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情緒桜城  作者: 山本大介
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一、試練①


 城戸隼人は、肥後製菓堂という熊本県の老舗の菓子店で働いている。

 数店舗の店を構え製造から販売を行っていて、和菓子、洋菓子、ケーキとお菓子全般を手広く取り扱っている。

 

 その店舗がある山鹿市で販売員をしている隼人は、最近ようやく仕事にやりがいを感じはりきっていた。

 熊本市内の本社製造工場で働く、樋口夏菜の存在も大きい。

 

 職が決まらず、滑り込みセーフで就職が決まった。

 初の大卒者採用である彼に対する風あたりは強かった。

 まわりの高卒の同年代からは、仕事も出来ないくせに、お金を貰いやがってという冷たい雰囲気があり、常にいつ仕事を辞めようかと考える日々だった。

 お菓子販売員という職業柄、女性社会ということもあった。


 ようやく最近、仕事が認められだしてやりがいを感じつつあるのだ。

 西マネージャーが言ってくれた「問題は時間が解決してくれる」という言葉を信じて、24歳になる ここまで、やってきて良かったと思っている。


 五月に入り、めっきり夏が来たかと思うような暑さの中、隼人は開店前に店周りに水打ちをしていた。

 すると、会社のバンが店の駐車場に停まった。

 このバン極彩色で肥後製菓堂と車の側面に書かれており、宣伝誇張が激しすぎて、昔は和菓子一本でやっていたというプライドの面影が全く感じられない。

 しかし、この極彩色のロゴデザインを考えたのは、他でもない、面倒をみてくれた西マネージャーなので、彼は心の中だけにそう思うのに留めていた。


 そんなことを考えていたせいか、車から出てきたのは西だった。


「おはようございます」


 接客の心得、何度も教わった美しいお辞儀をする。


「よっ、おはよう」


 小太りで、汗をかきながら西は、右手をあげゆっくり隼人に近づいた。


「城戸副店長、社訓と5S」


 西は時々不意打ちのように、商品の値段や、個々のお菓子の賞味期限、社是、社訓などを尋ねてくる。

 もし、それに答えられないと、宴会での一気飲みや裸踊りが待っているのだった。

 また、来たかと思いつつ、彼は涼しい顔で、


「社訓、一、自分、お客様、会社すべてに誠実であること。二、お客様、会社、関係先に感謝し報恩する。三、お客様、会社、社会に奉仕することは私たちの喜びである」


 西は額の汗をハンカチで拭いながら頷くと、


「よしっ、次、5S」


「はい、一、整理。二、整頓。三、清掃。四、清潔。五、(しつけ)です」


 ポンポンポンと、西は拍手をする。


「OK、ちったあ、やる気でてきたようだなァ」


「おかげさまです」



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