オーダーメイド
「ありがとう。楓ちゃんのおかげで自分が好きなのが買えた。」
気のせいかさっきよりも少しはきはきした喋り方だ。
「ならよかった。」
「...びっくりしたな。楓ちゃんが私の名前知らなかった...。」
すっごく落ち込んでる。漫画とかアニメのショボーンていう縦線が見えてくる...。
「ごめん。私人の顔と名前覚えるのあまり得意じゃないんだよね...。」
日本の高校にいるときもクラスメイトの名前を何回か間違えた。中学までは名札が付いてたのに。
「えっと...すっごく失礼なこと聞くけど、楓ちゃんって友達あまりいないの?」
「うん。いない、というか作っていない。」
小学校の時はいた。
「...なんで?」
小学校の時に、1人いた。同性で髪の毛が長くて背丈は普通くらい。勉強もスポーツも中間ぐらいでクラスの中では目立たない方だったから楓とは気があった。2人でいるときはすごく楽しくて、話もよく合うし好きなものこそは違ったがそんなことは関係なかった。中学までは。
いろいろあった。いろいろあって1つの結果にたどり着いた。
「いると、その分めんどくさいなって。思っちゃったんだ。」
「距離が近い人ってさ、多ければ多いほど悲しみが増えるだけじゃないのかなって。
だから私は友達を作らないの。特別な人がいなければ少なくとも悲しみはない。」
「そう、なんだ。ごめんね。変なこと聞いちゃって。」
「いいよ。私はそういうの気にしてない。」
こんな話をしたんだからコノンちゃんも多分もう誘ってくれないだろう。それでいい。
「ねえ、1つ私からも聞きたいんだけどいい?」
「うん。なあに?」
「コノンちゃんって日本語の勉強ってしてたりする?」
アステでは下の名前はほとんどがカタカナ表記であり、それが一般的である。
それに対して日本では大体の人が名前の一部に漢字を使用している。
だから、アステに来てからはカタカナのような発音で名前を呼ばれていたのだが、コノンちゃんからは、漢字で「楓ちゃん」と発せられた気がした。
「...うん。なんでわかったの?」
「発音。」
「え?」
「名前の呼び方。クラスの人はカエデって呼ぶけどコノンちゃんは楓って呼ぶ。ここの発音の差は意識しなければできない。」
「そう...なの...?」
「うん。大体の人は母国語の発音が身に沁みついて、特に意識をしなければ母国語じゃなくても母国語と同じ発音で話す。それにアステと日本の言葉ってほとんど同じだから発音も似ているところが多い。」
「そうなんだ...。」
「お父さんが日本人で、小さいころからアステと日本両方の発音を知ってたんだ。でもそれがなんで発音の違いがあるのかわからなくて、中学の時にクラスの子に言われて自分の発音がおかしいことに気づいてさ、お母さんに聞いたらそれは日本語の発音だって言われたの。」
「細かい差って、意識しないとわからないんだね。周りから見てるとすぐに気づくのに。
私はそのことに気づくのが少し遅くて中学校は半分ぐらい損しちゃったかな。」
「今、楽しい?」
「うん。あ、でも楓ちゃんと私は友達じゃないんだよね...。」
「友達に、なりたい?」
「で、できれば。でも楓ちゃんが嫌なら別にいい。」
「自分のやりたいことはちゃんと主張したほうがいいよ。」
じゃないと何がやりたかったのかわからなくなっちゃうから。
「もしコノンちゃんが私と友達になりたいのなら、普通の人以上友達未満って思っといて。」
「友達以上恋人未満、みたいだね。」
...笑った。初めて見た。
「ちょっとおもしろいな。」




