第四十七話 準備万端
こちらも大変長らくお待たせいたしました。
さて、どこから説明したものかと思ったところで、あることに気が付いた。
マリアちゃんが七人目の能力者なら、これから会おうとしている人物は、一体何者なんだ?
エリスさんが肩をつついてきたので振り返ると、訝しむような表情で耳打ちしてきた。
「ねぇ実里、この子がこれから会う予定だった子じゃないの?」
「あぁ、それはないよ。マリアちゃんは高校を卒業してるからね」
「じゃあ、こっそり学校に侵入していたとか……」
それもないと首を横に振る。というか、もし無断で学校に侵入していたら武宮先生と会った時点で色々と問題になる。いずれその話は僕の耳にも届くはずだし、そもそも先生の思考にマリアちゃんの名前や身体特徴は浮かんでいなかった。
「ミノリちゃん?」
マリアちゃんが何だか寂しそうな表情を浮かべていた。怪しまれていると思わせちゃったみたいだ。
「あぁ、うん。これから別の能力者……かな? と会う約束をしているから、それについて相談していたんだ」
「そうなの? 大丈夫?」
「大丈夫だよ」
万が一の時には、能力で迎撃するだけだ。問題は、相手が七大罪の能力者でない場合、だけれど……。
「私も一緒にいるから問題ないわよ」
エリスさんもそう言うけれど、マリアちゃんの不安そうな表情は晴れない。
すると、マリアちゃんは小さく頷いて、
「わかった、私も着いてく」
そう言ってくれた。
嬉しいけれど、今こうやって共鳴反応を出し続け、そのまま公園へと向かえば先方はどう思うだろうか。
「難しい事は後で考えましょう」
唐突にカフカがそう言ったものだから、僕は思わず顔を上げて凝視してしまった。
「恐らく、相手は『大罪系』の力、またはそれに関係する何者かでしょう。もしそれ以外の力を持つ者だとしても、『大罪系』でなければ実里さんたちには効きません。直接攻撃してくるようであれば、私やエリスさんで対応します」
カフカは真顔で僕とエリスさんを見渡し、首を傾げたマリアちゃんを一瞥してから空を見上げた。
「急ぎましょう。時間がありません」
静かなのに、どこか有無を言わさせないような雰囲気のカフカに、僕とエリスさんは戸惑い気味に頷いた。
「ねぇミノリちゃん、そこに誰かいるの?」
黙って様子を見守っていたマリアちゃんの発言に、カフカが肩を竦めたが、姿を見せることはなかった。
公園までを少し速足で歩きながら、マリアちゃんとお互いの近況を報告し合っていた。
「そっか。おじさんもおばさんも日本に来てるんだ」
「うん、今はスミカお姉ちゃんの家に泊まらせてもらってるの」
「澄香姉の家に?」
「うん」
そんな連絡、澄香姉から全然受けてないし、明守真からも聞いてないんだけど……。
「本当は、スミカお姉ちゃんと一緒にミノリちゃんの家に行こって驚かせようって話だったんだけど、アスマ君が明日にしようって言って、スミカお姉ちゃんをデートに連れ出したの」
「明守真ぁ……」
幼馴染兼親友のお節k……心遣いよ……。
そして、明守真も澄香姉もサプライズのつもりだったんだろうけど……真っ先にマリアちゃんの事を知らせて欲しかった。
「私が秘密にしてって言ったの。ミノリちゃんを驚かせたくなって」
「そうなんだ……」
マリアちゃんはごめんねと縮こまる。
驚いたけれど、怒ってはいないので、首を振って問題ないと言っておく。
「……この二週間くらいね、ずっと日本でいくつもの反応が動いているのを見てきたの。でも、何をしているのか、どんな人たちなのかは、超能力を使ってもわからなかったの。ミノリちゃんを見たときはびっくりしちゃった」
「あぁ……」
それに関しては、カフカが色々とやってくれていたからなぁ。マリアちゃんの能力に遠見のような力があるとは知らなかった。カフカへチラッと視線を送るが、首をコテンと傾げられた。あ、これ、隠蔽が完璧だから言う必要がなかった的な、そういう奴だな。
後でプチ家族会議をしようと心に決めていると、待ち合わせ場所である公園の近くまで来ていた。ラウラさんは、まだ来ていない。
さて、公園の中から反応はないけれど……呼び出した本人は、もう着いているんだろうか。
「公園に、誰かいるよ」
ふと、マリアちゃんが告げた内容に、僕たちは一度足を止めた。
「……僕とマリアちゃんで行くよ。エリスさんは、また姿を消しておいてくれないかな?」
「ん、わかったわ。いざと言うときは助けるから、安心して行ってきなさい!」
頼もしい笑顔を浮かべたエリスさんの姿が、音もなく消えた。
それを見がマリアちゃんが「時間でも止めたの?」とつぶやいていた。
首を横に振ったけど、『傲慢』の力を持ったエリスさんならやってのけそうな気がして、苦笑が思わず浮かんだ。
それからすぐに、ラウラさんとオーエンさんが合流した。
「お待たせ、実里君。……その人が、『嫉妬』の能力者なのね」
「うん。マリアちゃん、この人たちは僕たちの味方だよ」
僕の服の裾を掴んだマリアちゃんがおずおずと頭を下げた。
「……マリアです」
「ラウラです。……。詳しい話は、また後にしましょうか」
ラウラさんが目配せすると、オーエンさんの姿も瞬時に消失した。
さて、準備は整った。
僕はラウラさんとマリアちゃんと顔を見合わせると、公園へと足を踏み入れた。
エリス『やっと来たわね』
リーシェ『それよりも、あの女は誰?! 香乃さんと親しげなんだけれど!!』
エリス『あぁ、あの子ね。強敵よ』
カフカ『嘘、五十三万……ですかっ?!』
リーシェ『何の話をしているんですかカフカ様?!』
エリス『ある意味、それくらい強敵ってことよ。さぁ、気を引き締めていくわよ!』
リーシェ『もう、全部終わったら詳しく聞かせなさいよ?!』




