モノローグ
人生は一度きりだ。
他の誰のものでもない、自分自身に与えられた限りのある時間。
だから悔いを残すようなことはしない。
誰に何を言われようと、自分の人生は自分で決める。
目指すものがあるのなら、成し遂げるまで一心に努力する。掴み取ったからには、更なる向上を求めてひたすら精進する。
自分で限界を作ることは容易い。だがそれは、その先にある可能性を自ら捨て去るということだ。
あらん限りの力を尽くすことなしに人生に妥協することは、怠惰であり、甘えだ。
その信念は、猛反対する親を尻目に何としてでも戦闘機パイロットになると決意してから、そして実際に航空自衛隊の飛行要員としてF-15戦闘機のコクピットに乗り込み操縦桿を握るようになってからも、変わることはない。
殺るか、殺られるか――身を削り、命を懸ける真剣勝負。実任務ではもちろんのこと、たとえ訓練であっても、いったん空に上がれば本気で挑む。ごまかしは通用しない。実力がすべてを決する戦闘機乗りの世界。
そんな無慈悲な現場に身を置くようになってから10年近く。少しでも飛行技術を上げるために全力を注ぎこみ、己に負荷をかけ、鍛錬を繰り返す毎日だった。決して楽な仕事ではない。だが、常にフライトを意識し緊張感を持って自分を律する生活は充実感に満ちていた。
――それがまさか、隙間なく踏み固めてきた足元が不意に崩れ落ちるような事態に陥ることになろうとは。
こんなにも不安定で頼りなく、自分の意志ではどうにもならない状況に置かれることになろうとは……。
だがそれ以上に――今までと変わることのない日々を送っていたとしたら一生接点を持つこともなかったであろう相手と出会うことになるとは、その時はまだ思ってもみなかったのだ――。