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情緒桜城  作者: 山本大介
16/20

五、③

 

「でも、二枚目の和洋折衷の和菓子はイケそうな気がする・・・絵と食材はまぁ・・・ね」


 夏菜のダメだしツッコミが入ったが、隼人の顔には、ほっと安堵の表情が浮かぶ。


「ポイントは、いかに和洋折衷であっても、和菓子のイメージを損なわないもの、そして、美味しくて、リピートしたくなるものだと思います。西マネージャー」


 隼人は夏菜が何故自分ではなくて、西に尋ねたかを訝し気に思ったが、結局の責任者は西であると自分なりに考えると、次第に情けなくなるのと同時に腹ただしさも込み上げてきた。

 

「わかった。それでいこう。城戸、我が社の危機を救うのは、お前かもしれんぞ」


 西は製造側の責任者である夏菜からGOが出て快活に笑った。

 が、隼人の心にはしこりが残った。

 その後、深夜まで続いた「情緒桜城」の菓子開発に、彼は晴れぬ気持ちのまま取り組んだ。

 結果的に、西が音頭をとり、夏菜が開発の主導をとり行われた。

 所々で、夏菜は隼人に「これでいいですか」と許可を求めてくるが、有無を言わさぬ雰囲気と自身の知識のなさもあり、彼はただ頷くだけで、ますます気分が滅入る。

 そして、ついに和菓子「情緒桜城」は完成した。


 九月、初秋を迎えたある日、再び十川と共に、本社に呼ばれた。

 ここで隼人の進退が決まる事になっていたが、正直どうでもよくなっていた。

 が、すんなり残留が決まり、「情緒桜城」の発売が来年の新年早々に決定した。

 拍子抜けした表情でいる隼人に、江崎は「よくやった」と労い、西は「あとは、まかせておけ」と言ってくれた。

 後藤のチクリとした嫌みもあったが、これにて隼人の企画ミッションは終了した。

 

 隼人は「情緒桜城」から離れ、山鹿店勤務の店長見習いとして働くこととなった。

 最も仕事内容は今までと変わらない、肩書だけのものだった。

 あの開発以来、「情緒桜城」は完全に隼人の手から離れていた。

 最後まで携わりたいといいう気持ちはあるものの、一方で早く忘れたいという思いもあったので、事あるごとに、この件に関しては消極的な姿を見せていた。

 そんな隼人の心にわだかまりを残したまま、月日は流れていった。



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― 新着の感想 ―
[一言] あら。 なんかうまくいったような。すごく微妙なような……。 もっと大喜びできるはずじゃなかったんですかねー。
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