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第六十三話 六つの光をその手に持つ者

「え?」


 彼女が見下ろす先に、僕の視線が向いた先に。

 オーエンさんの胸に、突き立てられた手が。


 ゆっくりと引き抜かれると、そこには穴が開いていることもなく、血が流れることもなかった。


 けれど、その手には、淡く輝く何かが掴まれていた。


「……カフカ、様?」

「はい、何ですか、オーエンさん」

「何を、して……」


 言いかけたオーエンさんが崩れ落ちた。

 それを支えたのはカフカだ。


「大丈夫です。起きたら、全部終わっていますよ」


 優しくそう言いながら、左手の指をスナップすると、オーエンさんの体がゆっくりと地面に横たえられた。


 信じられない、光景に……僕は、僕たちは……誰もが、動くことができなかった。


 右手に光を持ったカフカが、小さく微笑んだ。


「お疲れ様です、オーエンさん。私、最初こそ貴女が嫌いでしたけれど、今ではとっても好きになれました」


 言いながら、カフカは身を横にずらした。

 そこを、タオさんの拳が通り過ぎた。


「カフカァッ!!」

「はい、何ですか?」


 すれ違う様に、カフカがタオさんの横を移動すると、タオさんが膝からその場で崩れ落ちた。


「貴様……やはり……ッ!!」

「私、貴女のことは嫌いなままですけれど、さっき助けてくれたことは感謝していますよ」


 右手に、新しく増えた光を持ったカフカがほほ笑む中で、タオさんは倒れ、そのまま動かなくなった。


「カフカ、何を……して……」

「実里、気をしっかり持ちなさい!」


 エリスさんが鋭く叫びながら、僕の前に躍り出た。


「思い出したわっ! 今、思い出したッ!! そうよ、カフカは瞬間移動が使える! この子、あの白マントと」

「はい、そこまでですよ」


 十メートル以上もまだ離れていたはずのカフカが、エリスさんの目の前に現れた。

 文字通り、一瞬のことだった。


「土壇場で思い出すなんて、凄いです……先ほど、一度能力が暴走したからですかね」

「アンタ……!」


 エリスさんが倒れると、左手に三つ目の光を持ったカフカが僕を見上げていた。


「カフカ、お前っ」

「はいっ」


 カフカが笑顔で返事をしながら、


「ミノリちゃん……」


 後ろに音もなく近づいていたマリアちゃんの手を振り向きもせずに受け流しながら、左手にあった光を右手に投げ渡し、そのまま左胸に左手を押し当てていた。


「逃げ、て……」


 言い終わらないうちに、マリアちゃんも膝から崩れ落ち、倒れた。


「マリアさんは、うーん、どーでもいいですね。オーエンさんには感謝してほしいとだけ言っておきましょうか」


 言いながら、彼女は僕を見続けている。

 天使のような、とても優しい笑みを浮かべながら。


「ところで、無駄ですよラウラさん。私に、七大罪の力は通用しません」


 言われてラウラさんを見れば、彼女は険しい顔でカフカを睨んでいた。


「まぁ、それも関係なくなりますが……」

「何をしているんだよお前、何でみんなを」


 攻撃したんだ、と言おうとして。

 僕の胸に、暖かな感触を覚えた。


「大丈夫です、実里さん」


 暖かさが離れるのと同時に、僕の頭の中に浮かんでいた地図と、共鳴反応が消えた。

 同時に、体中から力が抜け、意識も少しずつ白くなっていく。


「デメリット、ないですから」

「何を……」

「安心してください。実里さんの大切なものは、消えませんよ」


 囁く声の意味が理解できなくて、それでも僕は、自分の中から『色欲』が抜き取られたことを感じて、恐怖を覚えた。


 ラウラさんが、消えたら……!!!


「かえ、せ……!」

「まだ意識があるんですね。大丈夫です、少し眠って」

「カフカっ!!」


 ラウラさんが叫ぶのと同時に、何もない空間から飛び出した鎖が、カフカの両手両足に纏わりついた。


「最初から、これが目的だったの?!」

「うるさいなぁ」


 カフカがため息をつくのと同時に、纏わりついていた鎖が全て砕け、霞むように消えた。


「返しなさいっ!!」


 それに怯むことなく、ラウラさんが手を伸ばしたけれど、カフカはそれを避けもせずに左手で掴んで、むしろ彼女を自分へ引き寄せた。


「ラウラさん、貴女のこと、ずっと嫌いでした」


 ラウラさんの体がカフカから離れ、一歩、二歩と後退して、皆と同じように、崩れ落ちた。


「本当に、この中の誰よりも、大嫌いでした。実里さんの、敵が」


 その時のカフカが、どんな顔をしていたのかはわからない。

 けれど、底冷えするような声が、霞んでいく意識の中で、鮮明に聞こえていた。


カフカの戦闘能力は、強化系の装備や道具、魔法、スキルなしでも、ファンタジー異世界で無双できるレベルです。

つまり、能力を用いようと実里たち六人に一切勝ち目なし。

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