二、②
夜の店が立ち並ぶ歓楽街を隼人は足早に歩いていた。
煌々と看板のネオンが灯るランジェリーパビリオン「バロン」で足が止まる。
すぐに呼び込みに捕まる。
「今日もいい娘いますよ~、どうですか、ちょっと寄って行きません?」
「くるみちゃんいる?」
隼人は慣れた口調で言った。
だが、本当は3回目で、二度ほど接客を受けた女の子の名前を言っただけだった。
今日は、何もかも忘れてしまいたい、彼はそんな気分だった。
「ああ、常連さんでしたか。今日は来ていますよ。人気な娘なんで今、接客中かも・・・ご指名しますか?」
「ああ、頼みます」
「はい、一名様ご案内~」
ランパブに入ると、薄暗くミラーボールが妖しく煌めている。
ノリの良いユーロビートが流れる中、黒服のアナウンスが響く。
「お客様、一名様、あっ、一名様、18番テーブルにご案内、ご指名は人気№3のくるみちゃんだ。くるみちゃん、くるみちゃん、18番テーブルお願いしまーす・・・」
鼻に抜ける独特な声で、黒服のアナウンスは続いている。
ほどなくして、隼人の座るボックスにくるみが来た。
「いらっしゃーい、ご指名ありがとう。くるみです♡」
くるみは隼人の隣に座ると、すぐに密着してくる。
「常連さんじゃ・・・ないね。何回か会った?」
「2回かな」
「嬉しいっ!ありがとー」
くるみはそう言うと、隼人に抱きついた。
「何飲む?」
「じゃ、ビールで」
「ビールお願いします」
くるみは注文する。
「ルービー入りますっ・・・ヘネシーでもオールオッケイ!」
黒服がすかさず、アナウンスを入れた。




