五、②
開発室は工場の隣に位置している。
大企業ではないので、肥後製菓堂の開発室は十畳くらいの部屋に台所があるこじんまりした部屋だった。
隼人は腰に手を当て、ふーっと息を吐く。
ぽんと十川が彼の肩に手を置く。
「情緒城桜の菓子イメージ画出来ている?」
「ああ、ここにあるよ」
隼人はビジネスバッグの中から、封筒を取り出し、2枚のイメージ画とワープロで打った解説書をきっちり3人分用意し、それを手渡した。
「おい、城戸、お前の分は・・・」
隼人の手元に資料が無いのを目ざとく見つけた西は指摘する。
「あっ、しまった」
「お前な・・・」
「いいわよ。城戸さん、一緒に見ましょう」
夏菜はビジネスライクに徹底し、隼人にあくまでも自然に助け船を出してくれた。
「しっかし、お前、絵が下手だな」
見るなり、西のツッコミが入る。
「ほっといてください」
隼人は苦笑いする。
その間に、目を通した十川が手を挙げた。
「一枚目は純和風の菓子ね。白あんに食紅を混ぜて桜色にし、求肥で包んで中央に桜の花びらを配するか・・・絵は・・・なんとなく分かるような・・・」
「まぁ、絵のツッコミは置いといて、販売のことが手いっぱいで、お菓子作りはまだ勉強中で、菓子の食材って何がいいかはよく分からないんだ。それで、イメージ優先で描いたところもあるので・・・樋口さん、よろしくお願いします。」
隼人は夏菜に軽くおじぎをした。
「一枚目のお菓子は、ありふれたものだと思うわ」
「・・・・・・」
菓子製造のプロのダメ出しにあって、隼人の表情は雲った。




