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自衛の国  作者: 榊原 色
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喋る指輪

「今日は傘を持っていくといいぜ」

「雨、降らなさそうだけど?」

「それが降るんだよ。俺の勘が正しければ2時くらいから。あ、もちろん午後な。」

しょうがない。めんどくさいが(おりたたみ)を持って行こう。


普通の人から見れば女子中学生、下手したら小学生の独り言だろう。だが、実際楓は会話をしている。


――西本楓(にしもとかえで)下宿中の高校生だ。楓が居住している国、アステではどっかの科学者が実験に成功してくれやがたせいで人の負の感情を実体化できるようになった。そうして実体化された(あやかし)と呼ばれるモノは人ではないが人の言葉を理解すると言う。もちろん自我は無い。そのため現時点では見つけたら倒すしかない。なぜなら妖は見つけ次第人を襲ってくるからだ。幸いなのは(やつら)が人と同じ身体構造(もちろん見た目のみ)をしているため行動が読みやすいこと、そして人と同じように攻撃されれば死ぬということだ。まだ見たことはないが妖が死ぬときはとてもきれいに散るそうだ。光の粒であふれていた、と聞いたことがある。その妖を生み出した科学者は栄えある第一犠牲者になったそうだ。そのまま妖は研究施設を出ていき今も国のどこかにいる。負の感情が生まれ、その近くに妖がいればそれだけで新しい妖が誕生する。どれだけの距離かはまだ解明していない。だから妖を見たら戦闘能力がないものは逃げる、勝てる見込みがあるもののみ倒すことになっている。


 今、楓が話をしているのは左手にはめた指輪だ。妖の存在が公になったとき、アステは国境を分断し、一部の者にそれを配布した。島国だったためそれほど影響は出なかったが、人と物の移動ができなくなった。留学生や単身赴任のものはそのままアステにとどまり、出張、旅行目的で滞在している者は速攻自国へと返された。

 楓も留学生の一人である。楓同様、そのままアステに留まることになった学生は300近くいるという。アステの人口は多いため見つけるのは大変だろう。楓の母国、日本から来たという者はまだ見たことが無い。

 

ビックシルエットの白銅色のパーカーに細身のジーンズ、リュックは動いた時になるべく体に密着する物。政府が配布したそれは楓の元にも送られてきた。指輪のようなリングで少し加工すればイヤリングやピアス、チョーカーの飾りにもなるだろう。とにかく男女を問わないシンプルなデザインで潰しが効く金属のリングだった。楓はそれをそのまま指輪として使っている。右利きのため右手に()めていたのだが指輪から話しかけられてからは左手に()めるようにした。


「なあ、あれ持って行かなくていいのか?」

「だいじょーぶ。それよりも静かにしてて。あいつらに気づかれちゃう。」

「なーなー、どうしても黙ってなくちゃだめか?」

「だめっていったらだめ。そもそもこのリングは一部の人にしか支給されてないし存在を知られていないの。普通の人から見ればぶつぶつ独り言を言ってるおかしな高校生でしょ?」

「お前どう見ても中学生...」

「はい、それ以上は言わない。」

左手を壁にぶつけて黙らせる。


アステ政府から送られてきた封筒にはリングと4つ折りの紙が一枚だけ入っていた。このリングが送られているのは近々公表される妖に対して戦闘能力があると判断された者のみであること。自分で能力がないと判断した場合は理由を書いた紙とともにこのリングを送り返すこと。このリングの使用者は(あやかし)に追われている人がいたら積極的に戦闘すること。その分の補助金(口止め料)は政府から毎月定額出るという。手紙の最後にはこの条件でリングを受け取るのであれば裏面のメールアドレスか電話番号に連絡をし、その旨を伝えること、何も連絡がなければ一週間以内に政府の関係者が引き取りに来る、と偉そうに書いてあった。もちろんこのリングの存在を一般の人に知らせてはいけない。楓はその条件を飲みその日のうちに政府と契約を結んだ。国民ではない(留学生)だが戦闘能力があれば問題がないそうだ。

 

この国は大丈夫なのだろうか?


初めてアステという国に疑問を持った瞬間だった。



始めての投稿なので誤字、脱字等は連絡お願いします。

1回分の量がどれくらいが適当なのかも教えて頂けるとありがたいです。


掲載後細かい変更をする場合があります。


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