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エルフの町 2日目(後編)

すみません

帰省+体調不良で遅れました

「この森はいずれなくなってしまいます」

「そのためにこの機械みたいなのがあるの?」

「はい。これを完成しないとここから離れられないんです」


 この森を守るための機械。

 それだけあって大きい。


「でも今は腐っていないように見えるけど」

「それはパパのおかげです。魔法で腐敗をとめているらしいんですが、私もよく知りません」

「メルクリウスさんの手助けをするためにここまで……」

「いいえ、手助けではなく、森は大丈夫だからここにいなくても大丈夫って言いたいんです」

「詳しく聞いてもいい?」

「いいですよ」


 まだミミちゃんが小さいころ。

 お父さんはまだ冒険者で旅に出ており、母親に育てられた。

 いつも通りの生活に異変が起きた。

 森の一部が腐敗し始めた。

 理由は森の栄養不足。

 雨は降るものの、土の質が落ち始めていた。


 腐敗が始り、その部分だけを切り落として進行をふさいでいた。

 ただ、切り落としても腐敗は進むばかり。

 腐敗はやがてエルフに病気をもたらせた。


 魔法で病気を治せたが、腐敗は進みまた病気にかかる。

 さすがにここで暮らしていくのは無理だと判断された。


 なぜここまでの状況なのに移らなかったのには理由がある。

 ほかにも森はあるものの、ほかの種族が住んでいたりする。

 何よりここは、ほかの森に比べて安全である。

 手放すのには惜しい場所であった。


 翌日移動しようとなった日の夜。

 メルクリウスがやってきた。

 彼は森の状態を聞き、依頼を断ってここに来たとのこと。

 森の状態を詳しく聞き、どうか打開をしようと考えた結果、メルクリウスはひとつの魔法を発動させた。


「それが『森林一心(ワン・フォレスト)』。自分の魔力を使い、森を今の状態まで復活させたのです」

「そのせいでメルクリウスさんがここから離れられないの?」

「そうです。常に魔力を与えないといけないからここにずっといるんです」


 そんなことがあったのか。

 でもなんでそこまでしてメルクリウスさんを、お父さんをここから出させようと頑張っているんだ?


「なんでそこまでしてメルクリウスさんのために?ここにいたほうがいいんじゃないの?」

「パパはたまに冒険者だったときの話をしてくれるんです。その時はいつも楽しそうで懐かしそうで、そして悲しそうなんです。もう一度旅にでたいのに、この森のせいでここからはなれられないのです」

「だからそのためにこれをつくっているってことか……」

「そうです」


 こんなことがあったのか。

 これに関してメルクリウスさんは知っているのかな?

 何よりこんなことがあったなら無理に誘えない。


「わかった。ならこういうのはどう?」

「なんでしょうか?」

「ミミちゃんがこれを完成させたらまた俺たちがここに来る!そのときに旅に出よう!」

「なんでそこまでして私と?」

「ミミちゃんと旅をするのが楽しそうだからだよ!」

「……嘘でもすごくうれしいです」


 もじもじしながら顔を赤くして答えた。


「それならいいかな?」

「わかりました。その時は一緒に旅に出ます」


 こんなことがあったんだ。

 無理やり連れて行くのには気が引ける。

 メルクリウスさんに話してこのことは断らないと。


「ちょっと用事が出来たから先に行くね」

「あ、はい」

「よかったら先にリリアちゃんたちのところに行ってね!」

「じゃあ先に行っていますね」


 俺はこのことはメルクリウスさんと相談しようと思った。

 探すより最初にあった部屋に行けば一番だろう。


「私に用か?」

「はい。ちょっと相談事があって」

「うむ」


 思った以上に簡単に見つかった。

 この人ほかにやることないのかなあ。


「それでどうした?」

「今回の件、ミミちゃんを旅に出すのを断ろうかと」

「……理由を聞いていいか?」


 言っていいのか分からないけど、さっきの話を話した。

 メルクリウスさんは眉ひとつ動かさず話を聞いていた。


「そうか。だから断ると」

「はい。お米までもらったんですけど、こんな話をされてはやめるべきだと思ったんです。もちろん今までの分を払いますので」

「わかった。だが払わなくてもよい。明日にはみんな出発するであろうからな」

「どういうこと――」

「そうだ。売る分の米を用意した。そっちのほうをやろう」

「あ、はい」


 話はふさがれたものの、一応相談していいと言ってくれた。

 それにお米まで売ってくれた。

 あと明日出発ってどういうことなんだろう?

 まさかの追い出し?


「よし、それでいいのか?」

「何がですか?」

「ほかのものと一緒に練習でもするんじゃなかったのか?」

「聞いていたんですか?」

「声が大きいからな。よく聞こえる」


 そうだった。

 終わったら早く行かないと。

 ミミちゃんはしっかり行ったのかな?


「じゃあ俺はここで」

「うむ。ありがとうな」

「はい。どういたしまして」


 後ろを振り向くとなぜか微笑んでいた。

 なんで?


「おまたせー」

「やっと来たね!」

「ごめんね。何をしているの?」

「聞いてくださいよ旦那様!」

「ど、どうしたの?」


 珍しくリリアちゃんが大声をあげている。

 いや、怒っているときいつも声でかいな。


「私があんなに頑張った魔法を……ミミちゃんが!」

「ご、ごめんなさい!」

「あっさりできちゃったと」


 さすがミミちゃん。

 でもその才能をここで発揮するとリリアちゃんみたいにへこんじゃうからね。

 へこまないのはそこの冒険者1位とドラゴンだけだから。


 それから昨日と同じように練習。

 夜になるとまた町へと戻って夕飯を食べ、寝た。

 今回はなんとミミちゃんも一緒に。


「いいの?この人数だと狭くなるんじゃ」

「いいのいいの!旦那様は気にしなくて!」

「そ、そうです!これは私のわがままなので」

「そう?それなら俺はいいけど」


 何が何だか。

 いつの間にかみんな仲良くなっているし。

 それに関しては全然うれしいけど。


 また緊張することが増えた。

 今日しっかり寝れるかなあ。


……………

………


「いいんですか?メルクリウスさん」

「ああ。これがミミを縛っているなら壊しておきたい」

「でもこれってメルクリウスさんのためじゃ……」

「いいんだ。それにこれができても――」

「すみません。言いすぎました」

「いいんだ。頼めるか?」

「わかりました。けど後は頼みますよ?」

「ああ。責任はすべて私が負う」

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