからな。嘘をついても無駄だ」

「本当なのにな」


 テイトはホームルームを始める。


「じゃ、出席を取る。ん?早速クリミナは来てないのか。誰か知ってるか?まあ、知ってたら、そんな反応にはならないか。まあ良い。……いや待て。リンカはどうした。あいつは成績こそイマイチだか、なんだかんだで皆勤だっただろ」

「え?さっきまで居たはずですけど」

「サボタージュと言う訳か。まあ一限までに呼び戻して置け。じゃ、ホームルームを終わる。各自、授業の準備を忘れずに」





 リンカは、確証があった訳では無いが、勘を信じ、学園の屋上に来ていた。勿論だが、サボる為ではない。事実としてサボっている扱いを受けているが、彼はその目的の為にここに来た訳ではない。


「よ。初めまして、って言っておこうか。俺はリンカ。お前のクラスメイト。一応会ってるはずだけど、こうして会話するのは初だしな。初めましてで良いだろ」

「なにをしにここへ?」

「それを答えても良いんだけど。質問を質問で返させてもらうぞ。お前こそ、ここで何してるんだ?そんな物騒なもん抱えて」


 クリミナの手には、二本のダガーと刀の間ぐらいの刃物があった。刀身が赤のものと、青のもの。見られたとわかった瞬間、クリミナは二本のナイフを隠した。


「僕は、皆の前に出ていく資格がない」

「ならまあ、学園から逃げ出せば良かったのに。その妖刀、学園の敷地の外だろ。それも限りなく海に近い陸地だったはずだろ。逃げ出すにはうってつけじゃないか」

「契約なんだ。この国から許可なく出ていけば、問答無用で殺すって言われている。だから逃げ出す訳にはいかない」

「ふーん。で、ここに残ったと。でも皆の前に行くのは恥ずかしいからここに居る。なんて面白い冗談だ?」

「え?」


 リンカは明らかに悪意を持って、そう言った。


「別に他人の考えなんて俺はわからんし、どうとも言えないけどな。けどそりゃいくら何でも、無責任じゃないか。昨日起きた事をちゃんと説明でもしてみろよ。言いたくないなら、それこそ何食わぬ顔で出ていけば、周りだって藪をつつく真似はしないだろうさ。いくら人間関係に疎いとは言え、許さる範囲を超えているぞ」

「そういうつもりじゃ」

「ああ、だろうな。だから別に責める訳じゃない。言っても俺だって、他人には話してない秘密だらけだし。それに、他の奴等だってそうだ。ここに居る連中は強さと引き換えに、重大な秘密を背負っている。基本そういう奴等なんだ。二重人格だどうとかは、ちっぽけな問題だって思えるぐらいにはな。ま、なにもない奴だっているけど」


 クリミナは、これと言った反応を示さない。だがほんの少し、頬を緩めた。


「じゃ、本題だ。おいクリミナ。あんた一体、何を企んでいるんだ?ご自慢の愛刀まで回収して」

「どけ餓鬼」


 だが、クリミナはすぐに、別人へと変わった。


「リンカ、と言ったか。ふむ、なんで三代目がこんな時代に人の形をしているのか、聞きたいぐらいだがな」

「おいおい、即バレかよ」

「まあそれは良い。オレの知った事ではないからな。それで、何を企んでいるか、だったか。それは勿論、生前、人の体で成しえなかった、人を鏖殺する事に決まってる」

「へー。俺の知ってるクリミナってのは、集落を襲っては、一人を残して鏖するとは聞いてたけど。それと情報屋だけは何があっても殺さない。そんな奴が、鏖殺するって?変な話だな」

「何処がおかしい?嬲り殺しても、何も残らない。だが殺される寸前、俺の名前を叫び、恨み辛みを垂れ流し、散々泣きわめきながら、最後の瞬間まで俺の事しか考えていない状態で、一捻りで首を飛ばす。この快感を得るために、俺の名前を伝える者が必要だっただけだ。わかるか?大切な者や好きな者を思い浮かべるのではなく、最後の瞬間までこの俺の事を怨み、俺の事しか考えられずに死ぬ様を。あれは、どの殺しよりも得られる快感が違う。あれを味わえば、もう二度と抜け出せない」

「世の中、悪魔みたいな奴ってのは本当に居るのか。呆れるな」


 クリミナは、今でこそおかしな名前だ、程度の認識でしかない。だが昔、その名は口にする事すら憚られる、忌み名として有名だった。それは彼がやってきた所業が故の、正当は評価。そして彼は、その評価欲しさに、それらをやってきた。


「残念だが、お前に初めてをやる訳には行かない。本当に残念だ。俺を知っている唯一の現代人。にも拘らず、彼を最初に殺す事ができないなんて。なんて残酷な事だろうか」

「その口振りは、まだ殺しをしてない人物だけが口にする権利がある」

「なんだ、知っていたか。つくづく魔法と言うのは厄介だな」


 今は超能力が主流になりつつあるが、魔法と言う技術が無くなった訳ではない。ただ精霊との繋がりが極端に薄くなった為、よっぽどの才能がある人物でもない限り、魔法を使えない。


「いや、こと今回に限っては、情報を隠すような事もしてなかったからな。少し調べればわかるような内容だったか」

「そのちょっと調べるのにどれだけ大変なのか、専門外の人間には理解できないだろうな」

「俺はお前の質問に答えた。いい加減帰らせてもらう。無理やり体を奪うのは疲れるからな」

「まだ聞きたい事が、はぁ。自由人め」

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