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情緒桜城  作者: 山本大介
19/20

六、③

 

 その後、店内でパートやバイトの人達を集めて、ささやかな宴会を開いた。

 一足先に会社全体の送別会は終わっていて、山鹿店のメンバーで行う小さな会だ。


 早出勤だった十川が買ってきた総菜やお酒を持って来ると、売れ残りのケーキやお菓子を休憩室に運び、テレビで紅白歌合戦を見ながら、しみじみ思い出にふけながら盛りあがる。

 ケーキを夢中でパクついていたバイトの女の子が、おもむろに、


「城戸さん、今日までなんですか」


「そうだよ」


「再就職のアテはあるんですか?」


「いや、急だったから・・・まだだけど」


「わぁープー太郎だぁ」


「悪かったな」


 隼人はムッスリと紙コップに注がれたビールを飲み干した。


「はい、どうぞ、お疲れさまでした」


 十川は微笑みながら、彼の空のコップにビールを注いでくれた。

 隼人は酔いが回る前にと、姿勢を正し正座になると、彼女に頭をさげた。


「店長。今まで、ありがとうございました」


 本当に感謝を込めて言う。

 女の子は「店長、年下なのに~」と茶化すが、瞬間、十川が大粒の涙を流しはじめると、パートの末崎もつられて泣いてしまい、女の子まで泣きはじめる。

 その場はしんみりとなってしまった。


 やがて紅白が終わると宴会を切り上げ、皆は名残惜しそうに店を後にした。

 隼人も最後となる店の閉締まりを確認すると、鍵を十川に手渡した。


「じゃあ、後、頼みます」


 十川はぐっと右腕を曲げて見せると、


「まかせといて、私もあと数日だけど、最後まで頑張るわ」


 そう言うと、十川は右手を隼人の前に差し出す。

 彼は、はにかみながら彼女と力強い握手を交わし別れた。


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