四、③
さらに、阿蘇方面に車を飛ばし二人は展望所を目指す。
ドライブコースで走りやすい爽快な道を進む。
目的地に近づくにつれ、広大な山の緑と、街中では見られない、はっきりとした空の蒼さが視界いっぱいに広がった。
景色の素晴らしさに喜んでいると、のどかに放牧された牛たちが見えた。
展望所で一番見はらしのいい場所は、何台か車が停まっており、名物の焼きトウモロコシを売る車のバンがあった。
二人は、そのトウモロコシを買って、大岩の上に座り、景色を一望する。
「綺麗だね」
夏菜が感嘆の声をあげた。
雄大な青空と雲のパノラマが一面に広がり、高所から見下ろす下界の景色も一品だった。
「雲海がみえる時は、荘厳で最高なんだけど、でも、ここからの景色はいつ見てもいいね」
隼人は通な口ぶりで言った。
夏菜はくすりと笑う。
「また、連れてきてよ」
「ああ、もちろん」
隼人と夏菜は、しばらく景色を眺めながら、無言でトウモロコシを食べていた。
夏菜は静かに口を開いた。
「城戸君、言いたくないなら、別に言わなくてもいいけど・・・和菓子の件」
「う、うん」
隼人は食べ終わったトウモロコシを、薄い黄土色の紙袋に入れると、夏菜に渡す。
彼女もトウモロコシを入れると、
「何にするか決まった?」
隼人は、重い気持ちが込み上げるが、目の前の広大な景色に励まされたような気がした。
「うーん、後藤チーフを唸らせるような物は・・・と思うけど、ぼんやりとはね」
「本当!」
ぱっと夏菜の表情が華やぐ。
「ただ、いろいろ考えてしまう・・・これで本当にいいのかってね・・・進退かかってるし」
「でも、それにするんでしょ」
「スルドイね」
正直な所、隼人はそれしか思い浮かばなかった。
「えへへ・・・で」
夏菜の照れながらの問いかけに、隼人は澄み渡る空に、人差し指で桜と漢字で書いた。
「・・・さくら?」
「そう、桜・・・」
彼は、ここで息を飲むと、ゆっくりと「情緒桜城」と言った。
「じょうちょしろさくら?」
「そう・・・じょうちょさくらのしろ、覚えてる?熊本城のあの桜をイメージしたお菓子さ」
隼人は、恥ずかしそうに、はにかんだ笑顔を見せた。
「いいね」
夏菜もつられて笑った。




