七、新しい明日 エピローグ
ほろ酔いの隼人はアパートの階段をのぼり、二階自分の部屋へと戻る。
自分の部屋のドア前に座る人影があり、瞬時、ぎょっとなる。
人影が見える夏菜だった。
彼女は無理して笑顔を見せると、
「初詣に行かない?」
隼人を誘う。
菓子開発の後、隼人と夏菜の関係は、急激に冷めていった。
大きな理由は、わだかまりを持った隼人が連絡をとらないことがあり、夏菜は待つ形となっていた。
彼がはっきりとした交際の意思表示をしないまま、今日まで至っている。
(すべて清算するか・・・)
隼人は別れを決意し、ゆっくりと頷いた。
夏菜の軽自動車に乗ると、近くの神社へと向かう。
二人は無言のまま、鳥居をくぐり、篝火に照らされている神社を見上げる。
賽銭箱にお金を入れて詣でる。
隼人は何も考えず、ちらりと夏菜を見た、静かに目を閉じお参りする姿は凛として美しかった。
それから2人は隣接する小さな公園の外灯下のベンチに二人並んで腰かけた。
重苦しい長い沈黙が続くが、先に夏菜が口を開く。
「ごめんなさい」
彼女の口からこぼれた言葉は意外なものだった。
「えっ?」
「菓子開発をしたあの日、私はどうしてもあなたに会社に残ってほしかった。あなたの気持ちも考えないで」
「・・・それは」
(自分の力がなかったから)
隼人は後の言葉を飲み込んだ。
「ごめんなさい」
夏菜の瞳からは大粒の涙がこぼれていた。
隼人はようやく気付いた。
上空の雲一つない満天の星空を見あげ、自分の浅はかさを心の中で笑った。
「いいんだよ。俺が情けなかった」
「でも」
隼人は大きく首を振り、
「自分が背伸びしようと・・・間違っていたことが分かった」
隼人は夏菜を肩から抱きよせると、
「俺の方こそ、ごめん」
素直に一言が出た。
隼人の新しい明日がはじまる。
エピローグ
「隼人、忘れ物してない?」
「してないよ夏菜、お姉さんぶんないでくれる」
「だって、あなたドジっ子でしょ」
「・・・そんなこと・・・あるよ」
「ほらっ行っておいで、新しい仕事頑張るのよ」
「だから・・・」
隼人が次の言葉を言う前に夏菜は唇で塞ぐ。
「いってらっしゃい」
幸せそうに微笑む夏菜。
「いってきます」
隼人は新しい一歩を踏みだす。
完
無事、完結しました。
読んでくださった皆様、ありがとうございます。
拙作には、私の過去作には珍しく、お話を差し替えたり、追加しています。
どこかわかるかな~(笑)。
答えは、後ろに。
答え
差し替え・・・隼人が夜の街に行ったところです。
本当はせっ〇んの国なんです。
載せられないつーの(笑)。
追加・・・エピローグです。
感想欄の幸田さんの一言により、追加しました。
どうかなと思いましたが、最近暗い話題が多いし、ハッピーエンド風に。
では、重ねて読んでいただき感謝です。