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自衛の国  作者: 榊原 色
6/9

クーポン

「君に持ってきてもらったスマホだけど、このアプリ入っているかい?」


このスマホは今は使い物にならない。アステの電波を受け取らなかった。


「いえ、わかりません。スマホがアステに入ってから使えなくなったので。」


「そうか、貸してくれないかい。こう見えても前はIT企業勤めでね。」


スマホの電源を入れること数秒。


「うん。アステの電波を受け取れていないだけだ。壊れてはいないから安心してくれ。今直そう。」


「そうですか。ありがとうございます。」


「気にならないのかい?なぜスマホが動かないのか。君の性格なら自分で直しそうだけど。」


「もしかして、原因がもうわかっていたりするのかい?」


「いいえ。まさか電波だとは思いもしませんでした。」



知らないふり 知ってることも知らないふり



「なぜそう思ったのですか?」


見た目からわからないようになるべく一般的な、目立たない格好をしてきたはずだ。あいつのアドバイスも参考にしたからそこらへんの一般人とかわらない格好なのになぜ?

わからない。


「なんとなく、だよ。」


「...そうですか。」


「少しだけ私の娘の話を聞いてくれるかい?」


「私の娘はね、なぜかは知らないけど勘が鋭かった。選挙の前に候補者だけを見て誰が勝つのかを当ててしまう。私が以前勤めていたところからここに来るときも、お父さん、4月から移動でしょ?って当ててしまってね。もちろん100発100中じゃないから外れるときもあるんだけどね。なのになぜかをそれを家族以外の人には言はない。」


「なんでかと思って聞いてみたんだよ。そうしたらなんて返ってきたと思う?」


「...自信がないから、ですか?」


「うん。そうとも考えられるけどね、不正解だ。」


「知っていることも、知らないふりをしたほうが楽だから、らしい。」


「当時私はそれが理解できなかった。でもね、今少しだけ分かったんだよ。」


「娘は、さっきの君と同じ顔をしていた。」


「それは...どういうことですか?」


「そのままだよ。もしかしたら君はそれを無意識のうちにしてしまっているのかもしれない。」


スマホが渡される。さっきと同じ表情のはずなのに、なにか寂しそうだった。


「これで話は終わりだ。」


「この説明書、読めるかい?一応簡単な単語、表現を使ったつもりだけど。」


ぱっと見た感じ大丈夫だ。それに困ったらあいつに聞けばいい。


「はい。大丈夫です。」


「じゃあこれで終わりだ。これ、もしよかったら使ってくれないかい?この前行ったときにもらったんだけどね、しばらく行けそうにないから。」


「...ありがとうございます。失礼しました。」


20%引きのカフェクーポン


一早くこの部屋から出たかった。


あの人と一緒喋っていると、自分がすべて見透かされているようだった。


――――――――――――――――


「こちら、キャラメルフラペチーノになります。」


「ありがとうございます。」


壁側の席。クーポンをもらったカフェの1席で楓はさっきもらった説明書を見ていた。

後ろが壁だから覗き見の心配は無い。


まず、スマホの電源を入れる。次に新たに加わったアプリを立ち上げ、リングとペアリングをする。そばに置いておけば問題はない。


ドリンクを飲みながら待つこと数分


アプリの画面に受話器のようなマークが出てきた。


「.....ッ.....ッ」


「よう!俺だぜ!」


は?


「...私名前知らないんだけど?」

「悪いな。本来なら1番最初に言うべきだったんだけど忘れてた。」

「俺は...何がいい?」

「は?どういうこと?何がいいって何が?」

「俺の名前だよ。」

「なんで?」

「いやー、何名乗っていいって言われているからさー。」

「だからってその決定権を人に委ねるわけ?」

「ああ。俺よりもお前のほうが俺の事知ってるだろ?」

「いや、知らないけど。声しか聴いたことないしそもそもリングを通じて通話しているのかそれとも人工知能と話しをしているのかそれすらもわからないんだけど。」

「そっかー。そりゃ残念だ。」

「.....」

「ニア。」

「え?」

「ニア。名前。」

「それはどういう意味で...?」

「なんでもいいでしょ。」



意味なんてない



「そっか。じゃあ俺はニアだ。よろしくな。」

「こっからアプリの説明は俺に任されてるからな。まずこれは今までリングで会話をしていたがそれを一般人が見たらより自然に見えるように開発された専用アプリだ。」

「これでできるのは俺との通話、画像の転送。あとはリアルタイムでの画面操作。日本でいうところのビデオ通話、みたいなやつだ。」


「なにかわからないことはあるか?」

「うんん。ない。ところでこの通話はいつでもできるの?」

「あ...ああ。いつでも大丈夫だ。」

「わかった。じゃあね。」


「.....ッ」




「ありがとうございました。またお越しください。」


カラン


あのあと熱かったキャラメルフラペチーノは冷めてしまっていた。

猫舌だから丁度よかった。



火傷はしたくない。けど熱いのを飲みたい。

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