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第六十五話 VS『暴食』 告白と愛と天使の咆哮




「……本当は、もっと穏やかに終わるはずだったんです」


 静かな声で、カフカが喋りはじめた。


「こんなはずじゃなかったんです。宿った人たちがどんな人物なのか、少しだけ把握できていたから、皆、悪い人じゃなかったから、もっと穏便に、早く終わるはずだったんです」


 僕を見上げる顔は、儚い、という言葉が浮かぶほど、悲しそうにほほ笑んでいた。


「でも、どうしてなんでしょうね……ラウラも、皆も。

 相手の能力を奪おうとするなんて。

 ラウラとタオさんに至っては、能力を奪われたら大切な人が消えるっていうデメリットを知りながら、なお奪おうとしたんですから」


 目は笑っていない。

 瞳が、普段よりもきらきらと光っている。

 両目の端から、雫が溢れて彼女の柔らかな頬を伝っていった。


「皆、何でもっと柔軟に考えてくれないんですか。

 どうしてもっと普通に歩み寄れないんですか。

 世界が危ないって言ったじゃないですか。

 能力の奪い合いをしろって、誰も言ってないじゃないですか。

 実里さんみたいに、優しくて、バカみたいにお人好しで、嘘をつかれて傷ついているのに、笑顔を浮かべられる人がいるのに。

 そんな人が大好きな人たちが、揃いも揃って、能力に振り回されるわ、世界の為だと言って人の好意を踏みにじるわ、犠牲やむなしと言ってエゴを押し付けるわ……最悪じゃないですか!」


 目を見開き、周囲で倒れているラウラさんたちへ向けるように、両手を広げたカフカが叫んだ。


「最悪! もう本当に最も悪です!!

 私、色々な人たちを見てきましたけれど、貴方たち五人には本当に失望しましたっ!

 特にマリアさん、貴女がデートの時、遠くで実里さんを観察していたことは知っていましたよ。隠蔽のおかげで実里さんだってことがわからなかったから驚いたというのは理解できますが、ラウラとデートをしていたからと、周囲に女性ばかりでそのほとんどが実里さんへ好意を向けていると知って能力暴走させる人がどこにいるんですか!!」


 マリアちゃんが、皆に嫉妬していたって……そっか、僕たち、小さい頃からずっと親友だもんね。

 友達が遠くに行ってしまうような、そんな寂しさを覚えちゃったんだね。


「おかげで、もう全部パーですパー!

 私、もう我慢の限界なんですよぉ!!」


 そう言って、カフカは持っていた五つの光を抱きしめた。

 それが、徐々にカフカの胸に入っていくのが見えて、ギョッとなった。


 あれは何だかヤバい、絶対にしちゃだめだって『色欲』が叫んでいる気がした。


「待ってカフカ! それはダメだ!」

「ラウラ、貴女があそこであんな事をしなければ、実里さんにあんなことを言わせなければ、こうはならなかった!!」

「やめるんだ!」


 駆け寄ってやめさせようとしたけれど、見た目からは想像もできない身体能力を発揮したカフカの腕を、僕は動かすことがまるでできなかった。

 仕方ない。

 こうなったら、使いたくなかった力も使うしかない。

『色欲』の力が一つ、魅了。

 それを、僕はフルパワーで発動させて、カフカへ語りかけた。


「ラウラさんが、一体何をしたって言うんだ?!」

「ラウラが貴方に嘘をついたことです! そして実里さんが能力を差し出そうとした、あの時です!!」

「それが今の状況とどう関係があるんだよ!」


 すでに五つの光のうち、二つがカフカの胸に吸い込まれた。

 これ以上は本当にまずい、まずい!


「あのことがなければ、私は嘘をつく必要なんてなかった!」

「嘘?」

「デメリットのことです!

 能力を抜き取られたって、その人の大切なものは失われないんですよ!!!」


 言葉がまた浮かんでこなくなって、声も出なくなった。

 カフカの腕をどうにか開こうとしていたのに、力が入らなくなった。


 目をいっぱいに開いて、引きつったいびつな笑顔で、涙を流しながらカフカは叫び続けた。


「そうですっ、私も嘘をついていました。

 いっぱい、いっぱい、実里さんたちを騙してきました。

 能力のデメリットは、あの場で思いついた出鱈目なんですよッ!!!!!」

「なんで、そんなことを……」

「世界を守るためと言って、実里さんの大切な気持ちを踏みにじって能力を寄越せというような女に、能力集めなんて任せられる訳ないでしょう!!!!!!!!!」


 それは、感情の爆発と、その表現はこのためにあるんだと思わせるほどの気迫だった。


「私、最初実里さんの事、少し頼りないって思っていたんですよ?

 女の子みたいで、お人好しで、幼馴染のお姉ちゃんっ子で、自分に向けられた好意もわからないような純粋無垢な人。

 それでも、私の事を放っておけないって、心配してくれるような、そんな優しくて、危なっかしい人だって思ってたんです。

 だから、最後に能力が宿った貴方のオペレーターと言って近づいたんです」


 矢継ぎ早に、カフカの口から言葉が紡がれていく。

 僕は何も言えない、言える言葉が浮かばない、不思議なプレッシャーに押されている。


「利用しやすそうな人だったから、でもそれだけじゃ悪いから、どうかこの短い間だけ、その不思議な力で非日常を楽しんでほしいと思ったんですよ。

 なのに、貴方は能力に飲み込まれず悪用もせず、それどころか、その力を使わないと決めた。

 例え好きな人の心を射止められる可能性が、ずっと高くなると知っても。

 誤って力を使って、自己嫌悪してしまうような脆くも優しい貴方が。

 騙されて恋心を踏みにじられても、笑顔でその人が世界を救うと言えた貴方が。

 だから、私はあの時、一緒に能力を集めてもらうなら、貴方しかいないと思ったんです。

 実里さん、貴方が私の唯一のパートナーだと、そう思ったんです」


 三つ目の光がカフカに胸に消えた。


「ごめんなさい、ごめんなさい……私は嘘をついたんです。

 実里さんが苦しむような嘘をついてしまったんです。

 それだけは、ここで貴方に明かします」


 それは……なんて……悲しい……ことで。

 もっと早く、言ってくれれば、よかった話で……。


 怒りが、悲しみが、安堵が、様々な感情がぐるぐると駆け廻り、混沌と化していく。

 胸の内で湧き上がった、怖気のするような真っ黒な衝動が、腹のそこから湧き上がってくるのを感じる。


 けれど、それに身を任せてはいけないと、そう思った。

 前にも一度あった。この感覚は、危険だ。


 きっと、僕の制御しきれないほどの激しい怒りや、悲しみが生み出しているそれは。

 恐らく、能力の暴走に繋がる。


 能力を使って気持ちを落ち着かせていく。

 けれど、それで収まるほど僕は――――。


『大丈夫』


 声が、聞こえてきた。

 幻の屋上で僕を支えていた、あの声だった。


『その強い悲しみは、どうして生まれたんだい?

 怒りは、どうして沸き起こっているんだい?』


 理由?

 理由なんて……決まっているじゃないか。


 僕が、カフカの事を、大切な家族だって、思ったからだ。

 そして今も、彼女の事が、好きだから、怒って泣きたくなっているんだ。


『よくわかっているじゃないか。なら、その怒りに身を任せ、仮に彼女を傷つけた後、君はどう感じるだろうか』


 すごく嫌な気持ちになる。

 彼女は、今でも僕の大切な人なんだ。


『うん、君のそう言う素直なところ、私は好きだよ』


 優しく、僕を包み込むような声音の主の、見えないはずの手が、カフカを指した気がした。


『彼女は今、能力が暴走している……原因は、さっきの『嫉妬』の暴走だ』


 でも、カフカは能力は通じないって、さっき……。


『自分が通そうと思わなければ、確かに彼女は大罪の力を受け付けない。

 けれど、この半月の多大なるストレスと、プレッシャーが原因となり、『嫉妬』の暴走による力の影響を、彼女の宿している『暴食』は浴びてしまった。

 我慢していた分の反動で、彼女はもう自分が自分でコントロールしづらくなって、望んでいないはずの、他能力の吸収をしてしまっている』


 カフカは、すでに四つ目の光を取り込んでしまった。

 残り一つが、半分近くまでその胸の中に入ってしまっている。


『君は、彼女を助けたいかい?』


 助けたい。


『例え、酷い嘘をつかれて、裏切られた相手でも、助けたいのかい?』


 助けたい。

 理屈なんてどうでもいい。

 僕は、カフカを助けたい。


『お人好し、を超えた馬鹿……』


 酷い言われようだ。


『ふふっ』


 声が笑った。


『いや、すまない。ちょっと、思い出してね』


 こんな状況なのに、呑気な話だ。

 なのに、僕はこの声に対して、苦笑いを浮かべていた。


『いや、君と彼女の、いや、君が持っている力と、君を助けた力……すべてが、運命的と言ってもいいってね』


 意味がまったくわからないけれど、とりあえず、カフカを助ける方法があるなら、教えてほしい。


『君の大切な人を助けるには、やはりその力を使う方が一番手っ取り早い。

 しかし、彼女に大罪の力は効かない。

 なら、逆転の発想だ』


 逆転の発想?


『君は、彼女の事を好きかい? もちろん、家族として、友人として』


 あぁ、好きだ。


『愛している?』


 愛……っ。

 いや、うん、愛している。

 少し、恥ずかしいけれど、僕は愛している。


 カフカ、僕は君が大好きで、愛しているんだ。


『……まったく、少し妬けてしまうね』


 ふと、背中に二つの温かさを感じた、気がした。


『じゃあ、行っておいで。君なら、彼女と世界を救えるはずだよ』


 とんっと、背中を押されるように、僕は一歩、踏み出した。


『困難に立ち向かう君へ、勇気を与えよう。

 力と幸運を。




 月曜日、また会おう』


 カフカの胸に取り込まれかけていた光が、僕の右手に触れる。

 途端に、流れてきたのは、


『大好き』


 すかさず、光を掴むけれど、カフカの手が僕の腕を掴む。

 ぴくりとも動かせなくなり、焦っている間に、最後の光――――『強欲』がカフカの中に消えた。


「実里さん、魅了を使わなくても、私は最初からくびったけなんですよ?」


 カフカが柔らかく、ゾッとするほど穏やかな笑みを浮かべて、


「さようなら」


 その瞬間、彼女は僕の腕を離すと、すぐに突き飛ばしてきた。

 十メートルくらい飛ばされたけれど、衝撃はそれほどでもなかったので、受け身を取ってすぐ飛び起きた。


 そして見たのは、空中に浮かんで両手を広げるカフカの姿だった。


「あぁ……しんどかったぁ……面倒くさいこと押し付けて……」


 彼女の体から光が放たれ、まるで天使のように見えた。


「見えていますかァお父様ァ、皆さまァ!!

 私、ちょっと怒って、いいえ、メッチャクチャ怒ってるんだよわかってるのかぁァァァァァァッ?!!」


 憤怒の形相で叫んだかと思うと、今までにない殺気があたり一面に放たれた。

 一歩退いてしまいそうになるけれど、どうにか堪えた。

 と言うか、今のって……。


「全く……面倒くさいお仕事、毎回毎回押し付けて……。私、確かに強くて頭いいけどさぁ、異世界でも魔王ぶっ飛ばせますけどさぁ。異世界チートなんてワンパンだけどさぁーあ?

 今回だって、自分たちの責務でしょうが、娘に押し付けて他任務に行ってるとか、羨ましいご身分ですねぇ」


 暗い笑いをこぼし、それから一気に落ち込んだ様子でぼそぼそと喋る。

 間違いない、これは……取り込んだ順番で、感情が現れている。


「でも、おかげで、実里さんに会えました。

 この短い時間が楽しくて……任務がなければ、ずっとこっちで暮らしていたいって思ったわ。

 でも、それは叶わないのよね……。

 なら、叶えればいいじゃない、私の力で」


 ぎらぎらと、自ら発行する彼女の目が、僕へ向けられた。


「私、実里さんと一緒にいます!

 そうだ、食べちゃえばいいんです、こんな理不尽な、嫌なこと、全部、全部!」


 彼女の背中から、光る翼のようなものが、一、二……六対、生えた。


 そして、僕たちの周囲に大量の鎖が現れ、半球状の格子を作り上げた。


「そうです!

 そうですよ!

 もう天も神様も何も関係ない!

 かかってきなさい、私が何もかもを食らい尽くしてやるっ!!」


 口を大きく開いて、鎖の牢獄の間から見える赤い空へ噛み付かんばかりに。

 カフカは、泣きながら吠えた。



カフカ・七大罪の力暴走モード(不完全)!

この状態だと、神様クラスの力でないと、大罪系能力を含め、全部無効化されます。

そして、カフカの能力は元から全部アホみたいにぶっ飛んでるため、七大罪の力でそれぞれブーストをかけたらあ~ら不思議。

元からヘタな神様や魔王だったらワンパン即死+敵陣営同時瞬殺(全能力無効)だった彼女が、その上をさらに行く惑星全域無制限同時瞬殺モードがデフォの状態に……。

ぎるせぶ裏ボスの誕生です。


……あれ、実里君、勝てなくね???(ゥオィッ


???「これでも星海の邪神中級からはまるで勝てないんだけどねぇ……」

カフカ「しゃぁらっぷ!! もう終わった奴らの事はいいんですよ!」

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