三、③
「もちろん、肥後シリーズの売り上げは落ちているものの、売れ線である事は疑いありません」
「そらみろ」
「・・・しかし、中年、壮年層には和菓子は、完全に定着していますが、購買層世代の多くが20代から30代と考えますと、そういった世代にもアピール出来る和菓子の存在が必要だと感じます」
「ふーむ」
後藤と西が唸った。
「洋菓子やケーキが新製品やリニューアルで宣伝販売した場合、一定の売り上げがあがる成果を考えますと、和菓子の新製品開発販売は大きな効果があると考えます」
後藤はそこで身を乗り出し、
「では、肥後シリーズを凌ぐ、和菓子とは・・・」
「それは・・・」
隼人は言葉に詰まった。
十川が代わりに口を開こうとした時、西は手で制して、
「まだ、考慮中ってことだな」
「はい」
後藤が何かを言おうとするが、機先を制し、西は、
「副社長、チーフ、あのぺーぺーだった城戸が、これほどまでの意欲を見せています。どうでしょうか?この企画やらせてみては」
後藤は何か言いたげに口をもごもごさせていたが、機先を削がれ言葉が見つからないようだった。
江崎はにっこりと笑うと、
「よし分かった。やってみてくれ城戸君、しかし期限は3か月後とするぞ」
「はい!」
隼人の強張っていた表情は、途端に笑みがこぼれ右手で小さくガッツポーズをする。
それから十川とガッチリ握手を交わした。