大陸移動
「だ・ん・な・さ・ま!!」
「いふぁいふぁい!はなふぃて!」
リリアちゃん、起きて早々元気すぎ。
それ以上引っ張ったら頬っぺた千切れちゃう!
それに比べてキャリアちゃんはまだ寝ている。
丸まっちゃって本当にネコみたい。
「で?こちらの可愛い子は誰です?」
「…アリア」
「朝方ここに来てドラゴンに会うって言ったら一緒に行きたいってさ」
「えっ…一人でここまで来たの?」
「そうだよ。アリア一人でここまできた」
「それにここまでならまだしもここからは一人だと危ないだろ?ほっとけないじゃん」
「ぐぬぬぬっ!……わかりました。では一緒に行きましょう。私はリリア」
「よろしく、リリア」
「こちらこそよろしく、アリア」
よかった、これで一件落着だな。
これでやっと出発…はできないな。
まだキャリアちゃんが起きない。
「キャリアちゃーん、置いてくぞー」
「ん~、おぶってってー…」
「キャリア!甘えない!早く起きなさい!」
「はーい…」
キャリアちゃんが寝ぼけながらもやっとのことで起きた。
俺なんて一睡もしてないけど…。
でもなぜか眠くはない。
いつの間にか寝てたのかな…?
「山頂付近まで来ると上り坂がつらいな…」
「そうですね…。でももう少しなんでがんばりましょう」
「そうかな?僕はまだ大丈夫だけど」
「アリアも」
キャリアちゃんはまだしもアリアちゃんまで!?
その服でよく動けるなあ。
似合うけど絶対山登りに適した服じゃない。
「着いたー!!」
「疲れました…」
「ドラゴンが住んでいる形跡はあるね」
ようやく山頂に到着。
ドラゴンの姿はないけど。
嘘だったのか?
そう考えていたらアリアちゃんが前に出た。
「ようこそ、アリアのおうちへ」
「「「えっ!?」」」
今、おうちって言ったよね?
ここが…?
何もないんだけど。
寝るにしても屋根なんてないぞ。
「危なくない?ここってドラゴンが出るんでしょ?」
「そうですよ!危険ですよ!」
「それってこういうドラゴン?『解除』」
アリアちゃんの姿がみるみる大きくなっていった。
これは、もしや。
「ど、ドラゴンだったの…?」
「そうだよ。別に取って食ったりしないから。会いに来たんでしょ?」
「そうそう!そうだよ!それでよかったら僕たちと一緒に冒険に行こうよ!」
「「えっ!?」」
話が変わっているー!!
まあ確かに移動手段が増えるからうれしいけどさ。
ああ、いきなり連れて行ってなんて言ったら失礼だからなのか?
それなら納得だけど、もし一緒に行くと言ったらえらいことだな。
「いいよ。ずっとここにいるのも飽きちゃったし」
えらいことになったー!!
でもさすがに大丈夫だよね?
人の姿になるドラゴンを食べたりとかしないか本当に心配。
「ん?ああ、さすがに僕でもアリアに勝てないかも」
「うそでしょ!?そんなに強いの…?」
「旦那様、ここの山の言い伝えを教えます…」
昔、ここら一体は元々人が住んでいた。
そんなところに猛獣や悪魔とやってきて人間たちは移らなければならなかった。
そこに一頭のドラゴンがやってきた。
ドラゴンは猛獣や悪魔をやっつけ、人間たちに拝められた。
その後、強いドラゴンがいると聞き、たくさんのドラゴンがやってくる。
しかし、助けたドラゴンはそのドラゴンたちも追い払った。
やがてドラゴンは史上最強のドラゴンとまで言われた。
こうして二度と危機は来ることはなくなった。
人々はドラゴンを守り神と祀り、幸せに暮らすようになりました。
ドラゴンの上に立つドラゴン…。
このパーティ、だんだんやばくなってきてないか?
姫様に冒険者一位に最強のドラゴン。
やばいなあ、俺がこんな中にいるのか。
いつ死んでもおかしくないぞ。
「というかキャリアちゃんはドラゴンを倒してたってことだよね?」
「うん、そうだけど?」
「守り神とは思わなかったの?」
「その話初めて聞いたんだよね。元々僕は別のところ出身だし」
だから容赦なくドラゴンを倒しているのね。
リリアちゃんがドラゴンだけはやめようと言ってた原因の一つかもしれない。
だけど昨日は美味しそうに食べてたけどね。
「それから人が来ることが無くなったから…」
「寂しくなっちゃったと?」
「うん。でも一緒に行くのに約束してほしいことがある」
「可能な限りだったら」
「私を食べないでほしい」
それは、どっちの意味だ?
片方だったらする気はなかったけどもう片方は…うん。
「死ぬのは嫌。でもみんなと一緒に旅をしたい」
「ああ、それなら約束するよ。元々勝負で倒したやつだし」
「すごい…!人がドラゴンに勝つなんてすごい!」
「いや、俺じゃなくて――」
「僕だよ?もちろん食べないから安心して!それに神話級に手を出さないよ」
「そういえばドラゴンを食べた話したっけ?」
「「あれ?」」
さも当たり前に進んでるけどドラゴンを食べたって言ったっけ?
倒したっていう話はしたけど食べた話はした覚えがない…。
「ドラゴンの肉のにおいがして洞窟に行ったの。鼻はいいから」
「それならドラゴンの姿で会うんじゃないの?」
「あそこは狭いから。だから人だろうと思った」
そういうことね。
耳の次は鼻か。
次は目とかかな?
「じゃあ行こう。どこに行くつもりなの?」
「海の向こうに行きたいんだ」
「海の向こう…。何百年も行っていないから楽しみ。じゃあ乗って」
おお!話が早い!
アリアちゃんも楽しみらしく早く行きたいみたい。
「しっかり掴まっていてね」
「え?うおっ!」
「きゃあっ!!」
「はやすぎるよー!!」
翼を羽ばたかせただけで風圧がすごいのに…。
飛ぶとそれどころじゃない。
頭が持っていかれそう。
このままじゃ俺はデュラハンになってしまう!
「アリアちゃん!スピード!スピード緩めて!!」
「そうだった。こうすれば大丈夫でしょ?」
「おぉ、それなら大丈夫」
頭をひょこっと上げて風の当たりを無くしてくれた。
これなら快適な旅ができる。
下はもう海。
ちょっと見てみよう。
「……なにあれ?イカ?」
「クラーケンだ!でもあんなに大きなの初めて見たよ」
「キングクラーケンです。クラーケンの中でも一番強いです」
「リリア。美味しいの?」
「え?書物には美味しいとは書かれていましたが。まさか…」
「ちょっと下に行くよ」
「危ないですよおおおお!!!」
リリアちゃんの叫び。
珍しいな。
でも近くだから耳が超痛い。
俺は大丈夫なのかって?
もちろん一緒に叫んでいたよ。
「すげえ!本当につかんでる!」
「やったー!これで当分は食事に困らないね!」
「それどころじゃないですよ…」
「いたい。大人しくして」
そういうとキングクラーケンの足をひとまとめにつかんだ。
自分より大きいのに強さは別格。
頼りになる、なりすぎる仲間だらけだよ。
「到着。ちょっとまって」
着くと翼で器用に俺たちを下ろしてくれた。
そのあとはキングクラーケンに止め。
それにしても間近でみるとでけぇな。
大きいダンプカー並みにでかい。
何日分あるんだろうか…。
「でもどうしよう。持って運べないし」
「この袋があるから大丈夫だよ」
「魔法袋。今でもあるんだ」
「じゃあ細かくしたいんだけど、時間かかりそうだな」
「それならアリアがやる。『鋼の風』」
翼を羽ばたかせると見える風ができ、スパスパとキングクラーケンが切れていく。
ここまで細かくしてくれたなら後はしまうだけ。
「大丈夫だよ。とりあえず進もうと思うけど、人の姿にまた戻れる?」
「なんで?乗れば速いよ」
「ほかの人が怖がっちゃうことがあります。できれば人の姿のほうがいいですよ」
「わかった。『人間化』」
ドラゴンの姿になった時とは逆に、みるみる小さくなっていく。
そして初めて会ったときの姿になった。
「じゃあ行こうか!」
海に面した崖に着き、内側のほうへ。
すぐに森があるが運がよく、人や動物が踏みつぶしてできた道があった。
だが、進めど進めど森が続くばかり。
そんなに遠かったのか?
「やっぱり飛んだ方が早かった」
「こんなに遠いとは思わなかった…」
「おかしいですね。もう着いてもおかしくはないんですが…」
「もしかして迷子?」
「一本道なのに?何かいるのかなー?」
そういうとキャリアちゃんは森の中のほうをみた。
え?本当に何かいるの?
「よくぞ見破ったな」
「エルフ…か?」
「ああ。それで何用だ?これ以上は進めるわけにはいかない」
「なんで?俺たちはこの先に行きたいだけなんだけど」
「このまま進むと俺たちの町がある易々と人を入れることをできん」
えー、じゃあどうしろと?
ってか道の先に町をつくるなよー。
じゃないな、町があるからこの道があったのか。
「うーん、しょうがない。それなら戻るか」
「待って!そこのきみ」
「なんだ?」
「『たった一つの判断が人生の分かれ道』、この言葉をよく使う人はいない?」
「なぜその言葉を!!」
「僕はその人の知り合いなんだ。できればいれてほしいなー」
「知り合いでもいるの?」
「うん。エルフならみんな俺のことを知っているって自分で言う変な人だけど」
なんじゃそりゃ。
どんだけ有名人だと思っているんだよ…。
「一応その知り合いの名前を聞かせてもらいたい」
「たしかメルクリウスだったよ」
「……わかった。ついてこい」
おー!戻ることなく前に進める。
森の中を歩き回したから疲れた。
それにエルフの町なんて行ってみたいに決まっている!
「ありがとう、キャリアちゃん」
「どういたしまして!それにメルクがつくった町も見てみたいし!」
今度はエルフの国へ。
今度は何があるんだろう?
エルフと言ったら魔法のイメージ。
魔法の本とかありそうだな。
町は歩いてすぐのところ。
さっきの人が魔法でぐるぐるループさせただけでもう近くだった。
「着いたぞ。まずは長のところへ行く」
町は木の上にあり、これぞエルフの町!っていうつくりだった。
ここのエルフは運動神経がいいらしく、身体能力だけで上に行く人もいれば、魔法で上に行く人もいる。
もちろん俺とリリアちゃんはそんな運動神経はない。
キャリアちゃんとアリアちゃんは余裕で登っていた。
これにはエルフの人もびっくりしていた。
俺たちは魔法で上まで上げてくれた。
「町長。客人です」
「通せ」
中にいたのは若いエルフの男だった。
エルフって長寿なんだよね?
一体何歳なんだろう?
全然見当がつかない…。
「キャリア、だな?」
「久しぶりメルク!冒険者をやめたと思ったらこんなところにいたんだ!」
「ああ。あとはゆっくり暮らしたいからな。そっちの人達は?」
「僕の新しい仲間たち!ユウジにリリアにアリアだよ」
「始めまして。メルクリウス・シヴァーナだ。これでも元冒険者で元13位だったんだ」
中途半端な順位だけど13番目に強かった人物でしょ?
ここにもやばい人いるな。
やばい人と一緒にいるとやばい人とある可能性が高くなってる気がする。