2話
はたして、正邪は招待状を受け取った三つのパーティには赴かず、というよりは性分が邪魔をしてどうしても赴けず、やむなく招待状を送ってこなかった他の三つのパーティーの存在をかぎつけて侵入し、果たして三つとも耳を捕まれて外に放り出された。
耳は痛むし、いたずらに費やした出費はあたかもパーティーを主催したような巨額になったが、幻想郷の連中にそうとう嫌な思いをさせることができた。彼らの気分は既にこの楽しい夜のために持ち直しているようだが、たとえ一時的でも馬鹿相手に嫌な気持ちにさせることが出来たのだから十分と思わねば成るまい。
正邪は喜んで地面を離れ雲しか見えない聖なる夜空の中を泳いだ。
フクロウと共に家に帰る道すがら、魔法の森の上空に来た時、黒塗りの森の一区画の葉のまにまに七色のイルミネーションが漏れ見えてきた。
せいじゃちゃんはそこで止まり、空に浮いたままあぐらをかく。
ここにも誰かが住んでいたな。誰だったっけ?
正邪は魔法の森の枝葉に突撃しながら思い出す。アリスの家だ。
地上に近づくとはたしてぼっちハウスに灯火。
アリスはどのパーティーでも見かけなかった。とすると、仲の良い友達とクリスマスパーティを主催中とみた。
せいじゃは嬉嬉として家の前に降り、いきおいよくドアを開ける。
「よばれてないのにじゃじゃじゃじゃーんせいじゃちゃんだよーん」
返事は無い。正邪は留守かなと思いつつ勝手に中に入っていった。
玄関の横を通り過ぎる時、正邪は七色に輝いた。傍らのもみの木のイルミネーションが映り込んだのだとしれる。正面の灯のともる暖炉の前には山のようにつまれたプレゼントが無造作に転がっている。
見るも不快な浮かれた景色は正邪の鼻に皺を作る。
いくつかのドアの中から人騒がしい向きへと視点を定めるせいじゃちゃん。
ガラス戸越しに隣の部屋を覗くと、ダイニングキッチンであるらしい。中央には木造のダイニングテーブルが見える。はたして予想通りでテーブルの上にはきらびやかなごちそうが並んでいた。クリスマスケーキ、クリスマスディナー。そして、席にはついているのはこの家の主人金髪碧眼の美少女アリスマーガトロイドと六人の人影。戸の隙間から朗らかな談笑が透けて聞こえる。
幸せそうにしやがって気に入らない。ぶっつぶしてやる。せいじゃちゃんはダイニングへと続くドアを乱暴に開けて中へと躍り込む。
「メリークリスマース。せいじゃちゃんいずかむひ…」
アリスは正邪を見た。そして周りの客もそれに倣い一斉に正邪を見る。アリスは驚いていたが、対照的にそら恐ろしいまでに冷静な12個の客の瞳。
正邪はその目にいすくめられて台詞を最後まで言い切ることができなかった。
「びっくりするじゃない」と言ったのはアリス一人だった。




