満員電車で青春
「ねぇ、富士見くん。満員電車って嫌い??」
「そうだな。」
「でもさぁ、富士見くんって役得、って感じじゃない?」
そんなわけない。満員電車はただただ辛いだけだ。
「というと?」
「私という女子と密着できる」
大層、自信過剰なことだ。別にそれが悪いとは思わないが、良いとも思わない。特にこいつには恋愛感情なんて抱いてないしな。
「ふぅん。なら別に役得でもなんでもないわ。」
「えぇ〜、本当は照れてるクセに〜」
「いや、まじで照れてないぞ。」
と駄弁ってたら急カーブに差し掛かったようだ。油断していた僕はドアに手をついてバランスを取ろうとした。そこで、僕のアクションーいわゆる壁ドンーをされて顔を赤くしてるバカが居るではないか。こんなシチュエーションに憧れていたのか。そんなこと好きな男子になんてやって貰えるはず無いのにな。僕みたいな男子で申し訳ないな、有明。だが、この照れてる顔をネタにしてこいつをイジるのも悪くない。写真でも撮っとくか。
パシャリ
案外、そういう意味では役得なのかもしれない。これ以降、乗車中は話しかけてこなかった有明であった。
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電車を降り、階段を登っている最中、
「あはは、まさか壁ドンされるとはねー。」
「ん?まだ覚えてんのか?」
案外記憶力のいい奴だ。
「そりゃあね。女の子みんなが憧れる壁ドンだよ!まぁ富士見君にされるとは思ってなかったけどね。案外、グイグイ系なの??」
「そんな訳あるか。第一、学校でほぼ友達がいない僕だぞ?公の場であんなことしたら僕のメンタルが赤信号出すわ。どっかの顔赤くしたやつと違って。」
「あれは不可抗力〜!!まず、女子と密着して照れて口開けなかった富士見君の方もどうなの??」
「あれは至って平常運転だろ。急カーブも急ブレーキもしてねぇよ。」
「う、そう言われると学校でもそんな感じかも」
心なしか有明が拗ね始めた気がする、、、
はぁ、面倒だな。初対面の時はもっと砕けてなかったんだがな。あの時の有明を返せ。猫被るのダメ、ゼッタイ