表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情緒桜城  作者: 山本大介
1/20

プロローグ



 プロローグ


 桜花繚乱・・・まさに、そういうにふさわしい景色だった。

 目に映る一面に、風で飛ばされた桜の花びらが無数に舞っていた。

 桜吹雪とは、まさにこのことだ。


 ただし、車のフロントグラスから見える景色ではなければ、本当に最高なのに。

 城戸隼人は、そう思いながら、両肘をハンドルにもたれかかると、頬杖をつき、舞い散る花びらを憮然と見つめた。


「しょーがないよ、帰ろうよ」


 助手席に座る樋口夏菜が、パワーウィンドウの窓を開け、左腕を外に出すと、舞い散る桜に触れながら言った。


 熊本城の城壁が、いつもより、やけに高く感じられた。

 城堀の周りを2、3回往復したのに、駐車場の空きを運悪く見つけられなかった二人は、

 何周も繰り返す不毛さに、嫌気を感じていた。

 が、今が最高に見頃の桜を見逃すのも惜しいとも思う。


「うーん、そうだな」


 隼人は、延々と続く車の列を見ながら頷いた。


「この前、花見で観れたからいいか」


「ま、会社の飲み会だったけどね」


 夏菜は、三日前の壮絶な花見を思い出した。


「後藤チーフのセクシャルハラスメントはすごかったなあ、見ていて気の毒になったよ」


 隼人がそういった瞬間、彼女は激しく首を振って、思いだしたセクハラの数々を飛ばした。


「そうなのよ!あのゲーハーおやぢ!」


 夏菜は拳をわなわなと震わせた。

 そんな彼女を横目で見つつ、隼人は苦笑しながら、


「ま、でも、こうやって、初めてデートが出来たのもチーフのおかげだし・・・ま、とんだことになっちゃったけど」


 隼人は溜息をつき、申し訳なさそうに頭を掻いた。


「ホントに・・・って、デートのことじゃないのよ!」


 夏菜は慌てて、手を振った。


「あのおやぢ、城戸君が止めてくれなかったら、きっと宇宙までいっちゃうくらいにエスカレートしてたわ」


 隼人は興奮気味に話す彼女に微笑みながら、会社の上司に身を挺して止めた。

自分の思いっきりの良さに感心するさらに、その後、2人っきりになる頃合いを見図り、舞い散る桜をバックに彼女に告白したことも・・・。


「本当にうれしかったわ、誰も止めようとしなかったもん。見てたくせに」


「まぁ、俺も樋口さんじゃなかったら、止めに入っていたかどうか分からないよ」


「その言葉は言わない方がいいわよ。でも、城戸君は私じゃなくても止めに入ったと思うけど」


「そうかな?」


 と、隼人は照れくさそうに答えた。


「私の希望的観測も入っているけど」


「なるほどね、ふーむ」


 隼人は、そんなものかと唸った。


 その後、二人は結局、車内から桜を見ただけで、熊本城を後にし、ラーメン屋で夕食を済ませ、初デートは不完全燃焼に終わった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 桜の時期ねー!そー! 車がぜんっぜん前進しないし駐車場も空いてないんですよね! 普段一瞬で駆け抜ける距離でも渋滞混雑して30~40分平気でかかったり。 分かります。私も桜の名所でちょっと有…
[一言] なんか ナロウの俗ぽくないのキタ ( ゜Д゜) 20010825完結て書いてたけど、スキンヘッドになる前の若いころの作品ですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ