1話
どんっと音がするといつの間にやら男が和巳は後ろの壁と男の間に挟まれていた。
「かずみちゃん、俺、君のことが好きだ!」
「えっ…!」
とくっとくっと胸が鳴る。
こんな経験、初めて。でも誰が私なんかを…と思い顔を上げて和巳に迫ってくる男の顔を見ようとするも、光で反射してて顔が見えない。男が和巳の頬を手で触れる。和巳は体のなかがジンジンと熱くなるのを感じた。
ーキス、される…!
「はぁっはぁっ」
気がつくとカーテンからそよそよと気持ちいい風が和巳の髪をサラサラと通り過ぎていき、心地よい光が部屋に差し込んでいた
「夢かぁ〜」
夢だったらもうちょっと見てたかったなー。と、つぶやきながら目覚まし時計を確認する。
「ぎゃ!もう8時⁈」
まさかの新学期から大遅刻。学校まで1時間。始まるのは8時半。間に合わない。
涙目になりながらバッグを勢いよく背負って自分の部屋を出ると姉がプリプリ怒りながら食事をしていた。
「んもう。なぜ和巳はもうちょっと早くに起きられないの…⁈何回も起こしたのに!!!!」
「ごめんごめん〜〜!行ってきます!」
「ちょっと和巳⁈ご飯は⁈」
「いらない!!!!時間ない!」
姉の怒りが爆発するのを背中で感じながら逃げるようにドアを開けた。
「行ってきまーす!!!!」
和巳の元気な声がアパート中に響き渡った。