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第二十話 うちの両親が仲良すぎて電話切りたい

 ご無沙汰しております。待っていてくださった方、すみません。


 前回のあらすじ……


 『傲慢』の能力者エリスが、香乃家に居候することになりました。

 夕飯を食べ終えた後、風呂がたきあがるまでの間、明日の予習にと教科書を広げていたら、携帯電話がぶるぶる震えだした。

 居間でカフカとゲームをしていたエリスさんが『コンブ出汁』と口ずさむのが聞こえた。ピアノの独特のメロディが気に入ったので家族間用に選んだのだが、歌詞があるとは思わなかった。


「父さんか……」


 たぶん近況報告と僕の様子見の電話だろう。


「ごめん二人とも、少し静かにしててね」

「わっかりました~」

「ん~」


 ゲームに夢中な二人の生返事を背に居間を出て、自室へと上がりながら電話に出た。

 聞こえてきたのは、元気そうな父さんの声だ。


『実里、元気にしているかな?』

「ああ、元気してるよ父さん」

『半月ぶりだなぁ。俺たちはこっちで写真と観光ばっかりしてるが』


 それは最初から予想していたことだ。仕事と趣味を両立しているのだ。


『そっちはどうだ? 彼女でもできたか?』

「できてないよ」


 できたと思ったらぬか喜びだった。まぁ、それがきっかけで仲良くなれたと言えばなれたけれどさ……思い出が心に刺さって滅茶苦茶痛い。


『そっかぁ。俺が実里の頃には彼女の一人や二人いたんだけどなぁ』

『嘘言わない。えーちゃんったらカメラに夢中で言い寄ってくる女の子たちを適当にあしらってたじゃない』


 感傷にこっそり浸っていたら、母さんがの呆れ声が聞こえてきた。


『そんなことないよ。だって(よし)()ちゃんのことは、当時から好きだったんだから。もちろん、今も変わらず好きだよ』

『もう、えーちゃんってば……』

「……ねぇ、邪魔みたいだし、もう切っていいかな?」

『おっと待った待った。すまん』

「はいはい……。僕は元気だよ。学校にもちゃんと行ってるし、この間の中間も全教科平均点以上だったし、明守真と澄香姉とも仲良くやってるよ」


 澄香姉とは、半月ほど顔を合わせていないけれど……まぁ近々会えるからいいか。


『おお、そうか。よかったよかった。それを聞いて俺も嘉香ちゃんも安心だ』

「それは重畳」

『ああ、ところで実里、一ついいか?』

「何?」

『今日銀行の残高を確認させてもらったんだがな、半月の消費にしては減りが多くないか?』


 やっぱりそこ突いてくるよな。何せカフカとエリスさんの衣類に、三人分の食費となれば、嫌でも減り具合が目につく。でも慌てない。すでに答えは用意してある。


「友達と遊んでたら、ちょっと減っちゃって」

『ん? 明守真君たちとかな?』

「うぅん、学校の子だよ」

『お前が明守真君たち以外と遊ぶなんて珍しいな……』

「新しくできたんだ」


 嘘は言っていないので気楽だ。仲良くできる人たちがいるって素晴らしい。


『女の子か』

「は?」


 突然、父さんが意味深につぶやいた。


『男友達と一緒にカラオケやゲーセンに行くにしたって、半月でここまで減らすような真似、主夫スキルC+を持つお前がするわけがない』

「どんなスキルなのそれ!? シープラスって何?!」

『料理ができるお前のことだ。その子に手料理でもふるまっているんだろう……』


 当たってはいないがはずれじゃない、だと……。

 戦慄するが、絶対に悟られてはいけない。カフカとエリスさんが家にいることは、能力者チームの間だけの秘密なのだ。


「いやいや、ないから! あ、いや、お弁当作ってはいるけどそれは」

『皆まで言うな。そっかそっか。彼女いない歴十七年のお前にやっと春が……梅雨なのにな!』


 父さんのしたり顔が想像できて、ちょっとだけイラッとくる。


『えーちゃん、あんまりからかうと実里に嫌われるよ?』

『これくらいジャブにもならんさ』

「いや、だからさ」

『よーし、じゃあ俺から言えることは一つ。節度ある付き合いさえしていれば、お前の選んだ子だ。大丈夫だろう』

『今度紹介してね、実里』

『と嘉香ちゃんも嬉しそうに言ってるし、夏休みには帰るからそれまで離すなよ!』

「ちょ、父さん……って切りやがった……」


 言いたいことだけ言って、通話を切られた。

 なんというか、一応誤魔化せはしたけど、どうしたもんだろうか。僕の予定では友達のくだりで適当に流れてそれではい終わりのはずだったのに。


「紹介って、どうしろってんだ……」


 とりあえず、帰ってくるまでは時間があるし、その間に対策を考えよう。それよりもまずは目先の能力集めに集中しないと……。

 なんて考えてたら、また電話が鳴った。


『そうそう、澄香ちゃんに今度様子を見に行ってもらうから』

「は?」

『部屋綺麗にしておかないと怒られるぞ。エロ本買ってたらしまっとけよぅ!』

「買ってないよ、ってまたいきなり切るのかよ!」


 ってちょっと待って。澄香姉が来る? いや、僕の方からお邪魔するんじゃなくて、姉さんの方から来るの?


「いや、まぁでもどうとでもなるか……」


 カフカとエリスさんは姿を隠すことができるので、その時にはそれで凌いでもらおう。

 澄香姉が二人の事を知れば、家族会議は免れない。今後のためにも、そして能力集めのためにも、それだけは絶対に阻止しないと。


「……そうと決まれば、打ち合わせしとくか……」


 つぶやいて居間に戻ると、「バックステッポ!」「追撃のグランドヴァイパァッ、です!!」「下段ガードを固めた私に隙はなかった!」などとゲームに熱狂する二人がいて、ちょっとだけ引いた。


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