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第四十九話 タオの疑惑

大変超絶お待たせいたしました。

 僕が落ち着いたところで、タオさんが「さて」と切り出してきた。


「君たちと同盟を結ぶ前に、確認しておきたいことがある」

「答えられることであれば……」

「うむ。君たちの協力者に会わせもらえないだろうか。話がしたい」


 タオさんの心を読むまでもないが、一応『読心』を使ってみる。

 予想通り、タオさんは僕たちの背後に白マントがいるのではないかと危惧していた。

 何やら思考の所々にノイズが入っていたり、黒く塗りつぶされた部分があったりするし、喫茶店の時と同じ力を使っているみたいだ。特に怒っている様子はなく、今は敵か味方か判ればいいらしい。


 ラウラさんへ確認のアイコンタクトを取ると、問題ないと頷き返してくれた。


「えと、僕たちの協力者は白マントとは違うんですが……」

「構わない。話を少ししたいだけだ」

「でしたら……」

『カフカ、いいかな?』


 カフカがどこにいるのかはわからないけれど、思念を飛ばしてみたら、少しの間があった後にやれやれと言った雰囲気の思念が返ってきた。


『私は人気者ですからね~仕方ないですね~』


 両手を肩の位置まで挙げてわざとらしく首を振るカフカのイメージが脳裏に浮かぶ。

 その直後に、僕たちとタオさんの間にカフカが出現した。

 すぐ隣で、マリアちゃんが息を呑むのがわかった。うん、最近皆忘れてるけれど、これが普通の反応だよね。


「初めまして、タオさん。私はカフカ。実里さんたちのオペレーターを務めさせてもらっている、天の住人です」


 タオさんも、表立った動揺は見せなかったけれど、内心では驚いていた。


『何の前兆もなく現れたか。……天使、なのか? いや、■■■■は――――と……あの□□□□と何かしらの繋がりがあるかもしれん』


 やはり、彼女の思考にはところどころノイズや塗りつぶしがあって、気になる情報を見聞きすることができない。

 それよりも、タオさんの疑いの念がまた強くなったみたいだ。あれ、大丈夫かな。不安要素が見受けられるだけに、色々と心配になってきた。


「カフカ嬢。私の我儘に付き合ってもらったこと、感謝する」

「構いません。お話しがしたいんですよね。何を聞きたいんですか?」

「単刀直入に問おう。貴女はあの白マントの仲間か、同族か?」

「わかりません」


 即答するカフカを、タオさんがじぃっと睨むように見つめる。

 どちらの心を読み取っても、主張は正反対。

 一触即発、とまではいかないけれど、緊張感漂う空気の中、先に動きを見せたのはタオさんだった。


「……わかった。今はそれを信じよう。だが、これだけは覚えておいて欲しい」

「何でしょうか?」

「私の元協力者から、貴女らしき人物の情報を少しだけ得ている。白マントとは似ても似つかないが……貴女が白マントかもしれないと、私は疑っている」


 はったりだ。

 カフカについては、僕たちの協力者だということを、自分の協力者から聞いただけで、七大罪の力を超える力を持っている事しか知らない。

 心理戦を仕掛けるタオさんだけれど、対するカフカは内心で、


『誰だか知りませんけれど、私と白マントさんじゃ体格が全然違うじゃないですか。一帯どんな適当情報をこの方に教えたんですか』


 とか考えていた。


「私も、白マントさんの情報は知りたいと思っています」


 だから、カフカの返答は当然のものだった。

 タオさんは内心でまだ怪しがっていたけれど、今のところは信じてみようと結論を出した。


「疑ってすまなかった。許してほしい」

「いえいえ。納得していただけたようでなによりです」


 二人の間に漂っていた緊張感が解け、周囲の雰囲気も元に戻った。

 知らず知らずのうちに頬を伝っていた冷や汗を感じていると、タオさんが僕の方に近づいてきた。


「少年、改めて、君たちと同盟を結びたい。いいだろうか」

「えぇ、願ってもいないことです」


 差し出された右手を握り返した。


 ようやく、ここまで来た。

 後は、白マントの登場を待つだけだ。自分以外の能力者が全員集まったら姿を現すと言っていたので、直に来るはずだ。


 これで、この事件は終わり、世界は救われる。

 長かったようで短かったこの半月の間に色々あったし、ちょっと辛い事もあったけれど、こうして無事に全員揃うことができた。

 という事は……カフカやエリスさんとの別れも近い。二人とも、もう香乃家の一員で、姉さんと妹みたいで、一緒にいることが当たり前みたいになっていた。

 嬉しくも、別れの予感にアンニュイな気分になっていると、


「実里さん」


 カフカが袖を引っ張ってきた。


「例え私が居なくなっても、エリスさんはまた日本に遊びに来ます。ですから、そんな顔をしないでください」

「あぁ」


 顔に出ていたらしい。心配させちゃったな。


「ふふっ、こうして実里さんたちと出会えたことが、この事件で一番嬉しかったんです。折角笑ってお別れしようと思っていたのに、実里さんがそんな顔をしたら、私も泣いちゃいますよ?」


 そう茶化してくるものだから、僕も苦笑いを浮かべることができた。


「カフカさんは、もうこっちへは来ることができないの?」


 ラウラさんの問いに、カフカは首肯した。


「今回は任務で来ることができましたけれど、普通はダメなんです」


 あぁ、やっぱりそうなんだね。予想はしていたけれど、本人の口から聞くと、やっぱり辛いかもしれない。


「そう……」

「円迎寺さんもそんな顔をしないでくださいよ。全く、それじゃあ実里さんを貴女に任せることなんてできませんね」

「カフカッ!?」

「カフカさん?!」


 なんかいきなりとんでもない事を言いだしたカフカに、僕とラウラさんが同時に声を上げて、顔を見合わせてしまった。

 と、マリアちゃんの体が少しだけ跳ねた。急に大声を出したから、驚かせちゃったかな。


「ふっ」


 突然、タオさんが噴き出した。


「いや、すまない。本当に仲がいいんだな、君たちは」

「当然です! 私たちはチームなんですから!」

「そうか……これから会える『傲慢』や『怠惰』とも仲がいいのか?」

「そうですね」

「ふふふ、エリスさんはすでに私と実里さんの家族も同然。オーエンさんは円迎寺さんの大親友ですから!」


 何故カフカがドヤ顔でそれぞれの個人情報を暴露しているんだろうか。まぁ、実の所慎重な性格のカフカだから、タオさんは信用できる人なんだろう。そうであってくれ。


「なるほど。ではそこの『嫉妬』の彼女は?」

「この方は実里さんの幼馴染だそうです」


 カフカに言われると、マリアちゃんはタオさんへちょこんと頭を下げた。


「……マリアです」

「あぁ、よろしく頼む」


 タオさんがマリアちゃんに手を差し出すと、マリアちゃんはおずおずと手を出して握り返した。よかった。

 その後、ラウラさんも自己紹介をすると、タオさんが笑みを浮かべた。


「先ほどはデートの邪魔をしてすまなかった」

「いえ、結果的に見れば、目的は果たせましたから」

「そうか」


 にこやかに返すラウラさん。

 えぇと、デートは否定しないのか……いいのかな。


「ぇ……?」


 隣でマリアちゃんが声を漏らした。裾を握る力がほんの少し強くなった気がする。


「どうかしたの?」

「うぅん……」


 マリアちゃんの要領を得ない返答に首を傾げていると、タオさんが「さて」と切り出した。



「後は白マントを待つだけだが、能力を取りだす方法はどうする?」


 そうだった。本当にこの事件を終わらせるためには、全員の力をデメリットなく取りださないと。

 丁度いい。カフカにそのことについて聞こうと、口を開こうとした時。


「ぐっ……?!」


 突然、タオさんが頭を押さえ、うめき声をあげた。


リーシェ「カフカ様……やっぱりお戻りになられるのですねぇ……」

エリス「カフカの奴、何言ってるんだか。約束通り私に任せなさいってのよ……」

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